2014年12月26日金曜日

災害多発の1年/関東甲信で官民が対策本腰/重機と操作員の融通体制構築

 2月の大雪に始まり、台風、噴火、地震など大規模な自然災害に次々と襲われた今年の関東甲信地域。災害対応に当たる公共事業の受・発注者双方の活躍が目立った一方で、一段と深刻さを増してきた問題が現場の人手不足だ。災害対応の遅れに危機感を抱いた関東地方整備局や自治体らは、本格的な対策に乗りだした。
 災害発生時に実際に重機を操作するのは、各発注機関と災害協定を締結している企業や、施工中の工事を中断して臨時に出動する企業のオペレーターだ。しかし、長く続いた公共事業予算の削減、技能労働者の高齢化、新規入職者の減少などにより、地域建設業の人手不足は深刻化している。
 群馬県内の除雪作業を長年担当してきた地元企業の作業員は、仮に新規入職者が増えても「熟練のオペレーターに成長するまでに10年はかかる」、建設機械メーカーの担当者も「重機の操作は車の運転と同じで、経験の年数が一緒でも実際のテクニックにはセンスの差が出る」と話し、誰もが時間をかければ熟練の技を身に付けられるわけではないと課題を指摘する。
 こうした人手不足への対応の一つとして、関東整備局は、各発注機関が管理区分の範囲を超えて人員と重機を融通し、相互に応急復旧作業を補完する「相互除雪」の取り組みに乗りだした。例えば、道路の場合、複数の道路管理者の路線が交わる区間の災害対応を1業者だけで実施し、オペレーターの配置の重複を避ける。
 2月の大雪で高速道路を含む42路線(55カ所)の通行が規制され、山間部で一時孤立状態となる集落が発生した群馬県と関東整備局は、関東の都県で初めて相互除雪を基本方針に掲げた「大雪時の群馬県道路除雪行動計画」を11月下旬に策定。災害対応の手が行き届かない地域をゼロにするための新たな除雪体制を打ち出した。
 相互除雪の取り組みは、同じく2月の大雪に襲われた長野県も取り入れた。長野県は、地元建設会社らが結成する共同企業体に、路線別ではなくエリア単位で災害復旧作業を委託する新たな発注方式も導入し、より効率的に地域の除雪作業を進められる体制を整えた。エリア単位で地元企業に委託する災害復旧の仕組みは、11月22日に長野県北部で発生した震度6弱の地震時にも、損壊した地方道の応急復旧作業で効果を発揮したという。
 11月の長野県北部の地震では、被災地で通行止めになる路線が多数発生し、交通誘導のためのガードマンが足りなくなるという問題が起きた。災害対応に当たった長野県建設業協会大北支部の記録には「白馬村などでガードマンの手配ができないため、通常工事の休止依頼」「ガードマン会社に災害対応を優先するようお願い」といったやりとりが残されている。長野建協の会員企業はこうした問題に迅速に対応し、ガードマンの配置計画を柔軟に調整。24時間体制で通行規制が敷かれた現場の安全を確保した。

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