2014年10月31日金曜日

YKKAP窓研究所/まど体操開発/窓の形・開閉動作を体で表現



 YKKAPの社内組織で、窓に関する文化を研究している窓研究所(山本絹子所長)が、主力製品の窓の普及促進を図るため、「まど体操」を開発した。窓そのものの形に加え、開閉動作を体で楽しく表現するもので、建物の形を表現する「けんちく体操」を作ったチームとのコラボレーションで作った。
 ifs未来研究所(川島蓉子所長)が、未来研サロン(東京都港区)で26日に行ったワークショップに出展し、初お披露目した。
 ワークショップでは、米山勇氏(東京都江戸東京博物館研究員)を中心とするチームけんちく体操が、けんちく体操を披露。その後、まど体操が紹介され、引き違い窓、上げ下げ窓、オーニング窓の3機種について一般参加者とともに実技を行った。参加者たちは、普段見慣れている窓の開閉動作を、体全体で表現していた。
 山本所長は、「製品を普及させるには、メーカーが良いものを作るだけでなく、利用する人に愛着を持ってもらう必要がある。誰にでも分かりやすいまど体操を使って窓に対する関心を集めたい」と話した。
 米山氏は、「(まど体操は)けんちく体操と違って動きがある。建物の部位に焦点を当てるという発想は新しい」と評価した。
 まど体操は、窓研究所のホームページ(http://www.ykkap.co.jp/madoken/)を12月にリニューアルするのに合わせて公開。今後、新人のうちから窓に対する愛着を持たせるため、新入社員教育にも活用する方針だ。
まど体操の実技

戦略的広報推進協/初の工業高キャラバン実施

 国土交通省や建設業界団体などでつくる建設産業戦略的広報推進協議会(事務局・建設業振興基金)は30日、埼玉県立熊谷工業高校で「工業高校キャラバン」を実施した。将来を担う若者に建設業の魅力や役割を知ってもらおうと、協議会として初めて企画した試み。12年2月に完成した東京スカイツリー建築工事で作業所長を務めた大林組東京本店建築事業部安全環境部の田渕成明部長が、難工事に当たって投入した数々の技術を紹介しながら、高さ634メートルの世界一の電波塔を完成させていった様子を伝えた。
 キャラバンには、建築科の2年生35人(うち7人が女子)が出席した。冒頭、国交省の屋敷次郎建設市場整備課長は、インフラの整備・維持管理や災害対応など「地域の守り手」としての建設産業の役割を説明。その上で「CS(顧客満足)はES(従業員満足)から」といった考え方で、若者が将来を託せるような産業になるようさまざまな施策を展開していることを紹介した。
 田渕氏は講演で、狭い敷地での施工を実現するために投入した特殊基礎工法や施工管理に用いた先端技術を解説。途中、東日本大震災で激しい揺れに見舞われたことなども交え、前人未踏の領域での工事の難しさとやりがいを生徒たちに伝えた。大林組の工事現場でとび工の職長として働く鈴木組の中村俊氏も、他の職長と連携して進める現場での作業を説明した。熊谷工高を皮切りにした本年度のキャラバンは計5回を予定している。
スカイツリーの工事の話に聞き入る生徒

新労務単価相談ダイヤル、14年度上期受付は27件

 国土交通省は、「新労務単価フォローアップ相談ダイヤル」(ナビダイヤル0570・004976=マルマルヨクナロウ)の本年度上半期の受け付け状況をまとめた。相談は27件あり、地方自治体発注の工事を受注した元請業者から、労務単価の上昇分についてインフレスライド条項の適用を受けて設計変更を行ったものの、「増額がわずかだった」といった情報が寄せられたという。
 相談ダイヤルは昨年6月に開設された。国交省は昨年4月と今年2月の2度にわたって公共工事設計労務単価を大幅に引き上げており、これが技能労働者の賃金として適正に行き渡るよう、関係者の相談に応じている。相談者の所在地から各地方整備局の担当窓口につながるようになっている。
 昨年度に寄せられた相談は151件。多い時は月に25件あった。本年度上半期は、前半の4~6月の3カ月で21件あったが、7~9月は6件に減った。
 上半期に寄せられた相談にはほかに、「自治体工事の設計単価は上がったが、下請まで届いていない」(下請業者)、「元請に新しい労務単価で見積書を提出しているが、言われるままに調整し下げざるをえない」(同)、「フォローアップ体制が整備されたのは喜ばしいが、現場の職人の耳にまではほとんど届かない。職人の声をもっと拾い上げていく必要がある」(労働者)などがあった。国交省は相談ダイヤルを今後も継続していく考えだ。

2014年10月30日木曜日

国交省/橋梁点検ロボットの現場検証実施/飛行状況などチェック

 国土交通省の次世代ロボット現場検証委員会は28日、静岡県の国道1号浜名大橋(浜松市、湖西市)で橋梁点検ロボットの現場検証を実施した。公募で選ばれた民間企業6社の飛行ロボットやロボットカメラの飛行状況や点検状況などをチェックした。今後、各技術を評価し活用促進やさらなる改良などに役立ててもらう。
 検証したのは、▽橋梁等構造物の点検ロボットカメラ=三井住友建設▽全自動構造物劣化調査システム=三信建材工業▽構造物点検ロボット「SPIDER&Giraffe」=ルーチェサーチ▽全自動ロボット型空中俯瞰撮影システム=東日本高速道路会社▽小型無人飛行装置による橋梁点検支援技術=アスコ▽ミニサーベイヤ飛行ロボットを用いた橋梁点検システム=富士建。
 三井住友建設の橋梁等構造物の点検ロボットカメラは、ポールの先に取り付けたカメラで点検するもので、他はすべて飛行ロボット。飛行状況などを確認したほか、事前に撮影した橋梁の点検映像と、飛行ロボットなどで撮影した画像を今後比較して実用性などを評価する。
 インフラの老朽化対策や災害対応では、限られた予算や人員で着実・効率的に点検を行う必要がある。また、点検箇所が危険で人が近づくことができないケースもある。
 このような状況に対応するため、ロボット技術の現場導入に向けた技術を公募していた。
浜名大橋の下にもぐり込み撮影する飛行ロボット

建設技術展2014近畿が開幕/10月30日まで、本社・近畿建設協会主催

 日刊建設工業新聞社と近畿建設協会が主催する「建設技術展2014近畿」(特別共催・土木学会関西支部、地盤工学会関西支部)が29日、大阪市中央区のマイドームおおさかで始まった。30日までの2日間、169の企業・団体が8分野に分かれ、約450件の先進技術を紹介する。=8面に詳しく
 午前9時30分からの開会式では、主催者と特別共催者、出展者代表、来賓のあいさつに続き、水野谷博之日刊建設工業新聞社取締役が開会を宣言。関係者がテープカットを行い、技術の祭典が華やかに開幕した。
 会場では、来年1月17日で阪神大震災から20年になるのを前に地震防災フォーラムが開かれるほか、橋梁模型製作コンテストや阪神高速道路開通50周年記念シンポジウム、土木実験、土木夢づくり懇談会フォーラムなど多彩なイベントも行われる。
開幕を祝うテープカット

大豊建設/防寒着モデルチェンジ、スタイリッシュに



大豊建設は今冬、作業服の上に着用する防寒着をモデルチェンジする。カラーを従来のベージュからネイビーに変更。動きやすさを考慮し、腰回りを絞り込んだスタイルにしたほか、ポケットの位置や形なども工夫し、機能性を高めた。
 今回の見直しは社員の要望を受けて実施。これまで社章しか付いていなかった左胸に「DAIHO」のロゴをかたどったワッペンを縫い付け、一目で社員と認識できるようにした。高い防寒・防水機能も備える。色や形を変える大掛かりなモデルチェンジは創業以来初という。664着を配布。寒冷地向けに防寒ズボンも用意している。
動きやすさとスタイリッシュな見た目が特徴

2014年10月29日水曜日

日本ERI/検査済み証ない建築物の調査業務拡大/年間200件目標に展開

 日本ERIは、工事完了後の検査済み証がない建築物を対象にした調査業務を拡大する。建築基準法への適合状況や劣化状況を調査し、報告書を作成する業務で、建物の状態や品質を証明し、建物の売買・投融資の判断材料として報告書を活用してもらう。増改築や用途変更などの申請資料としても利用できる。これまでに19件の業務を受注しており、横瀬弘明取締役ソリューション事業部長は「年間200件を目標に事業展開していきたい」と話している。
 検査済み証を受けていない建築物は、増改築や用途変更を行う際に調査や申請に手間が掛かるため、中古市場に流通しにくいという課題があった。ストックの有効活用や中古流通市場の拡大を目指す国土交通省は、7月に「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」を策定。指定確認検査機関が調査業務に参入できる環境を整えた。
 同社はガイドラインに基づく調査業務を7月に開始した。ガイドラインに沿って報告書を作成できる建築基準適合判定資格者が約500人在籍しており、ガイドライン策定前にも同様の調査を行った実績が1000件以上あるという。
 調査では、確認済み証などの資料を基に、判定資格者が現地で建物を調査。最短約1カ月で報告書を完成させる。手数料は、築10年で確認申請図書が提示できる一般的な共同住宅(1000平方メートル以下)なら約30万円となる。
 現行の建築基準法は、工事完了後に建築主事または指定確認検査機関の完了検査を経て検査済み証を受けることを建築主に義務付けているが、建築確認業務が民間に開放された99年以前には、検査済み証を受けていない建築物が半数以上を占めていたという。指定確認検査機関には現在、日本ERIを含め23社が届け出をしている。

SKOTT駅伝大会開く/トルネード鹿島が7連覇、5年連続1・2位独占

トルネード鹿島の選手とスタッフ

 ゼネコン大手5社(清水建設、鹿島、大林組、大成建設、竹中工務店)の有志が健脚を競い合う第36回「SKOTT駅伝大会」(SKOTTは各社の頭文字)が25日、東京の皇居周回コースで開かれ、鹿島の「トルネード鹿島」が2位を大きく引き離す50分38秒のタイムで優勝し、大会7連覇を達成した。2位には同じ鹿島の「トルネードB」が52分08秒のタイムで入り、鹿島のトルネードが5年連続で1、2位を独占した。3位は「Team HOC―A」(大成建設)でタイムは54分12秒だった。
 大会には各社から計80チーム(1チーム3人編成)が参加。1周5キロの皇居周回コースを1人1周し、計3周(計15キロ)のタイムを競い合った。開会式で、今年の幹事を務めた清水建設の井手勇人大会委員長は「誰もけがをすることなく大会を終わらせたい。気分が悪かったら無理のないように、そして観光客を最優先にレースを楽しんでほしい」とあいさつした。
 レースは、仲村滋夫選手(鹿島)による選手宣誓の後、午前9時10分に桜田門時計台前をスタート。優勝したトルネード鹿島は、序盤から独走状態で、第1~3走者ともにゴールを1位で通過し、圧倒的な強さを見せつけた。
 トルネード鹿島の京極剛監督は、「チーム内の競争が7連覇という最高の結果を生んだ」と勝因を分析し、「8連覇に向けてチーム力を強化する」と次回大会への意欲を見せた。第1走者の小田切芳春選手は「巨人のV9を超すV10を目指したい」、第2走者の池内喜郎選手は「王者として負けられないプレッシャーがあったが、優勝できてうれしい」、第3走者の山下善幸選手は「ベストの状態ではなかったが、7連覇を達成してほっとしている」とそれぞれ喜びを語った。
 特別賞は、けんせつ小町賞が「大成ねいちゃんず」(大成建設)、スタローン賞が「Team西山」(同)、ブービー賞が「島中’s」(清水建設)だった。

2014年10月28日火曜日

東京・日本橋室町に「福徳神社」が竣工

 三井不動産が日本橋室町東地区開発計画の一環として、東京・日本橋で建設を進めてきた「福徳神社」が23日に竣工し、24日に一般に開放された。福徳神社の完成により三井不が複数の地権者との共同事業として進めてきた日本橋室町東地区開発計画が全体竣工した。
 日本橋室町東地区開発計画は、東京メトロ銀座線三越前駅に近接した五つの街区(中央区日本橋室町1の5、2の2~5、区域面積1・8ヘクタール)の一体開発として、東京都が07年に都市再生特別地区に指定。10年に他の街区の開発に先行し、三井不動産が手掛けた「室町東三井ビルディング(COREDO室町1)」と野村不動産が行った「日本橋室町野村ビル」が竣工。今年2月には三井不動産が手掛けた「室町古河三井ビルディング(COREDO室町2)」と「室町ちばぎん三井ビルディング(COREDO室町3)」が竣工した。
 残るプロジェクトとなっていた福徳神社(日本橋室町2の5)は、設計・施工を清水建設が担当。建物はS造地下2階地上1階建て延べ889平方メートルの規模。防火規制に対応するため、鉄骨を耐火材料で包み、吉野ヒノキで仕上げた。地下には駐輪場や防災用備蓄倉庫を配置している。敷地の東側では、三井不動産らが進める「(仮称)日本橋本町二丁目特定街区開発計画」の一環として、神社と一体となる広場空間「(仮称)福徳の森」を16年度までに整備する予定だ。
 全体竣工を迎え、三井不動産の新原昇平日本橋街づくり推進部長は「完成して終わりでなく、タウンマネジメントを通して街を良くしていきたい。日本橋には古いコミュニティーがあり、一方でビジネス街や商業施設に多くの人々が訪れる。福徳神社を核に、街に交流とにぎわいを生み出していきたい」と話した。

「ぐんケンくん」、ゆるキャラコンテストで決戦投票進出

青柳会長と並ぶ「ぐんケンくん」(右端)。左は大澤正明群馬県知事と県のゆるキャラ「ぐんまちゃん」

群馬県建設業協会(青柳剛会長)が業界のイメージアップを目的に今年5月に作ったマスコットキャラクター「ぐんケンくん」が、全国の自治体、企業や団体のキャラクターが人気を競う「ゆるキャラグランプリ」で決選投票への進出を決めた。
 インターネット投票の結果、24日時点でエントリーした計1699体のキャラクターの中で70位となった。上位100位以内のキャラクターは11月1~3日、中部国際空港屋外特設会場で開催される決選投票に進むことができる。
 ぐんケンくんは、積み木を積み上げていくようなイメージでデザインされたキャラクターで、協会が関連する各種のイベントで活躍している。デザインはイラストレーターの芦村早苗さんが手掛けた。

鹿島/事務系新入社員教育に実技体験カリキュラム導入

枠組み足場組み立ての指導を受ける新入社員たち
 鹿島は、事務系総合職の新入社員12人を対象に富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)で「実技体験基礎研修」を行った。足場の組み立てや測量実習など、現場で必要な作業の基礎を指導し、作業を体験させることで、作業員の仕事内容や現場の苦労を理解してもらうのが狙いだ。09年度から技術系の新入社員を対象に同センターで実習研修を行ってきたが、新卒の事務系社員向けの実技研修は今回が初めてという。
 研修期間は23~25日の2泊3日。新入社員らは、足場の仮設工や測量、柱・梁の配筋作業などの座学と実習を通じ、現場で必要な実技の基礎を体験した。笹岡隆利人事部担当部長は「鉄筋の重さは持ってみて初めて分かる。現場の作業を体験し、現場監督と職人が話している内容が理解できるようになるだろう」と今回の研修の意義を話した。
 初日に行われた枠組み足場の仮設工実習では、座学や指導員の解説を踏まえ、ジャッキベースや建て枠の設置、ブレースや鋼製布板の取り付けなど一連の作業を実践し、2層式の足場を組み立てた。建て枠(重さ約10キロ)を初めて持った新入社員は、その重さに驚きの声を上げていた。
 同社は、今後も事務系新入社員向けに現場作業の実践的な研修を実施する方針。来年度は、現在内定が出ている31人の参加を予定している。土木・建築の技術系新入社員の研修時期に合わせて、4月半ばの実施を目指し、現在センターと日程を調整中だ。

中村屋/新宿本店ビル建替(東京都新宿区)が完成/10月29日オープン


 飲食店経営や食品販売の中村屋(染谷省三社長)が建て替え中だった本店ビル「新宿中村屋ビル」(東京都新宿区新宿3の26の13)が完成した。29日にオープンする。建て替え計画のデベロップメントマネジャーを務める三井不動産が建物竣工までの計画立案、設計・施工管理、テナント誘致などを担当。竣工後も中村屋以外の店舗のマスターリースと施設の運営管理を行う。設計・施工は大林組が担当した。
 新宿中村屋ビルは、JR新宿駅前の東口に立地し、東京メトロ・丸ノ内線の新宿駅と新宿三丁目駅とも地下通路で直結する。敷地面積は約730平方メートル。新たな建物はS一部SRC・RC造地下2階地上8階建て延べ約6400平方メートルの規模。外壁には中村屋のコーポレートカラーのぶどう酒色(淡い紫)を採用し、品格ある落ち着いた雰囲気を持たせた。
 中村屋の関連施設として、名物のインドカリーなどの洋食中心のレストラン・カフェ、菓子やパン、総菜などのショップを地下フロアに、インド・ロシア・中国・フランスなど各国の料理を提供してきた同社の飲食業の歴史の集大成と位置づけるダイニング・レストランを最上階に配置。3階の一部には「中村屋サロン美術館」を開設し、同社ゆかりの近代の芸術家らの作品を中心に展示する。地上1~2階に「COACH」の新コンセプト店、4~5階にエステサロン関係の店舗、6~7階に飲食店が入る。

世界の都市力ランキング-4位東京、浮上の鍵は五輪

◇先輩ロンドンにヒント/改革で変わる海外投資家の視線
 2020年の五輪開催を控えて東京の国際競争力の向上が期待される中、森記念財団都市戦略研究所(所長・竹中平蔵慶大教授)から今月、世界40都市を対象とした14年版の「世界の都市総合力ランキング」が発表された。東京は7年連続の4位。昨年より評価を高めたが、上位都市との差はなかなか縮まらず、アジアの他都市の追い上げも年々著しくなっている。東京がさらに浮上するための鍵は-。五輪を開いた12年以来、首位を維持している英・ロンドンにヒントを探った。(編集部・沼沢善一郎)
 14年版ランキングによると、東京は市場の規模、経済集積、人的集積などで世界有数の都市であることが分かる。生活利便性も高く、これらが東京を上位に押し上げる原動力となっている。
 一方、東京の弱点とされているのが、市場の魅力や交通利便性だ。市場の魅力については、世界的な企業の集積を意味する「世界トップ300企業」の指標で、今回初めて中国・北京に抜かれた。経済面ではアジア各都市の中で盤石の地位を築いてきた東京も、油断のできない状況にある。交通利便性については、都市内交通は充実しているのに対して、国際線直行便の就航都市が少ないことなど国際交通ネットワークの不足が指摘された。
 こうした弱点の克服が、東京の上位進出の鍵となりそうだ。前例となるのがロンドン。今回、ロンドンは経済分野や居住分野の評価を改善させ、2位の米・ニューヨークとの差をさらに広げた。同財団理事の市川宏雄明治大専門職大学院長は「ロンドンは五輪を契機に弱点を克服し、急激にスコアを上げた」と指摘。竹中所長も「ロンドンは五輪のレガシー(遺産)を有効に活用している」と評価する。
 ロンドンでは五輪を終えた今もまだ、不動産投資が活況だ。不動産コンサルティングなどを世界規模で展開する米国のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの調査によると、主要都市の不動産投資額(13年7月~14年6月)は、1位のニューヨークに続き、ロンドンが472億5400万ドルで2位、東京が354億6700万ドルで3位と続く。
 ただし、そのうち海外からの投資額となると、3都市の中でもロンドンが293億7000万ドルで断トツ。これに対し、東京は46億3300万ドルにとどまり、8位まで順位が落ちる。
 ロンドンにある歴史的建造物のバタシー発電所を核とした複合再開発事業は、海外からの投資が増え続けるロンドンの現状を象徴するプロジェクトといえる。発電所一帯の17万平方メートルの敷地に、住宅やホテル、オフィス、商業施設などを建設する計画で、総事業費は80億ポンド(約1・4兆円)に及ぶ。このロンドン史上最大規模の開発プロジェクトを主導しているのは、マレーシアの政府系デベロッパーだ。世界各地で投資を募るプロモーションを展開中で、11月には東京でも説明会を開くという。
 東京は、現時点ではロンドンに後れを取っているものの、20年五輪の開催決定をきっかけに海外からの視線が変わってきたことも確かだ。クッシュマン社は「日本の経済改革がグローバル投資家からの信頼を築いている」と評価。竹中所長は、政府が掲げる成長戦略の柱の一つである「国家戦略特区」の中で東京圏のプロジェクトが立ち上がりつつあることを挙げ、「海外のマスコミや投資家が東京をウオッチし始めた。東京に対する世界の熱気は高まっている」と話している。
 東京五輪までは約6年。市川理事は「東京も五輪を契機に弱点を克服すれば、20年までにパリ、ニューヨークを抜いて2位になる可能性もある」とみる。その可能性を生かすも殺すも官民すべての関係者の取り組みにかかっている。
 森ビルが今回の発表に合わせて開催した「イノベーティブ・シティ・フォーラム」で来日したロンドン市の関係者は、東京にこうメッセージを残した。「五輪は人生に1回しかないようなもの。都市にとっては発展が花開き、それによって自信を付けることができる機会だ。前に進み、大胆にリスクを引き受けよう。いくつものレガシーが残るはずだ」。
 《世界の都市総合力ランキングとは》
 森記念財団都市戦略研究所が08年から実施。世界の主要40都市の総合力を分析し、順位付けを行っている。都市の力を6分野(経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセス)の計70指標を使って比較するほか、都市活動をけん引する多様な関係者(経営者、研究者、アーティスト、観光客、生活者)の視点から都市の総合力を評価する。世界的に著名な学識者らの意見も踏まえ、専門家によるピアレビュー(第三者評価)を経てランキングを決定する。
 政府が推進する成長戦略では、都市の競争力を高める施策を議論する際の指標として活用されている。舛添要一東京都知事の2月の施政方針演説でも引用された。

2014年10月27日月曜日

太田国交相/「どぼじょ」への関心の高さに驚き

 「『どぼじょ』の本をブログで紹介したら、その反響の多さに驚いた」。太田昭宏国土交通相は24日の閣議後会見で、建設業界で女性が活躍することへの関心が高まっているとの見解を示した。「『どぼじょ』の本」とは、建設業界で働く女性のインタビューと写真を掲載した『土木女子!』(清文社刊)。9月にこの本に登場した女性4人の訪問を受けた後、自身のブログで「私の読書録」欄に紹介したところ、関心を示す「いいね!」の数が普段の20倍に上った。
 「どぼじょ」「建設なでしこ」、トラック運転手の「トラガール」など、国交省関連の業界では女性を表現するネーミングが相次ぐ。太田国交相は、こうしたことが社会的関心を高めることにもつながるとしている。
 日本建設業連合会(日建連)ではこのほど、広く業界内で使われることを目指した愛称を「けんせつ小町」と決め、公式用語とすることにした。
 日本の未来に希望が持てるよう、「女性が活躍する場が広がっていくことは大切だと思っている」と持論を展開する太田国交相。「近々、けんせつ小町の皆さんの訪問を受ける方向で日程調整を進めている」ことも明らかにした。