2015年2月27日金曜日

エシェルアン/ル・コルビジュエ建築設計資料のオンライン配信サービス開始

 建築に関する書籍出版やカタログ制作などを手掛けるEchelle-1(エシェルアン、東京都新宿区、下田泰也代表取締役)は、建築家ル・コルビジュエのスケッチや設計図面など約3万8000点のオンライン配信サービスを開始した。フランスのル・コルビジュエ財団と提携し、財団が所有する資料を約10年かけてデータ化。コルビジュエが設計した作品の資料をオンライン上で閲覧し、研究や設計活動に活用できるようにした。
 同社は19日にオンライン配信サービス「ル・コルビジュエ プランズ オンライン」をスタートさせた。
 価格は1年間契約で68万円。組織や団体ごとに契約できる。
 日本での販売は、アプリやウェブサービスの開発を手掛けるアーキノート(川崎市川崎区、青木恒享代表取締役)が行う。詳細は同社ホームページ(http://www.archinote-1.com/index.html)へ。エシェルアンは05~12年にはコルビジュエの建築設計資料を収録したDVD集「ル・コルビジュエ プランズ」(全16巻)を発売しており、今回はそのデータをオンライン上で閲覧できるようにし、検索機能も追加した。契約した組織内から同時にアクセスできる。日本語、英語、フランス語の3カ国語に対応している。
日本だけでなく世界の大学や研究機関、建築・設計事務所を対象にしており、下田代表は「建築学科がある教育機関は国内外に800近くある。より多くの団体に活用してほしい」と話している。

成田空港会社/第2PTB連絡通路の大空間休憩スペース、4月24日オープン

 成田空港会社が成田空港(千葉県成田市)の第2旅客ターミナルビル(PTB)本館とサテライトをつなぐ連絡通路で整備を進めている大空間の休憩スペース「NARITA SKY LOUNGE 和」=完成イメージ=が4月24日にオープンする。  休憩スペース(全長130メートル、専有面積約2200平方メートル)には、パーソナルブースやファミリーベンチ、ビジネスマン向けのパソコンデスク、イベントスペース、キッズパークなどを配置。飲食店やボディーケア施設、最新のトイレを体感できる施設「GALLERY TOTO」も入る。  施設名称は一般公募により866件の中から選定した。「和」をデザインコンセプトに、日本的なモチーフを率先して取り入れた憩いのスペースとして、乗り継ぎまでの待ち時間を快適に過ごせる空間を提供する。  13年9月に供用を開始した連絡通路の中央部に残っていた従来の旅客運行システム(シャトルシステム、本館~サテライト間)の軌道設備を撤去し、通路内の旅客用スペースを大幅に広げる。休憩スペースのオープン後は、現在運用中の外側の通路と動く歩道が到着動線となり、同スペースを含む中央部分が新たな出発動線になる。

2015年2月26日木曜日

建築3団体/書面契約の義務化、建築主に周知を/自民議連の総会で要望

 自民党建築設計議員連盟(額賀福志郎会長)の総会が25日、東京・永田町の党本部で開かれた。総会では、先の通常国会で成立した改正建築士法について、建築設計3団体(日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会)が、円滑な施行に向けて延べ300平方メートル超の設計・工事監理の契約を書面で締結することが義務付けられたことなどを建築主に周知するよう要望した。
 3団体が一般消費者である建築主への広報を含めて周知徹底を求めた主要事項は、書面契約の義務化に加え、適正な代価での契約締結の努力義務、無登録業務の禁止の徹底、建築士免許証の提示の義務化。
 このうち、無登録業務の禁止は法律の規定にはないが、改正に合わせて国土交通省が技術的助言によって徹底を図ることになっている。
 3団体の要望では、技術的助言だけでは建築主への周知が十分でないとして、事務所登録をしていない建築士事務所でないと設計・工事監理業務を行うことができないことを建築主に周知することを求めた。
 額賀会長は6月25日の改正法施行に向けて、「現場の声をよく聞かせていただき、設計・監理業務にも反映させるようにしたい」と述べた。

東日本高速会社/仙台市にメガソーラー建設/3月27日稼働、売電事業の初弾

 東日本高速道路会社は、東北自動車道に隣接した泉検札所跡地(仙台市泉区野村明神前1の7ほか、約2ha)に出力1000kw規模の太陽光発電施設(メガソーラー)を整備し、3月27日に稼働を始める。再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)を活用し、発電した電気は東北電力に売電する計画。高速道路会社が行う売電事業の初弾プロジェクトとなる。
 年間想定発電量は約128万8000kw時。設置した太陽光モジュールは約5700枚。施工はグループ会社のネクスコ東日本エリアサポートが担当した。
 東日本高速会社はこれまで高速道路のサービスエリアなどに小規模の太陽光発電システムを設置し、全体の出力規模は500kw程度。
 太陽光発電事業の取り組みについて同社は「適地やFITの価格見直しなどによってメガソーラー規模の売電プロジェクトの事業化は難しくなるが、自然環境の負荷低減の一環で、自社施設で利用する再生可能エネルギーの発電事業は引き続き積極的に進めていきたい」としている。

2015年2月25日水曜日

大成建設/エンパワーメント大賞を受賞/女性職域の積極拡大が評価

 大成建設が、女性の活躍推進・生産性向上を目指して独自の創意工夫を行っている組織を顕彰する第2回「エンパワーメント大賞」(主催=ワーキングウーマン・パワーアップ会議、日本生産性本部)を受賞した。女性の職域を積極的に拡大し、建設現場や営業職に就く社員が大幅に増加したことが高く評価された。20日に東京都内で開かれた「エンパワーメント・フォーラム2015」で表彰を受けた。  同社は2006年に女性活躍の取り組みを本格化させ、施策を立案・展開してきた。男性社員中心だった建設現場や営業職に女性の職域を拡大するとともに、女性社員の能力開発を支援。現場で施工や事務管理に従事する女性社員は06年に14人だったが、14年には140人と10倍に増えた。  「女性管理職の数を2020年に3倍にする」との目標を掲げており、09年には女性ライン管理職、14年には女性部長が誕生している。
日本生産性本部の茂木友三郎会長(右)と、大成建設の阿久根操代表取締役副社長

回転窓/水質浄化で汚名晴らせ

 千葉県北西部に位置する印旛沼。先日、この沼が大きく脚光を浴びる出来事があった▼地元・印西市の板倉正直市長が23日、2020年東京五輪のボート・カヌー会場を印旛沼に誘致する方針を表明。都内の日本ボート協会と日本カヌー連盟を表敬訪問し、「競技場やキャンプ地を作る上で大変好立地だ」とアピールした▼現在、東京五輪のボート・カヌー競技は東京都江東区の湾岸部に新設する海の森水上競技場で実施される計画となっている。だが、整備費が当初見込みを上回る可能性や、競技期間中の練習場を十分に確保できないなどの問題点が指摘されているという▼誘致できるかどうかはさておき、印旛沼が抱えている大きな課題は水質改善である。全国でもワースト上位を占める水質の悪さであり、湖沼水質保全特別措置法に基づく指定湖沼にもなっている▼市長は「会場整備を通じて環境浄化に取り組む」と語った。この方針に異論を挟むつもりはないが、五輪がきっかけでなくても水質浄化の取り組みを加速させることはできないものだろうか。一日も早く水質ワースト上位の汚名を晴らしてほしい。

2015年2月24日火曜日

東京メトロ/銀座線リニューアル/下町エリア7駅のデザイン決定、順次工事着手

石造りの美術館をイメージした上野駅ホーム
 東京メトロは、地下鉄銀座線の全19駅で進めるリニューアル事業のうち、先行して事業化する下町エリア7駅(浅草~神田)のデザインを決定した。これまでのデザインコンペで出された駅舎デザインやアイデアなどを参考に設計を進めてきた。駅周辺の地域性・特徴をデザインに反映させることで、下町エリアとして統一感を持たせた。7駅についてはリニューアル工事に順次着手。2020年東京五輪までにバリアフリー化を含めたリニューアルを完了させる。
 銀座線リニューアル事業では、全19駅を下町エリアのほか、▽商業エリア(三越前~京橋)▽銀座エリア(銀座)▽ビジネスエリア(新橋~赤坂見附)▽トレンドエリア(青山一丁目~渋谷)-の五つに区分し、約500億円を投じて大規模改修を行う。
 7駅の駅舎改良の実施設計業務は、浅草駅が交建設計、田原町と稲荷町の2駅を久米設計、銀座・日比谷両線の上野駅をパシフィックコンサルタンツ、上野広小路と末広町、神田の3駅をメトロ開発がそれぞれ担当。デザインコンセプトに「土地の記憶~親しみと愛着が増すほっこり感」を掲げ、木調や織物など下町の特徴を表す素材を活用したり、1927年の開業当時から各駅に残る構造体をデザインに生かしたりするなど工夫を凝らした。
 7駅のデザイン概要は次の通り。▽駅名(事業予定期間)=設計の特徴等。
 ▽上野駅(15~17年)=美術館のある街と桜を印象付けるデザイン。復刻版車両(1000系)など、銀座線の歴史にスポットを当てたメーン展示室とホームを位置付け、クラシカルな雰囲気を演出
 ▽浅草駅(15~19年)=寺社周辺の街並みに合わせ、べんがら色をベースとしたダークグレーで周辺環境に溶け込む色調を採用。改札口のデザインは地域のお祭り(桜祭り、花火大会、三社祭など)をテーマに設定
 ▽田原町駅(15~17年)=金属の素材感を引き立たせたホームや、光天井に柔らかい色味の金属とガラスを組み合わせた改札口など、道具街の門前、下町としての「手仕事感」を印象づけるデザイン
 ▽稲荷町駅(15~18年)=切妻屋根の家並みをイメージしたホームや温かみのある木調の壁で構成する改札口など木をベースに街の歴史を表現
 ▽上野広小路駅(15~19年)=演芸場や呉服店、百貨店などが集積する地域の「きらびやかさ」を重視し、コンコースには織物の文様を用いたデザインを採用。ホームの天井は黒色で仕上げ、空間を広げる演出
 ▽末広町駅(15~18年)=秋葉原の北側玄関口の地域特性を生かし、光を使った「エレクトリック・ゲート」をデザインコンセプトに設定。訪れた人々に電気街を印象付ける仕掛けを採用
 ▽神田駅(15~17年)=新旧のものが混在する街並みを表現。ホームでは歴史的遺構の鉄鋼框(かまち)などを照明で演出。

回転窓/しょせんは虫のまね

 ヒトのつくり出すものに真に独創的なものはほとんど存在しない。いずれも過去に存在したものの焼き直しであり、大なり小なり模倣である-。昆虫学者の丸山宗利さんが近著『昆虫はすごい』(光文社新書)にそう書いている▼昆虫は地球上に人類が誕生するはるか昔から繁栄してきた。だから、人間のやることなすことのほとんどは昆虫が先にやっているらしい。狩猟採集から農業、牧畜、建築、戦争も▼建設関連だとこんな例が挙げてあった。工事現場で危険箇所に張る「虎ロープ」。黒色に黄色や赤色模様で捕食者に有毒性を知らせるのは、昆虫界では定番中の定番だそうで、それを利用したのが虎ロープという。確かに、恐ろしいスズメバチの胴体の色を見れば納得がいく▼昨年、昆虫のクローズアップ写真で知られた小学生向けの「ジャポニカ学習帳」の表紙から昆虫が消えたと話題になった。「気持ち悪い」と苦情が相次いだためという。大先輩である昆虫に随分と失礼な話ではないか▼「万物の霊長」などと威張っていても、内実は虫のまね。そう考えれば、人間ももう少しは謙虚になれると思うが。

2015年2月23日月曜日

駆け出しのころ/五洋建設取締役執行役員土木部門土木本部副本部長・野口哲史氏

 ◇自分が好きで責任持てる仕事を  中学から大学までサッカーをやっていたこともあり、学生時代から皆で協力して何かをやるのが自分の性格には合っていると思っていました。五洋建設のことは当時上映されていた高倉健主演の映画「海峡」でしか知りませんでしたが、特徴ある建設会社に入ろうと就職先に選びました。  入社して最初に配属されたのは本社土木設計部でした。半年ほどたって東北支店の技術課に異動し、入社3年目になって初めて現場に出ます。学生時代に専攻していた山岳トンネルの工事でした。それから3年ほどの間に下水道、防波堤、高速道路橋脚の工事を次々と経験させてもらいました。若い時にいろいろな工種を経験できたことは視野を広げる上で大変ありがたかったと思っています。  最初のトンネル現場は豪雪地帯にありました。ある日、先輩から雪が降る前に坑口近くの仮設ヤードの写真を撮っておくよう指示されました。私はその意図が理解できませんでしたが、その冬初めて雪が一気に積もると、どこに何の資材を置いてあるかが全く分からなくなったのです。必要な資材を雪の中からかき出し、坑内に搬入する時にこの写真が威力を発揮したのです。不利な環境ではあっても知恵で克服できると教えられました。  29歳の時に再び本社勤務となり、しばらくは陸上土木を担当します。しかし、海上土木の分野にどうしても行きたくて上司にそれをお願いしました。32歳のころでした。これが大きな転機となり、それから関西国際空港2期、中部国際空港、羽田空港D滑走路の各プロジェクトに携わることができました。希望を受け入れてもらえたことで格段にモチベーションが上がりました。  かつて上司から言われたことで、今も鮮明に覚えていることがあります。お客さんを訪問する手土産にショートケーキを5個買ってくるよう指示され、私は言われた通りに買ってきたのです。ところが奇数なので箱の中にスペースができてしまい、「これではケーキが動いて崩れてしまう。もう1個買い足すことに気付くべきだね。費用は大した話ではない」と注意されたのです。つまり前提条件は常に変わるもので、その都度何を優先するべきかまず自分で考えろということです。これには「俺は気が利かないなぁ、段取りとはこういうことか」とハッと気付かされたものです。  若手には自分が好きで責任を持ってやれる仕事を見つけてほしいと思います。もともと私は周囲の人と議論して問題を解決して行くことが自分の性に合っていたのですが、先の展開を読め、前提条件を疑えと教えられ、ますますそこに拍車が掛りました。40歳代は会社を離れほとんど外部に出向していました。こういう経験を経て多分野の方々と楽しくやって来られたのだと思っています。  (のぐち・てつし)1983年京大工学部土木工学科卒、五洋建設入社。10年土木部門土木営業本部土木プロジェクト部長、12年執行役員名古屋支店長、14年4月土木部門土木本部副本部長兼技術研究所担当兼技術戦略室担当、同6月取締役。大阪府出身、54歳。
羽田空港D滑走路建設のための調査団に同行し、マデイラ空港でポルトガル政府のエンジニアと
(2001年2月、右から3人目)

凛/国土交通省関東地方整備局横浜国道事務所工務課・高橋智子さん

◇選んだ道に間違いはない
 地元の長岡工業高専に通っていた04年、新潟県中越地震が発生した。電力、水道などライフラインの機能がまひした被災地に、多くの地域から道路ネットワークを通じて支援物資が送られてきた光景が今も目に焼き付いている。「道路による地域のつながりの大切さを知った瞬間だった」。
 関東地方整備局の門をたたいたのは、「被災した自分の経験を首都圏の災害対策に役立てたい」との思いから。入省2年目の11年3月に東日本大震災が発生した時には、先輩たちが被災地の応援に向かう背中を見て、「選んだ道に間違いはない」と確信したという。以降、経験を重ねるごとに仕事に対する充実感も増している。
 現在は横浜国道事務所工務課で、神奈川県内に整備中の横浜湘南道路、小田原箱根道路などの工事費を算出する業務を担当する。工事発注の手続きは設計、積算、入札公告など複数の担当者で行う共同作業のため、「スケジュール管理には細心の注意が必要になる」。
 できるだけ、現場に足を運ぶ時間も確保し、「入札公告時にどの業者が見ても分かりやすい積算の条件明示を行うよう心掛けている」。
 今後は、インフラの社会的役割を一般に広く知ってもらうため、「技術力の向上とともに、言葉の表現力にも磨きをかけたい」。その一環として、土木を学ぶ学生に「関東整備局は、地域づくりの始まりから終わり、完成から維持管理まで携われる魅力的な職場」とメッセージを送る。(たかはし・ともこ)

中堅世代-それぞれの建設業・83/縁の下の力持ちにもっと光を

 二十数年前に建設会社に縁故採用で入社した柳下恵美さん(仮名)は、営業事務を長年務めてきた。就職活動をしていたころは建設業に特別な思いはなかったが、今は違う。会社全体で取り組んだ大型案件を受注できた時の充実感は、仕事を続けるモチベーションになっている。
 入社時の面接では海外部門への配属を希望した。願いがかなったのは2年目。基本的には国内で海外案件に応札するための英文の資格審査書類や入札書類、社内決裁用の書類などを作成することが主な業務。時には海外の現地事務所に出向くこともあった。
 今は海外の大型案件に取り組む際の査定が厳しくなり、簡単には手を出せないようになってしまったが、当時は受注を目指す案件の選別基準は比較的緩やかで、現地の国家的プロジェクトにも取り組むことができた。「受注はできなかったが、北アフリカの地下鉄建設では、諸先輩にいろいろ教わりながら営業事務として関わった。今でも思い入れが強い案件」と振り返る。
 社内では転勤のない地域職という位置付けだ。入社当時は女性の事務系社員は縁故採用だけ。数年後に一般の入社試験で採用枠を設けるようになったという。それでも女性の総合職はなく、しばらくしてから設計部門に女性総合職が入り始めた。今では建築・土木の技術系総合職で女性採用が定期的に行われ、環境は変わりつつある。一方で、事務系については女性社員はまだまだ肩身が狭いと感じる。
 「技術系・事務系あるいは総合職・地域職にかかわらず、限られたグループ長・部門長といったポジションを女性社員が男性社員と争うようになったら、会社の女性活用の取り組みも本物になる」とみている。
 建設生産に直接的に関わる技術職はもちろん、現場などを総括的に管理する経理系の事務職とも違い、営業事務の仕事はあまり目立つものではない。でも、「自分たちが毎日、申請業務や各種データ整理などを淡々とこなしているからこそ、経営や工事に関わるさまざまな業務を円滑に進めることができている。その重要さを会社はもっと自覚するべきだ」と思う。
 最近は事務職の派遣社員化が急速に進む。社内のイントラシステムへのデータ入力などのマニュアルはあるが、細かな業務改善で培った個人のスキルやノウハウの継承は簡単には進まない。「建設事業のベースのことをきっちり処理していく営業事務は縁の下の力持ちだけれど、書類作成時のアピールポイントや、データ整理を効率的に行う作業方法などは個人のノウハウ。すぐに代えが利く職種ではない」と思っている。
 建設現場の技術伝承だけでなく、事務職の人材の育成・確保にも真剣に取り組まないと、会社全体の事業遂行能力や営業力は低下する一方ではないか。それが心配だ。
 海外部門では、営業事務のベテラン社員の人たちが、今後数年でいなくなる。それを考えても、もっと先を見据えた人事戦略が必要ではないかと感じている。
 現在は、国内の土木事業部門で各支店の受注目標・実績を管理する仕事を主に任されているが、海外部門の営業事務の後継者として再異動させてもらえないだろうかとひそかに願っている。その時に備え、英語を勉強し直し、縁の下の力持ちのスキルに磨きをかけようとも思っている。

サークル/三菱地所設計自動車部/「心地よさやフラットな関係を大切に」

 自動車レースのF1ブームを背景に、三菱地所の設計部門だった1991年に発足した自動車部(通称・車部、シャブ)。2度の休止期間を経て、発足20年目に当たる2011年に再結成された。
 発足時のメンバーは20代の若手18人(男11人、女7人)だったが、現在は40代の男性社員を中心に、20代から60代までの30人(男28人、女2人)で構成する。
 所属は三菱地所設計、グループ会社とさまざま。正社員・協力スタッフなど、職能や役職を問わずに参加できる。会社内での上下関係や年齢差、雇用関係などがまったく意識されないフラットな集まりになっているのが特徴だ。
 真の「クルマ好き」の集団であるため、部員が集まれば100%、クルマの話題しか出ないという。主な活動は年に1、2回の走行会と懇親会。最近では、伊豆半島、天竜川流域、筑波山などで走行会を行っている。1回の走行会には十数人が参加し、十数台の車を連ねて走る。それぞれがボンネットを開け、エンジン仕様と音の品評会を行うのが恒例だ。
 代表を務める野村和宣建築設計三部長は、「クルマを愛する者たちの集いという『心地よさ』や『フラットな関係』を大切にするため、今後も変わらぬ活動を続けていきたい」と話している。

2015年2月20日金曜日

野村不/新宿野村ビルの長周期地震動対策工事に着手/最上階に制振装置設置

 野村不動産は、東京都新宿区の「新宿野村ビル」(西新宿1の26の2)の長周期地震動対策工事に着手した。竹中工務店と共同開発した制振装置「デュアルTMD-NT」をビル最上部の52、53階の屋内に設置する。設計・施工を竹中工務店が担当し、16年9月の竣工を目指す。事業費は非公表。
 新たに開発したデュアルTMD-NTは、建物の揺れと逆方向に動くおもりを使って建物の揺れを抑制するTMD(チューンド・マス・ダンパー)を活用した装置で、高さは3メートル。700トンのおもりを2段積層ゴムとリニアスライダーで支持し、建物の揺れ幅が小さい時は積層ゴムが、大きい時はリニアスライダーがスライドし、長周期地震動の揺れを軽減する。高さ209メートルのビル最上部の両端に1基ずつ設置する。設置後は建物の揺れ時間が半減し、地震による最大変形が10~20%抑えられるなど揺れ幅を低減する効果があるという。
 既に十分な耐震性能がある新宿野村ビルに最先端の制振性能を付加することで、テナント企業や来館者の安心感を高めることが狙い。野村不は改修方法の選定に当たり、テナントの専有部内にダンパーを設置せず、既存のエレベーターで部材を小分けにして運搬できる竹中工務店のデュアルTMDを選定し、両社で新宿野村ビルに適した装置に改良した。
 デュアルTMD-Nは1月26日に国土交通大臣認定を取得済み。両社共同で制振装置の構成に関する特許を出願している。

回転窓/より良いルールにするために

 「趣旨は理解できるが不安もある」「人事のローテーションもあり、ノウハウが蓄積されにくい」「財政上の制約もある」…▼改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)に基づく発注事務が4月から本格運用されるのを前に、地方自治体からそんな声が出ている。発注者の共通ルールとして作成された「運用指針」を浸透させるのは、思った以上に大変そうだ▼国土交通省が、自治体の職員を対象に運用指針を周知するための説明会を各地で開いている。不安の声はそこで出たものだ。多くの自治体が同じような悩みを抱えていると推察される▼公共工事の発注者といっても、国交省のような巨大組織から、技術者が1人もいない小規模町村まである。だからこそルールづくりでは自治体や業界から多くの意見を聞くことに力を注いだ。それでも「もっと自治体と意見交換するプロセスがあってもよかったのではないか」との声が出ている▼ルールは作って終わりではない。実施段階でより良いものにしていくことも必要だろう。運用指針が「発注者間の連携体制構築」をうたった意義は、その意味でも大きい。

2015年2月19日木曜日

日建連九州支部/五ケ山ダム(福岡県)で現場実務勉強会開く

 日本建設業連合会(日建連)九州支部(相川善郎支部長)は17日、福岡県那珂川町で進められている五ケ山ダムの建設工事現場で現場実務勉強会を開いた。勉強会はこれまでも開いているが、実際の工事現場での開催は初めて。若手技術者を中心に支部会員企業から25人が参加。最新の技術を駆使して進められている工事の現場を見学し、担当技術者と情報交換した。
開会に当たり、同支部積算資材委員会の佐野忍副委員長代理は「生産性を向上させ、賃金を引き上げないと若者は建設業界になかなか入職してこない。生産性を高める策を共有することが必要だ。そのためにも現場の第一線で活躍されている皆さんが多くの現場の情報や技術に触れることは重要。本日のような環境作りの取り組みが、魅力ある建設産業の再生と担い手不足の解消の一助になれば」とあいさつした。
 その後、堤体建設工事を担当している鹿島・飛島建設・松本組JVの林健二所長、骨材製造工事を担当している大成建設・安藤ハザマ・松尾建設JVの山下益副所長から工事の内容や進ちょく状況などについて説明を受け、両氏の先導で施工中の堤体や仮設備、原石山などを約1時間かけて見学した。
 五ケ山ダムは洪水調節や渇水時の水の緊急補給、水道用水の確保などを目的に福岡県が2級河川那珂川水系那珂川に計画している多目的ダム。重力式コンクリートダムで堤高102・5メートル、堤頂長556メートル、堤体積約93万5000立方メートル、総貯水容量4020万トン。13年度までに転流工や基礎掘削を終え、約1年前から本体コンクリートを打設している。
 本体コンクリート打設では、都道府県営ダムとしては国内で初めて低標高部から高標高部まで全面的に巡航RCD工法を採用。セメント量の少ない超固練りのRCDコンクリートを内部に先行して打設し、これと分離して外部コンクリートを後で打設することで工期の短縮や施工性の向上、重機と作業員の分離による安全性の向上などを図っている。
 現在は堤体のおよそ半分の高さまで本体コンクリートを打設しており、年内にも打設を完了する見通し。その後に周辺整備などを行い、17年度中の完成を予定している。

Key Person/TOTO商品営業企画グループリーダー・日高和也氏

 ◇省エネ住宅ポイント追い風に/リフォームマインド向上期待  TOTOで、政府の省エネリフォーム推進施策「省エネ住宅に関するポイント制度(通称・省エネ住宅ポイント制度)」対応の中心を担っている。消費増税後の反動減で冷え込んだ住宅業界を活性化させる役割が期待される中、制度の内容や申請方法を分かりやすく伝える電話相談室を開設。「制度を使うエンドユーザーと工事する工務店、双方の準備を万端にすることで、期待される需要増を着実に取り込んでいきたい」と話す。  省エネ住宅ポイントは、従来の復興支援・住宅エコポイントと違い、水回りに関するリフォームだけでもポイントの対象になるのが特徴。「以前は制度に対し消極的だった水回り専門の工務店などから問い合わせが多く寄せられている」と、同社と関わりの深い施工業者からの反応に手応えを感じている。  初めてこうした制度を使う施工業者のために、全国で講習会を開催。商品提案のチラシ配布なども行った。エンドユーザー向けには、ショールームでの説明員の教育、イベント開催、ポップやのぼりの設置など、制度の決定後、迅速な対応を進めてきた。  制度の効果が「目に見える形で出てくるかどうかは不透明」とみるが、「リフォームに興味を抱くマインドが上がることこそが重要」と認知と浸透に力を注ぐ。(ひだか・かずや)

2015年2月18日水曜日

「第1回 東京オリンピック建設需要、東日本大震災復興需要に向けた外国人建設就労者の有効活用とリスク管理セミナー」 開催のご案内

 日刊建設工業新聞社は3月19日(木)、東京都港区の浜離宮建設プラザで「第1回 東京オリンピック建設需要、東日本大震災復興需要に向けた外国人建設就労者の有効活用とリスク管理セミナー」 を開きます。

 2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた建設需要、東日本大震災の復興需要の高まりを受け、2015年4月から国土交通省による「外国人建設就労者受入事業」がスタートします。外国人の人材を有効に活用し、労働災害などを未然に防ぐための環境整備をどのように進めていくべきかを、セミナーを通して伝えます。

 セミナーの詳細につきましては下記リンク先の案内PDFを参照ください。

 案内PDF

東京メトロ/南千住駅で太陽光発電開始/付帯設備に電力使用

 東京メトロは17日、日比谷線南千住駅に設置した太陽光発電システム(発電出力80キロワット)の稼働を開始した。年間の発電量は約8万キロワット時(一般家庭23世帯分)を見込み、二酸化炭素(CO2)の排出量を約42・4トン削減できるという。
 同駅で発電した電力は照明や空調などの付帯設備に使用。発電量が多い場合は三ノ輪駅など隣接駅にも供給する。
 東京メトロは長期環境戦略の中で、地上駅の屋根に太陽光発電システムを導入することを掲げ、これまでに同駅のほか、千代田線北綾瀬駅、東西線(西葛西駅~原木中山駅)7駅の計9駅にシステムを設置した。
 今後は東西線西船橋駅にも導入する予定。同駅への設置により、東西線地上8駅合計でメガソーラー規模(発電出力1000キロワット以上)となる「東西線ソーラー発電所」計画が完了する。

TOTO/東京・六本木でウォシュレット一体型便器発売記念イベント開く

 TOTOは、温水洗浄便座(ウォシュレット)一体型便器の新「ネオレスト」を今月発売したのを記念して、東京都港区の六本木ヒルズで14~15日にイベントを開いた。ネオレストで使っている汚れの分解や除菌技術をゲーム感覚で知ってもらい、商品に興味を持ってもらうのが目的。14日がバレンタインデーだったこともあり、カップルや家族連れなど2日間で2500人が来場した。  イベントは体験型のゲーム形式。イベントスペースの入り口に設置された高さ3メートルの巨大な便座の模型をくぐり、便器をイメージした映像空間の中で体を動かしたり、9台設置された実機の新ネオレストに書かれたクイズに答えたりしてキーワードを集める。キーワードを集めた参加者には限定グッズが配られた。  新ネオレストは、水道水に含まれる塩化物イオンを電気分解することで除菌成分の次亜塩素酸を含ませた「きれい除菌水」で洗浄する機能に加え、トイレ空間のにおいを取る「においきれい」機能を新しく備えたのが特徴。国内だけでなく、中国、アジア・オセアニア、北米、欧州と進出しているすべての国・地域で同時発売するなど同社の基幹商品としての役割も担う。

回転窓/未来の記念碑に

 街を歩いている時に記念碑を見つけると、急いでいてもつい足を止めてしまう。その土地の歴史やゆかりの人などが分かり、ほんの少し非日常感を味わえるのがいい▼先日も東京・八重洲(中央区)で、ある碑に出会えた。江戸時代にオランダから来航したヤン・ヨーステンの記念碑がそれ。JR東京駅から300メートルほど離れた八重洲通りの中央分離帯に1989年、日蘭修好380周年を記念して設置された▼1600年、ヨーステンはオランダの商船リーフデ号で豊後の国(現大分県)に漂着。その後、徳川幕府に厚遇され江戸に住んだ。この地が現在の八重洲に近く、〈ヤン・ヨーステン〉が〈ヤンヨウス〉→〈ヤエス〉と訛(なま)って地名になったという(大石学著『地名で読む江戸の町』PHP新書から)▼16日付の本紙4面で、東京駅八重洲口前の2地区で進められる大規模再開発の施設計画案が報じられた。総延べ床面積55万平方メートルものビル群が形成される。10月の都市計画決定を目指しているという▼東京の玄関口・八重洲。歴史ある街に新たな彩りを添え、未来の記念碑にもなる施設づくりを期待したい。

2015年2月17日火曜日

国交省/国連防災世界会議の専用HP開設/3月14~18日に仙台市で

 国土交通省は16日、3月14~18日に仙台市で開かれる第3回国連防災世界会議を1カ月後に控え、同省主催のシンポジウム・セミナーなどを紹介する専用ホームページ=写真=を開設した。
 同省は、水管理・国土保全局や東北地方整備局が中心となって、東日本大震災からの復興をはじめ、都市洪水、土砂災害、下水道などの防災対策をテーマにシンポジウムやセミナーを企画。災害現場の写真展の開催も企画している。同省の会議での取り組み情報は常時更新していく。

東北整備局/『災害初動期指揮心得』電子書籍版を無料配布

 東北地方整備局が東日本大震災で得た経験知を冊子にまとめた「東日本大震災の実体験に基づく災害初動期指揮心得」の電子書籍が、9日からAmazonのサイトを通じ無料でダウンロードできるようになった。日本語版と英語版があり、Kindleの読書端末で閲覧できる。パソコンに専用のKindleアプリケーションをダウンロードして読むこともできる。
 同心得は、各地方整備局の指揮官が未曽有の大規模災害に直面した際に心得ておくべき指針として13年春にまとめた。
 東日本大震災の復旧・復興が軌道に乗るまでの、最も速やかな決断を迫られた1週間の対応状況を詳しく説明している。
 電子書籍は次のサイトでダウンロードできる。
 ▽日本語版(http://www.amazon.co.jp/dp/B00S8UXG9G)
 ▽英語版(http://www.amazon.co.jp/dp/B00S8UXFU6)。

2015年2月16日月曜日

駆け出しのころ/フジタ常務執行役員国際事業部長・菅沼広夫氏

 ◇大切なのは心のオープン度  アルゼンチン大使を務められた津田正夫さんの著書『火の国・パタゴニア―南半球の地の果て』を学生時代に読み、自分もいつか南米に行きたいと思うようになりました。このため南米に強いフジタに入社したのですが、後から聞くと会社の海外事業はイラクに中心が移っていたころでした。  入社2年目、東京・大森のマンション建設現場に配属されます。最初は分からないことばかりで、学生の時に思い描いていた仕事の内容とも違うために悩んでいました。そのころに佐々淳行さんが書かれた『危機管理のノウハウ』にたまたま出会い、建設現場はまさに毎日が危機管理なんだと分かりました。それ以降、前向きに仕事ができるようになりました。  国内の現場を担当して11年ほどがたち、海外勤務の機会はもうないだろうと考えるようになっていたころのことです。関東建築支店に異動となったため、栃木に家を買ったのですが、入居して3カ月ほどで中国・西安への転勤が決まります。34歳の時でした。  1989年5月、転勤する2日前だったと記憶していますが、中国・北京に戒厳令が出されました。そのニュースを家で知り、会社に電話して対応を聞くと「(海外では)よくあることなので、そのまま行ってください」との返答でした。しかし、転勤して間もない6月4日に天安門事件が起こります。私たちは上海を経由して帰国しましたが、1カ月ほどして再び中国に戻りました。  西安では当社が投資するホテル建設事業に携わりました。施工は現地の建設会社です。大きなアトリウムにエレベーター3台を設置するため、全体の芯を決める墨出しをどうやるかで皆が悩んでいたので、私がやって基準を示したことがありました。それまでは中国の方たちにどこか日本から来たお客さんといった見方をされていましたが、これをきっかけに認めてもらえたような思いでした。  西安での仕事が終わると次は上海に移り、工場建設などを担当しました。最初は会社から1年半だけという話だったのですが、それが19年になりました。  若い人たちにはぜひ海外に出てほしいと思っています。国内でも出身地とは異なる地域に行くと、文化の違いを感じます。海外だから合わない人がいるといったことではなく、心のオープン度があれば国内外を問わずうまくやれる人はやれます。海外に出てみると何かを得られるものです。  (すがぬま・ひろお)1977年北大工学部建築工学科卒、フジタ工業(現フジタ)入社。04年フジタ国際事業部中国部長、06年国際事業部副事業部長、07年国際事業部長、10年執行役員、12年4月から現職。藤田(中国)建設工程董事長。秋田県出身、60歳。
中国・西安のホテルに職員組合幹部(当時)が訪れた時の一枚

凛・三菱地所レジデンス街開発事業部開発第三グループ主任・大武麻子さん

◇インパクトある街づくりを
 「ミーハー的な性分で、世の中にインパクトを与える仕事がしたかった」
 子どものころ、近所に高層ビルが建設された。最初は異様さを感じたが、今では街のシンボル的存在に変わっている。そんな経験から街づくりに興味を持ち、デベロッパーを就職先に選んだ。
 入社後、オフィスやマンションの開発部門に配属された。建築の知識はゼロに等しく、設計会社や建設会社など事業関係者から専門用語やその意味を学んだ。「知識も人生経験も豊富な大先輩の話を直接聞けるのはとても幸せなこと。毎日勉強できる環境が楽しかった」と振り返る。入社2年目に携わったビル開発では、頼りにしていた先輩が急に異動。新米ながら事業主を代表してさまざまな打ち合わせに出席し、その場で物事の決断を迫られるような場面もあった。
 「その道のプロたちに囲まれて最初は気後れしたけれど、コミュニケーション能力を磨くことができ、仕事に対する責任感も芽生えた」。根っからのポジティブ志向で逆境を成長の糧にしてきた。
 知らない街を歩くのが好き。数年前に訪れたスペインのバルセロナでは、お気に入りのガウディの建築群を何時間もかけて巡り歩いた。「建築に込められたちょっとした遊び心」に魅力を感じるという。「いつかは世界の名だたる建築家と一緒に仕事をしたい」との夢を持つ。ミーハー的な感性を原動力に、これからもインパクトを与える街づくりに関わり続ける。(おおたけ・あさこ)

サークル/協和エクシオ関西ヨガクラブ/「継続は力、心身ともに健康に」

 深い呼吸とさまざまなポーズで瞑想(めいそう)の世界に没入していく。古代インドが発祥といわれるヨガは、健康法の一つとして多くの人に親しまれている。09年に「会社公式クラブ制度」が創設されたと同時に西日本本社で活動を開始した。代表を務める村上瑠意子さん(西日本本社勤務)によると、「所属部門に関係なく、共通の趣味を通じて社員の交流を深めたい」と思ったのが創部のきっかけ。現在の部員は17人で、うち10人が女性という。
 インストラクターを招いて月2回行うレッスンが活動の中心。「ヨガは続けることで少しずつ効果が得られるもの。『継続は力なり』で、和気あいあいと楽しく活動しています」と村上さん。部員一人一人が目標を持ち、楽しみながら体を動かすことで、自然と気持ちが落ち着き「心身ともに健康になれる」そうだ。
 少しでも多くの人がヨガに興味を持ってくれるように、サークルでは始業前のラジオ体操に「朝ヨガ」を追加し、昼休みにもリフレッシュ効果のある「昼休みヨガ」を行うよう働き掛けている。
 性別や年齢を問わないのはもちろん、体が硬い、運動が苦手という人でもヨガは楽しめるといい、村上さんは「組織を越えて活動できる場をこれからも作っていきたいですね」と話す。

中堅世代-それぞれの建設業・82/戸惑い渦巻く被災地で果たすべき役割は

 縁もゆかりもなかった東北に配属されてから間もなく20年になる。建設コンサルタントの富永正さん(仮名)は、ニュータウンや臨海エリアの開発などで変貌する故郷を目の当たりにして育った。街づくりは格好いい-。そうした憧れも後押しして、大学では土木を選んだ。
 締め切りが迫った論文を徹夜で書いていた早朝、大きな揺れを感じた。阪神大震災だった。
 あの日のことは、今でも鮮明に覚えている。実家も地元も、ぐちゃぐちゃになった。何とか元に戻したい。そうした思いから、入社時に関西勤務を希望したが、辞令に記された行き先は東北だった。そんな自分が今、東日本大震災の津波で大きな被害を受けた沿岸部で、復興まちづくりに取り組んでいる。
 仕事は深夜に及び、休みもままならない。妻にも子どもにも迷惑を掛けていると思う。でも、今までの仕事人生の中で一番のフィールドにいる。それは間違いないと思う。
 建設コンサルタントの仕事の肝は、コミュニケーションにある。発注者によって組織も相手も千差万別。得意な分野もあれば苦手なところもある。そこを見極め、足りない部分をフォローしてあげる。偉そうに聞こえるかもしれないが、建設コンサルタントはそうやって仕事をしてきた。そこに存在意義があったのに、最近は「言われたことはやります。言われたこと以外はやりません」という姿勢に変質している気がしてならない。それは、震災復興で求められるニーズとかけ離れている。
 正直な話、何をやるべきか定まっていない状態で指示が下りてくることも多い。やらなければいけない作業はしっかりとやる。だが、例え発注者の命令であっても、やる必要がないことはやらない。それを見極めるよう心掛けている。「本当にそれを今やるべきなの?」と言いたくなるような話が山ほど来るからだ。物事には手順がある。条件や合意が固まっていないタイミングで動いたら、必ず手戻りが生じる。
 何を最優先すべきかを判断する上で、指針となるキーワードは「一日でも早く」だ。無駄なことをしている時間はない。
 経験したことがないような規模の復興事業に追い立てられ、被災自治体は戸惑っている。行政担当者も自信がないのだ。
 被災地では、いら立ちや苦悩、そして希望が入り乱れている。その混沌(こんとん)にどっぷりと漬かりながらも、できるだけ早く冷静かつ客観的に判断し、現実性のある道筋を整える。それが被災地で働く建設コンサルタントの大事な役目の一つだと思う。
 最近、新たな事業領域として行政マネジメントへの展開が言われているが、少し違和感を覚える。自分たちは橋や道路などの設計を手掛け、その中でいろいろなことに気付いてきたのではないかと思うからだ。「そんなところに道路を通してどうするの? 維持管理にすごいお金がかかってしまうよ」と言うべき場面があったのではないか。われわれは単なる「設計屋」ではない。後になって「実は無駄だと思っていました」などと言うのはプロとしてどうだろう。本当に国民にとって望ましいあり方を、まずは自分たちがしっかりと考えることが大事だと思う。
 公務員にはならない。自分が必要とされるのは、今の仕事だから。

2015年2月13日金曜日

Woman/東北地方整備局河川部地域河川課技官・吉田奈月さん

◇専攻生かし復興に貢献
 昨年4月に入省し、河川部で補助河川事業を担当している。出水時などに自治体との連絡・調整役を務めながら、一日も早く業務を覚えようと奮闘している。
 福島県いわき市出身。長岡技術科学大学で環境システム工学を専攻し、地盤工学や都市計画、構造などを幅広く学んだ。3年生の時に東日本大震災が発生し、就職先の選択を大きく左右した。
 「学生時代に学んだことを生かして震災復興に貢献したい」--。福島県いわき市沿岸の実家が津波の被害を受けたことで、東北の復興に役立てる仕事に就きたいとの決意が固まった。
 就職活動ではゼネコンの門をたたくことも考えたが、女性として長く仕事を続けるには公務員がいいと感じた。入省1年目ということもあり、大きなトラブルは経験していない。「新人ということで許されている部分があると思う」と気を引き締めている。
 大学の同級生の大半が東京に就職してしまい、寂しさを感じることもある。「女子学生に建設業に入ってきてほしい」とメッセージを送る。
 いずれは復興事業だけでなく、子どもたちが楽しく遊べる公園の整備に携わってみたいという。趣味は野球観戦。お菓子作りが得意。将来は「仕事と家庭を両立したい」。公私ともに充実させることが大きな目標だ。(よしだ・なつき)

NTTファシリ、オートデスク、トプコン/歴史的建造物(山口県)3Dモデル化完了

 NTTファシリティーズ、オートデスク(東京都中央区、ルイス・グレスパン社長)、トプコンの3社は、山口県内で進めていた歴史的建造物の3次元(3D)モデル化を完了した。3社の技術を使って構造躯体だけでなく、建具などのデータも取り込んでBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)化。今後、施設の維持・管理に応用する。ここで得た知見を生かして、3Dモデルを使ったFM(ファシリティー・マネジメント)の事業化も検討していく。  プロジェクトでは、NTTファシリティーズがマネジメントを担当。オートデスクがBIM、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)ソフトウエア、トプコンが計測作業で使用する3Dレーザースキャナーなどを提供した。  建物内外をレーザースキャナーで照射。膨大な点群データをソフトウエアに取り込み、内装などの情報も含めて3Dモデル化した。改修工事や展示のシミュレーションを行うほか、CIMを使って周辺の下関市唐戸地区の3Dマップも作成した。  プロジェクトは、下関市にある有形文化財「旧逓信省下関電信局電話課庁舎」(現田中絹代ぶんか館)で実施。建物はRC一部れんが造3階建て延べ836平方メートルの規模で、1924年に竣工。大正時代特有の設計や装飾が数多く現存する貴重な建築財産という。  これと同規模の建物を3Dモデル化するには、スキャニングに4日、モデル化に2日程度を要する。3Dモデルは施設の運用や維持管理、観光資源、そのほかさまざまな用途に展開できるため、3社は事業化を検討する。  12日に東京都内で記者会見したNTTファシリティーズの阿久津好太公共事業部長は「現在、文化財に指定されている建造物は全国に約1万4100棟ある。今回のプロジェクトを機に3Dモデル化の事業化を考えていく」と話した。  作成した3Dデータは田中絹代ぶんか館で開催している特別展(3月29日まで)で14日から展示するほか、同館のホームページ(http://www.kinuyo-bunka.jp/)で見ることもできる。

回転窓/コンビニでちょっと一杯

 「角打ち」と書いて「かくうち」。関東では酒屋で酒を買って店内で飲むことをこう呼ぶ。かつて一合升の角に口を当てて酒を飲んだことに由来するらしい▼角打ちを認めている酒屋には簡素な机やカウンターがある。つまみは店で売っている乾き物や缶詰。給料前の懐具合の寂しいサラリーマンにはありがたい。狭い店内で見知らぬ者同士が親しく話せるところにも魅力がある▼サラリーマンの多い東京の新橋や神田の路地を歩くと、今も角打ちの店を見る。酒やつまみをすべて自動販売機で提供する店も。店内に生ビールのサーバーを置き、お金を投入すると紙コップにビールが自動で注がれるところもある▼最近、都心部には「コンビニバル」と呼ばれる店内で飲食ができるコンビニエンスストアが登場した。簡単に立ち寄れる気軽さが受け、コンビニ商品を肴(さかな)にちょっと一杯という若者もいるらしい▼忙しい建設業界で中堅社員が「若手と飲む機会が減った」と話すのを聞いた。いきなり角打ちはハードルが高いが、コンビニバルならどうだろう。コミュニケーション不足が気になる方は部下を誘ってみては。

2015年2月12日木曜日

東北運輸局/JR仙石線陸前大塚~陸前小野間復旧工事の完成検査終了

永松局長(左)から合格書を受け取った竹内所長
 ◇5月30日に全線運転再開へ
 東北運輸局は9日、JR仙石線陸前大塚~陸前小野間(宮城県東松島市)で進められていた震災復旧工事の完成検査を終了、永松健次東北運輸局長から冨田哲郎JR東日本社長宛に合格書を交付した。永松局長は「仙石線の全線復旧は東松島市や石巻市の人々にとって心の支えとなる。再開通まで引き続き事故の無いよう準備を進めてほしい」と激励した。
 合格書はJR東日本の竹内研一東北工事事務所長が受け取り「全線再開通に向けて大きな一歩を踏み出せた。東松島市内では復興街づくりと連動した路線の移設区間があり、当方の工事関係者、市や都市再生機構側の高台移転関係者など多くの協力を得られたことで、今日に至った」と述べた。
 東日本大震災時に津波被害を受けた仙石線は、陸前大塚駅~陸前小野駅間(約6・4キロ)について、両駅間の東名駅、野蒜両駅を含めルートを内陸に移設して復旧工事を進めてきた。
 移設区間はこのうち延長3・5キロで、工区を二つに分け、東名工区を鹿島、野蒜工区を鉄建がそれぞれ施工し、昨年12月に工事が完了。被災から約3年9カ月ぶりにレール締結を祝う式典が東名駅で行われた。
 今後は利府町から松島町間で進む「仙石東北ライン」の完成、訓練運転を経て5月30日の全線運転再開に向け準備を進めていく。

回転窓/断ることの難しさ

 小学校で担任の先生に「先輩や友達からたばこを勧められたらどうやって断りますか?」と質問されたクラスの一人が答えた。「体に悪いので吸わない」。小学6年生に道徳を教える授業でのやり取りである▼たばこを吸い始めた理由の上位にあるのが「勧められたから」。その誘いを子どもが断るのは、大人が想像している以上に大変であろう。対処方法を考える授業の意義は大きい▼小中学校で道徳が正式教科になるという。文部科学省は4日、そのための学習指導要領の改定案を公表した。道徳を特別な教科と規定し、学習内容にいじめ防止や情報モラル、科学技術と生命倫理などの事項を追加。体験型や話し合いといった主体的な学習へ転換することも盛り込まれた▼教育現場からは課題を指摘する声も出ているようだが、道徳の教科化はいじめ問題も背景にある。新指導要領が道徳教育の質の向上につながることを期待したい▼大人も日常生活でどう断るかで迷う場面にはいくらでも遭遇する。毅然と断るべき時があると、「吸わない」ときっぱり答えた小学生にあらためて教えられたようで気恥ずかしい。

東保証/原価管理を漫画で解説/ハンドブック作成、来店者に無料提供

 東日本建設業保証は、建設業の原価管理を漫画で解説する小冊子「若手技術者育成のための原価管理ハンドブック」を作成した。原価管理の意義、ポイントなどを分かりやすく紹介。経営者が日々の現場管理を重視する理由なども解説しており、現場の利益創出と企業の発展を原価管理が左右していることを強調する内容になっている。  経営サービス業務の一環として2万冊を用意した。同社の営業部や支店の窓口で来店者に無料で提供する。  東保証は、年1回ほど経営に役立つ資料や冊子を作成し、顧客に提供している。「担い手3法」の成立に加え、若手技術者の育成が建設業界の重要課題になっていることから、利益の源泉となる原価管理の仕組みや重要性を若手にさらに知ってもらおうと冊子を作ることにした。  これまでの冊子には経営事項審査などを取り上げてきているが、漫画を採用したのは初めて。新人の女性技術者が赴任した現場で原価管理の重要性や仕組みを理解していく物語仕立てで、章ごとに▽実行予算の作成▽損益の把握▽現場担当者の意識改革―といった解説を盛り込んだ。

2015年2月10日火曜日

関東整備局/八ツ場ダム建設(群馬県長野原町)に本格着手/本体起工式開く

八ツ場ダムの完成イメージ

 八ツ場ダムの本体起工式が7日に群馬県長野原町の長野原総合運動場で開かれ、ダム建設が本格的にスタートした。越智繁雄関東地方整備局長は「ダムができて良かったと思ってもらえるよう、関係都県らと連携し、事業の早期完成に向けて着実に工事を進める」と決意を表明。施工者(清水建設・鉄建・IHIインフラシステムJV)を代表してあいさつした宮本洋一清水建設社長は「身の引き締まる思い。施工各社の総力を結集して最適なダムを完成させる」と応えた。
 八ツ場ダムは、利根川水系吾妻川の中流部に建設する堤高116メートル、堤頂長291メートル、堤体積91万1000立方メートルの重力式コンクリートダム。工事費(落札金額)は342億5000万円。発注者の関東整備局が当初想定していた工期は18年10月1日だが、清水建設JVの技術提案により最大514日間の工期短縮が図られることになる。事業の完成予定は19年度。
 ダムサイトで吾妻川の水を迂回(うかい)させる仮締め切りの工事は1月に完成し、同21日から発破による堤体の基礎掘削工事が進められている。起工式で行われた事業説明で、関東整備局の矢崎剛吉八ツ場ダム工事事務所長は「16年6月には堤体のコンクリート打設を開始できる見通しだ」と今後の工程を明らかにした。
 宮本社長は「綿密な工程管理の下、工事を進めていく」と述べた。大澤正明群馬県知事は「周辺住民の生活再建事業の早期完成も不可欠。そのためにも事業者は無事故で本体工事を終えてもらいたい」と呼び掛けた。
 完成後のダム湖の総貯水容量は1億0750万立方メートル(有効貯水容量9000万立方メートル)。上田清司埼玉県知事は「1947年に発生したカスリーン台風のような大規模な水害が起きた際、首都圏の守りの要になるのが八ツ場ダムだ」と治水面での有用性を強調。萩原睦男長野原町長は「ダム湖を活用した観光施策も考えていきたい」と期待を寄せた。
 他の関係者からは、ダム周辺を通る国道のバイパスとして計画されている上信自動車道(群馬県渋川市~長野県東御市、総延長約80キロ)の全線開通を求める声も上がった。
 起工式では関係者らのあいさつの後、鍬入れとくす玉開披を行い、事業化に向けた調査(52年)から60年以上の歳月を経て動きだした歴史的なダム本体工の無事着工を祝った。

ライト工業/東京都千代田区に新社屋が完成/全社ネットワーク構築

 ライト工業が東京都千代田区に建設していた新たな本社ビルが完成した。新社屋は9階建てで、1~4階に本社機能を配置。社内には情報通信技術(ICT)を活用した最新の全社ネットワーク機能を構築し、支店、現場間の連携を一段と強化した。新たな収益源を確保するため、5~9階はサブリースの賃貸マンションとした。同社が施工し、設計・監理は梓設計が担当した。  6日に新社屋で行われた竣工祝賀会には、来賓として取引先など33社から44人が参加し、無事完成を祝った。  冒頭、鈴木和夫社長があいさつし、新社屋には「本社機能」「資産価値の向上」「地域貢献」の三つの役割があると説明し、「今日を新たな出発点とし、次の節目である創業100周年に向かってまい進していく」と述べた。  新たな本社ビルの所在地は千代田区九段北4の2の35。JR・地下鉄市ケ谷駅から徒歩約3分の場所にあり、老朽化した旧社屋を現在地で建て替えた。建物はRC造地下1階地上9階建て延べ6341平方メートルの規模。高い耐震性能に加え、非常用発電機、水・食料を備蓄し、災害発生時にも本社機能を継続できるようにした。共助施設として地域にも開放する。上層の住宅は市ケ谷のお堀沿いの桜並木にちなみ、「桜ヒルズ九段北」と命名した。工期は13年8月1日~15年1月30日。

回転窓/梅の咲かない春

 立春を過ぎ、梅の花の季節を目前にして気になるニュースがきのうの本紙に載っていた▼東京の西の郊外、青梅市はその名の通り梅の名所として知られる。ここの梅林で果実を駄目にするウイルスの感染が広がり、公園にあった1200本もの梅の木がすべて伐採されたという。感染拡大を食い止めるには木を根こそぎにするしかないそうで、はげ山と化した公園の写真が痛々しかった▼伐採作業に当たったのが地元の造園会社と聞き、鳥インフルエンザなどが発生した時のことを思い出した。殺処分された家畜の埋設などに協力するのは地元の建設会社。つらい作業だろうが、誰かがやらなければならない。梅を伐採した造園会社は、40年前の公園建設時に梅の植栽をしたというから、さぞ複雑な気持ちだったろうと推察する▼梅に感染したウイルスは海外から人為的に持ち込まれた可能性が高いという。病気にも国境がなくなるグローバル時代の怖さを感じさせるニュースでもある▼梅の咲かない早春の風景は誠に味気ないものだろう。一般にはあまり話題になっていないようだが、ローカルニュースと侮れない。

2015年2月9日月曜日

駆け出しのころ/三井住友建設取締役専務執行役員土木本部長・新井英雄氏

1993年に京都で開かれた国際コンクリート連合のシンポジウムで。PC免震橋について発表した。
◇若い人はとがってるくらいがいい  1977年に入社し、橋梁設計課に配属されました。名称には「設計」とありますが、技術開発や現場指導、技術営業なども担当する部署でした。上司や先輩はすごい面々で、技術者として自信に満ちた方がそろっていました。
 いくつかの橋の設計も担当しましたが、80年に道路橋示方書が改定されるのを受け、設計に使う一連のソフトを作り直す作業を任されました。
 プログラムの仕様作りだけでなく、作成したソフトを使った解析結果が正しいかどうか、自分で計算した結果と比べて確認することまで行っていましたので、この業務を通じて設計の流れをよく学ぶことができたと思っています。
 会社の留学制度で社内試験を経てドイツに1年間留学しました。技術者としてPC斜張橋を造りたいという夢があったからです。海外にある斜張橋などを実際に見て回れたのはとても貴重な経験でした。
 留学を終えて本社の設計課に戻ってからのことです。斜張橋の最適設計で分かってきたクリープの問題をまとめた論文が、土木学会論文集に掲載されました。自分たちでもそうした場に出て行けるんだと大きな自信になりました。
 初めての現場勤務は入社9年目でした。手掛けてみたかったPC斜張橋の工事です。初めてやることはすべてが怖く、数値の根拠がないとなかなか現場を進められないものです。当時の所長から、そのためには設計を知っている人間が必要だったと言ってもらい、とてもうれしかったのを覚えています。今もこの方は私が尊敬しているお一人です。新工法や情報化施工に挑戦し、生コンすべてを自分の目でチェックしました。現場での経験は大いに役立ち、現場を思う気持ちを育み、それまでとは違って周りから自分の声を聞いてもらえるようになったとも感じました。
 もの造りだけでなく、地元の方たちと接することができるのも、土木屋としての楽しみです。最初の現場には家族を連れて赴任しましたから、よけいに近所の方たちに仲良くしてもらいました。現場近くの造り酒屋さんで飲んだ絞りたての日本酒がうまくて、今年の正月もその味を堪能しました。
 若い人たちにはいろんなことを経験してほしいと思っています。しかし、土木は分野が広いので、ある分野では技術のスペシャリストにならなくてはいけません。技術開発も楽しい。私はPC免震橋など、常に先取りしてやらせてもらってきたと自負しています。どんな仕事でも、後には必ず自分の栄養になっているものです。自分がそうだったからかもしれませんが、若手はとがっているくらいがいいのです。
 (あらい・ひでお)1977年東大工学部土木工学科卒、住友建設(現三井住友建設)入社。設計課長、現場所長を経て土木本部技術部長、三井住友建設執行役員東京土木支店長、常務執行役員、土木本部長、13年4月から現職。工学博士。栃木県足利市出身、60歳。

結/ピーエス三菱技術本部技術部土木技術グループ/キア・チェン・メーンさん

 ◇母国に長大橋を架けたい
 カンボジアで大学を卒業後、現地の建設会社に入社。2年間働いた後、日本の優れた技術を学ぶために来日した。早稲田大学大学院を経て、14年4月にピーエス三菱に入社。新入社員研修を終え、同7月に土木技術グループに配属された。
 今はPC橋の設計を勉強している段階で、今後は解析の経験も積む。広く社会に認められるような技術開発にもチャレンジしたいと考えている。職場のコミュニケーションツールは日本語。「読み書きともできるけれど、難しい。本当は英語で話してもらった方が理解しやすい」と笑う。
 平日は寮と会社の往復で終わってしまいがちだが、休みの日は近所に住んでいる友人とバドミントンやサッカーを楽しむ。食べ物に好き嫌いはなく、マグロのすしが大好物。「時々ホームシックになることもある」そうで、年に1度は里帰りしているという。
 日本に初めて来た時の印象で強く記憶に残っているのが電車。「事故もなく、決まった時間に行き先にたどり着けることに驚いた」。建設現場での高い安全意識にも感心させられた。「カンボジアでは自分の身は自分で守るという方針。日本は安全第一で、管理体制もしっかりしている」。
 カンボジアでは今後の発展を支えるインフラ整備が進み、建設業の重要性が一段と増している。「将来は日本で培った技術を生かして母国の発展に貢献したい」と目標を語る。今はまだない長大橋を架けるのが夢だ。(カンボジア出身)

サークル/安藤ハザマ硬式テニス部/「コートの主役を目指して練習に汗流す」

 13年4月の合併に伴い、安藤建設とハザマそれぞれにあったテニス部も一つになり、活動を開始した。
 部員は現在22人。勤務地は東北支店から大阪支店までと広範にわたり、技術系や事務系など職種もさまざま。「全員で勝利を目指す!」をモットーに、建設業硬式庭球連盟が主催する春の個人戦と秋の団体戦に毎年参加している。
 最近の成績は、春の個人戦が最高ベスト8、秋の団体戦が4部リーグ優勝。「仲間の試合をみんなで応援し、団結力を高めて勝利を目指している」という。
 錦織圭選手の活躍もあって、テニスに対する注目度は上昇中。ただ、連盟全体の傾向だが、女性部員が少なく、大会の参加者が増えないのが悩みのタネという。部員の大森隼輝さん(関東土木支店土木部勤務)は「活動報告を社内報に掲載して女性部員の勧誘につなげるなど、錦織ブームに負けず活動を活発化したいですね」と話す。
 団体戦での3部リーグ優勝が当面の目標。個人戦も、企画を練っている長期休暇を利用した合宿などでレベルアップを図り、前年を上回る成績を目指している。
 「エースを狙え」か、はたまた「テニスの王子様」か―。コートの主役になるために部員一人一人が仕事の合間を縫って練習に汗を流している。

中堅世代-それぞれの建設業・81/コスト至上主義改め、職人に夢を

職人の処遇改善は道半ば…
 下請の単価は上がっているのに、末端の作業員にまではその恩恵が行き届いていない-。
 重仮設の専門工事会社に勤める橋本慎二さん(仮名)は「ここ数年、ゼネコンも単価を上げ、1次下請の自分たちも2次業者には利益が十分出る金額を支払っている」と話す。それでも現場の作業員から賃金が上がったとの声は聞こえてこない。「2次以下の下請は作業員の処遇改善を後回しにし、利益を設備投資に回したり、内部留保したりしているのではないか」とみる。
 職人の中には、腕に自信があれば雇われの身より自分の会社をつくって一旗揚げようと考える人もいる。最近は仕事が増えて単価も上がり、事業環境は好転しているが、独立に意欲的な職人は周囲にほとんどいないという。
 高校を出て20年余り。仕事をしながらさまざまな資格を取得してきた。土木、建築を問わず現場経験も豊富。3年ほど前に今の会社に入ったのも、そうした現場での縁がきっかけだった。
 「自分でやった方がもうかるよ」「一緒に会社をやろう」などと声を掛けられることもあるが、「仕事ができることと会社経営はまったくの別物」と思う。職人を自ら抱えて起業した人をこれまで多く見てきたが、つぶれずに残っているのはほんのわずか。
 「情に流される人は経営者に向かない。仕事がなくて苦しい時は、給料を上げずに会社の蓄えを増やすことも必要だ。現場で長年働いてきた自分では職人の立場に寄りすぎてしまい、非情に徹するのは難しい」
 建設業界では今、技能労働者の社会保険加入促進策が官民挙げて進められている。橋本さんの会社でも協力業者に加入徹底を呼び掛けている。数年の猶予期間が過ぎれば、未加入の下請業者には仕事が回ってこなくなる可能性もあるが、職人の危機感は乏しい。
 「日給月給の職人の世界では社会保険の大事さが理解されにくい。安定した生活を送るために社会保険の重要性や必要性をいくら説明しても、納得する職人は一握りだ」
 元請の意識にも問題があると思う。「最近は人手不足の影響で単価は上がっているが、最後は結局、提示金額の低い下請を選ぶところは変わっていない」。
 現場の施工条件などが途中でいくら変わっても、最初に契約した金額で何とかやってくれと元請に頼まれる。請負の世界では仕方がないと思う面もある。ただ、「コスト至上主義を改め、社員の福利厚生に手厚い企業や事故やクレームが少ない企業など、会社の資質とグレードをより重視した調達方針に転換しなければ、業界全体の処遇環境は良くならない」と考える。
 人材不足が深刻化する建設業界では、入職者を増やすために初任給を引き上げようという動きもあるが、今いる職人の賃金を上げることには消極的な会社が少なくない。
 橋本さんは、職人の世界では一般のサラリーマンと比べて経験年数による給料の格差が小さすぎると思っている。「新米の職人と職長級でも、1日の単価は倍まで違わない。一流企業で課長、部長クラスになれば、新米と3~4倍の差はつく。これでは職人は夢を持てない」。
 高齢のベテランと若手のつなぎ役となる中間層の職人が少ないことも心配だ。中堅世代の一人として、次代を担う職人を育て、夢を持てる産業にすることに少しでも力を尽くそうと考えている。

2015年2月6日金曜日

清水建設/インド工科大学でオープン・アカデミー開く

 清水建設は、インド工科大学デリー校からの要請を受け、ニューデリーにある同校に技術者を派遣し、公開講座「シミズ・オープン・アカデミー」(SOA)を開いた。建設学科や電子工学科、機械工学科の学生74人が受講した。インドでSOAを開催したのは初めて。
 テーマは「建築物の地震対策技術~免震構造と制震構造」と「建物・都市におけるエネルギー・マネジメント技術」の二つ。インド北西部で地震危険度が高まっていることや、インド全土で電力需給が逼迫(ひっぱく)し、スマートシティーの開発が進んでいることを踏まえて選定した。受講者にとって興味深いテーマ設定だったため、多くの質問が寄せられたという。
 SOAは「建設」「ものづくり」をテーマにした公開講座として08年9月にスタート。同社社員が小学生から社会人まで、それぞれの知識レベルに応じた多彩なプログラムを用意し、先端技術に触れながら建設の面白さ、奥深さを学んでもらう。大学や自治体などからの要請に基づき出前講座も開催。海外ではインドのほかシンガポール、フィリピン、タイ、ベトナムでの開催実績がある。

建築学会関東支部/日本基督教団芝教会(東京都港区)の保存を要望

 日本建築学会関東支部(長谷見雄二支部長)が、建物の解体が検討されている「日本基督教団芝教会」(東京都港区)の保存を求めている。
 教会は1936年に建設され、設計は大林組に在籍した間野貞吉(1903~79年)が担当した。建築史に詳しい藤田康仁氏は「関東大震災後に建設された鉄筋コンクリート造の教会建築の実際を現在に伝えるものとして、重要な建物」としている。
 間野は、東京帝国大学工学部建築学科を卒業後、設計会社などを経て大林組に入社し、戦後日本のゴルフ施設建設に貢献した建築家として知られている。
 同教会は、日本建築学会が明治~昭和時代の重要建築物をリストアップした『日本近代建築総覧』(80年)にも掲載され、昭和戦前期のキリスト教建築として高く評価された建物。80年近く、虎ノ門1丁目地区の都市景観を構成してきた貴重な存在でもある。
 建物内部では、幾何学模様のステンドグラスや照明器具、玄関扉をはじめとした木製の建具、説教壇、会衆用座席、椅子といった細部の装飾も意匠的・技術的価値が高い。壁面に張られたボード状の建材や粒状にカットされた窓ガラスなど現在では珍しい建築材料も使われ、その希少性は高いという。
 教会は都道環状第2号線周辺の再開発に伴い16年度の解体が検討されており、関東支部は日本基督教団、同芝教会、虎ノ門一丁目地区市街地再開発準備組合、港区教育委員会に要望書を提出。教会の保存活用を求めている。

宮城建協/震災記録誌第3弾を発刊/復興の歩みと業界の活動紹介

 宮城県建設業協会(佐藤博俊会長)は、東日本大震災の記録誌第3弾を発刊した。「地域のために地域とともに」をテーマに、街づくりが本格化し、災害公営住宅の建設がピークを迎えるなど復興への歩みが着々と進む被災地の現状をリポートしながら、地域建設業の活動を紹介している。  記録誌は2000部作成し、宮城県内の図書館や学校、関係自治体・機関などに配布。一般向けに協会のホームページ(http://www.miyakenkyo.or.jp/)にも近日中に掲載する予定だ。  宮城建協は12年12月に第1弾「風化させてはいけない記憶がある」、14年3月に第2弾「俺たちが地域を守り復興を果たす」を発刊。毎年、記録誌の発刊を重ねながら、震災の経験や教訓を伝えるとともに、震災直後からいち早く現場に駆け付けて対応に当たってきた地域建設業の果たした役割の発信に努めてきた。  第3弾では、「スマイルとうほくプロジェクト」の一環で、全国から宮城県気仙沼市を訪れた8人の中学生が被災地を取材する様子を紹介。ほかに、沿岸部の現状や悩みを五つの支部の代表者が集まって議論した内容なども収録した。  宮城建協は、国連防災会議の関連行事となるパブリックフォーラム「未来に向けて-建設業が果たす役割・街づくりと中学生記者が考える防災-」を3月16日に仙台市内で開き、1~3弾の総集編を配布する。

2015年2月5日木曜日

宮城県気仙沼市/災害公営住宅の初弾が完成、入居式開く



 宮城県気仙沼市が整備を進めていた災害公営住宅「気仙沼市南郷住宅」の先行工区(2・3号棟)の工事が完了し、1月31日に現地で入居式が開かれた。都市再生機構が敷地の整備や住宅建設などを行い、市に譲渡する「買い取り方式」を採用した。入居予定の74世帯ら関係者が参加し、テープカットなどのセレモニーが実施された。設計は昭和設計が、施工は大成建設が担当。後工区も3月の完了を予定している。
 式典には、入居者とともに同市の菅原茂市長や都市機構の石渡廣一理事、昭和設計の高津章雄取締役執行役員、大成建設の近藤昭二執行役員東北支店長らのほか、来賓として長島忠美復興副大臣ら多数が参加した。
 建設地は南郷25の1。南気仙沼小学校の跡地で、敷地面積は約1・4ヘクタール。1号棟(10階建て)と2号棟(6階建て)、3号棟(同)や、コミュニティーセンター(2階建て)で構成。RC造で、全体の延べ床面積は1万4087平方メートル。全体の住戸数は165戸で、182台分の駐車場なども設けている。
 整備に当たっては、同小学校の記憶の継承として、校歌の石碑や門柱などを再配置するほか、集会所や大きな庭園部を設けることでコミュニティー育成にもつなげる。
 同市は、東日本大震災の被害を踏まえ、約2200戸の災害公営住宅の整備を計画している。同市で災害公営住宅が完成するのはこれが初めて。

トーエネック/久米雄二社長が大須観音で豆まき/大黒天に扮しパレード

 久米雄二トーエネック社長は3日、大須観音(名古屋市中区)の「節分会」に参加、七福神の大黒天に扮(ふん)し、宝船パレードと豆まきを行った。
 七福神が乗った宝船パレードは、栄小公園を出発、南大津通、大須商店街の赤門通り、万松寺通り、仁王門通りで行われた。『久米大黒天』は、小槌を振りながら、にこやかに沿道の声援に応えていた。大須観音では、本堂特設舞台から大きな声で豆をまき、参拝客に福をもたらした。

韓国ソウル市長がさいたま新都心視察/地下鉄操車場跡地開発の参考に

 韓国・ソウル市の朴元淳(パク・ウォンスン)市長ら幹部が4日、埼玉県を訪問し、さいたま新都心(さいたま市中央区、47・4ヘクタール)を視察した。同市は、地下鉄のソウルメトロ4号線・倉洞(チャンドン)車両基地(約20ヘクタール)を移設し、その跡地の開発を計画している。旧国鉄大宮操車場跡地を再開発したさいたま新都心の事例を街づくりの参考にしたいと埼玉県を訪れた。  朴市長は、視察前に上田清司知事と知事公館で会談。上田知事は「さいたま新都心の中心であるさいたまスーパーアリーナは年間300万人の来場者でにぎわっている。ぜひ参考にしてほしい」とあいさつした。朴市長は「ソウル市では都市再生が課題になっており、市の北部にさいたまスーパーアリーナのような施設や公園をつくる計画がある。先進事例を学びたい」と述べた。  倉洞車両基地は、ソウル市の中心部から北東約13キロの「蘆原(ノウォン)区」にあり、周囲は河川、市道、団地、自動車運転免許試験場などに囲まれている。13年末に4号線の始発駅「堂峠(タンゴケ)」から「榛接(チンジョッ)宅地開発地区」までの約12キロの延伸が決定。倉洞車両基地の榛接地区への移転が計画され、車両基地跡地利用の検討が進められている。
あいさつする朴市長(中央)

2015年2月4日水曜日

回転窓/一冊の本をめぐる逡巡

 仕事帰りによく立ち寄る書店でこのところ、ある本を買おうか買うまいか逡巡(しゅんじゅん)している。大量に平積みされたのを一冊手に取って中をぱらぱら。レジに行き掛けてはまた戻り…▼その本とは、昨年来話題のベストセラー、トマ・ピケティ著『21世紀の資本』(みすず書房刊)。既に13万部が売れ、先週にはフランスから著者が来日。講演などをしてニュースになった▼ベストセラーに安易に手を出す軽薄も嫌だが、書店での逡巡の原因はやはりこの本の大きさと値段にある。ハードカバーで728ページ。重さは898グラムと1キロ近い。まるで辞書▼かばんに入れて持ち運ぶにはがさばるし、通勤電車より古色ばんだ書斎が似合う装丁だ。税込み5940円。途中で挫折したら、と思うとおいそれと出せる金額ではない▼本に書いてある詳しいことは、あまたの解説本や書評に譲るが、要は今の資本主義社会では富の集中が起きて格差が拡大するということ。ピケティ氏は講演で経済の専門家と一般の人の間に距離があり過ぎることを問題視したと伝えられる。この本がもう少し手軽な作りなら距離ももっと縮まると思うが。

環境省/中間貯蔵施設予定地で建設工事始まる/福島県双葉町・大熊町で

 環境省は3日、福島第1原発事故に伴う除染で出た福島県内の汚染土壌などを最長30年間保管するために整備する中間貯蔵施設の予定地で初の建設工事を始めた。施工は前田建設・西松建設・田中建設JVと清水建設・熊谷組JVが担当する。住宅地の仮置き場などに残された膨大な量の汚染土を搬入する施設で、政府は復興加速に不可欠な施設と位置付けている。雪が残り、放射線量も高い現場で、防護服姿の作業員ら総勢100人が作業に取り掛かった。  今回着工したのは試験輸送で搬入される汚染土などを受け入れるストックヤードの設置工事。福島第1原発の北側に位置する双葉工業団地(双葉町)と南側の大熊東工業団地(大熊町)の2カ所に設ける。施工は双葉を前田建設JV、大熊を清水建設JVが担当する。いずれも一般の立ち入りが制限される帰還困難区域にある。  原発からの距離は双葉の現場が200メートル程度、大熊が1・0~1・5キロ程度で、作業開始前の空間放射線量は双葉が毎時5マイクロシーベルト前後、大熊は同20マイクロシーベルト前後に上った。元請の職員や協力会社の作業員の多くは除染事業の経験者だが、清水建設JVの関係者は「除染の現場よりも線量がかなり高く、一層気を付けなければならない」と気を引き締める。  ストックヤードの敷地面積はそれぞれ3万平方メートルで、中間貯蔵施設全体(16平方キロメートル)に対して270分の1の規模。それぞれ1万立方メートルの汚染土などを保管できる。まず周辺の除染を実施し、道路の補修、敷地造成などを行う。3日は午前8時からバックホウによる除染と敷地造成などの工事を始めた。  工事は4月30日までに完了させる。完成後は汚染土を詰めたフレコンバッグを3~5段積み上げ、本格貯蔵まで一時保管する。搬入開始から1年間は試験輸送期間で、環境省は震災から4年を迎える3月11日までの搬入開始を目指す。  中間貯蔵施設の整備は民主党政権下の11年に決まったが、「中間貯蔵がそのまま最終処分場になるのではないか」などと懸念する地元の理解を得るのに時間を要した経緯がある。今後も地権者との交渉に時間がかかる見込みで、本格着工の見通しは立っていない。

2015年2月3日火曜日

長崎県/新県庁舎が起工/施工は鹿島JVら、17年9月の完成めざす

新庁舎の完成イメージ
 既存施設の老朽化や狭あい化などに伴い計画されている新たな長崎県庁舎の建設工事起工式が1月31日、長崎市尾上町の建設地で行われた。行政棟、議会棟、警察本部庁舎、駐車場棟を集約・移転する。建物規模は総延べ約8万6600平方メートル、概算事業費は約423億円。式では関係者が地鎮の儀などを行い、無事故・無災害での17年9月の完成を祈念した。
 式では地鎮の儀で中村法道知事が苅初の儀、日建設計の山梨知彦執行役員が穿初の儀を行った後、鹿島の松崎公一常務執行役員九州支店長が大須賀太一工事事務所長の介添えで力強く起工の杭を打ち込んだ。その後、関係者で祭壇に玉串をささげた。
 発注者あいさつで中村知事は「新たな県庁舎は並行して整備を行う防災緑地と連携して県民の安全・安心な生活を支える防災拠点施設としての機能を発揮するとともに、円滑で効率的な行政運営も実現する」と期待感を表明した。
 新庁舎の規模は行政棟がRC造(免震構造)8階建て延べ4万6565平方メートル、議会棟が同(同)5階建て延べ6699平方メートル、警察本部庁舎がRC一部S造(同)8階建て延べ2万1734平方メートル、駐車場棟がRC造3階建て延べ1万1639平方メートル。庁舎は低層で緑が一体的につながる「丘のような庁舎」とし、水辺の森公園などの周辺地域や港の風景との調和を図る。
 建築工事は行政棟を鹿島・上滝・堀内組JV、議会棟を堀内組・小山建設・松崎建設工業JV、警察本部庁舎を鹿島・上滝・森美工務店JVがそれぞれ担当(駐車場棟は未定)。設計担当は行政棟と議会棟が日建設計・松林建築設計事務所・池田設計JV、警察本部庁舎が山下設計・建友社設計・有馬建築設計事務所JV、駐車場棟が飛鳥建築事務所・M-PLAN設計室JV。

仙台市/地下鉄東西線レール締結式開く/全線接続、12月6日開業へ

 12月6日に開業する仙台市地下鉄東西線のレール締結式が2日、市中心部に近い大町西公園駅で行われ、市西部と沿岸を結ぶ延長13・9キロの線路が一本につながった。開業日が残り約10カ月に迫る中、土木本体工事に着手してから約8年でレール締結にこぎ着けた。  地下鉄東西線は市西部の起点となる八木山動物公園駅から東側の荒井駅に至る路線。13カ所の地下駅舎を設け、全国で7例目となるリニアモーター駆動車両を走らせる。  06年度に土木本体工事に着手し、東日本大震災で半年程度工事を止めたものの、工期短縮の工夫で開業年を予定通り15年度に間に合わせた。軌道工事には12年2月に着手。昨年7月にはすべてのトンネルが貫通した。今回、レールや枕木、リニアモーター式の列車を走らせるために不可欠なリアクションプレートの設置などを終えた。開業までに駅舎や信号などの設備工事を進める。  式典には、奥山恵美子仙台市長や鉄道建設・運輸施設整備支援機構東京支社の太野垣泰博支社長、施工関係者ら多数が参加。関係者14人でレールをつなぐ最後のボルトを締める儀式を行い、全線接続を祝った。  席上、奥山市長は「東日本大震災では構造体に大きな被害はなかったが、半年近く工事が止まった。そのせいで開業時期の見通しが暗くなったが、市の悲願とも言うべき工事のため施工関係者に渾身の力をふるってもらった。開業後は市の中心部を通る骨格交通の基軸として、まちの発展に生かす」と喜びを語った。


2015年2月2日月曜日

駆け出しのころ/戸田建設取締役常務執行役員建築工事統轄部長・早川誠氏

入社1年目に配属された現場の事務所で、杭工事を担当していた

 ◇難局を乗り越え自分の肥やしに
 父が大工の棟梁だったので、私も小学生のころから休みになると手伝いに行き、大工のまね事のようなことをしていました。1964年の東京五輪は中学1年生の時に開催されたのですが、その前から競技場などの建設ラッシュでしたので、そうした大きなものを造る仕事に関心を持つようになりました。
 戸田建設に入社し、本社で約1週間の研修を受けて横浜支店に配属されました。その日か次の日にはもう現場に出ていたように記憶しています。
 最初の現場は、川崎市の扇島で製鉄所内の高炉原料設備を造る工事でした。私の担当は杭工事です。現場では杭打ち機のハンマーで杭頭を打撃すると、そのたびに油煙が遠くまで排出されました。ハンマーが上下しているすぐ下で最終沈下量を測定していた私も、杭工とともに油まみれの日々でした。
 当時、メーデーに参加して疑問に思ったことがありました。プラカードに「日曜は休ませろ!」と書かれていたのです。会社は土曜日が半休、日曜日が休みでしたので、なぜ当たり前のことを求めているのかと思ったものです。ところが、次に配属された会館建築工事の現場で、プラカードの意味が身に染みて分かりました。そこは相当の突貫工事で、竣工までの3カ月間、1日も休みがなかったんです。心の底から「日曜は休みたい」と望みました。
 この現場では得たことも多くありました。実際のRC躯体と墨との誤差をどう調整するかを学んだのもその一つです。躯体と図面から出した墨には誤差が生じ、墨通りにサッシなどを取り付けようとしても納まらないことがあります。その場合にどうするか、私たちが知っているかどうかで工事の進み具合は大きく変わってきます。こうした調整能力は現場で経験を重ねないと身に付かないものです。
 仕事に関しては決められたことを愚直にやる。いつもそう心掛けてきました。現場の技術者は先輩からいろいろなことを教えてもらい、しっかり本も読みながら知識を深めていかなければいけません。私が先輩から言われて今も実践しているのは、何でもメモを取ることです。家には多くの野帳とノートが残っています。
 これまでに何度か会社を辞めようかと思うほどのつらい局面もありました。そのたびに先輩や上司に相談して仕事を続けてこられました。失敗や厳しいことを乗り越えると必ず自分の肥やしになります。後輩たちも相談相手を持ち、早計な判断はしてほしくないと思っています。
 (はやかわ・まこと)1975年東工大工学部建築学科卒、戸田建設入社。04年名古屋支店建築部長、07年東京支店建築工務部長、09年東京支店支店次長、12年執行役員建築工事統轄部建築工務部長、13年取締役常務執行役員建築工事統轄部長。東京都出身、63歳。

凛/不動テトラ東京本店第一工事部積算課・関野礼子さん/ロールモデルの一つに

小学生のころ住んでいた家が造り始めの新興住宅地にあった。住宅や公園、道路ができ、町並みが変わっていく様子を見て育ち、ものづくりの仕事に就きたいと思った。成長するにつれ思いは強くなり、「どうせなら、自分たちが暮らす街の基礎となる土木構造物を造りたい」と建設業を就職先に選んだ。
 茨城大学工学部都市システム工学科を卒業し、入社して最初に配属されたのは合併前のブロック事業本部。その後工事部に移り、約10年間、現場管理を担当した。うち半分は東名高速道路海老名ジャンクション建設工事の現場にいた。
 現在は、公共工事の入札で必要な設計価格を算出する業務を任されている。「一番の醍醐味(だいごみ)は受注に結びついた時。現場と同じで、1人の力ではなく、営業や購買担当の情報収集力と技術提案力、積算の精度がぴったり合って初めて落札できる」。
 積算精度をさらに高め、1件でも多く工事を受注して会社に貢献するのが目標だ。「設計変更で現場と関わる部分もあり、しっかりサポートして利益につなげたい」。
 産休・育休を経て職場復帰した。「現場に出たいという女性は覚悟を持っている。行き過ぎた配慮は要らないが、周りの人の理解や協力もなければ働いていけない」と思っている。「自分で働きやすい環境にしていく必要がある」とも。「私が建設業で働く女性のロールモデルの一つになれれば」と後輩にエールを送る。(せきの・れいこ)

サークル/パシフィックコンサルタンツマラソン部

 ◇「走り終えた後は銭湯→飲み会が黄金コース」
 長谷川伸一代表取締役会長もメンバーに名を連ねる、会社公認の部活動。「発足時期の記録はありませんが、ここ2~3年は活発に活動しています」という。メンバーは約40人。年齢や職場はさまざまだが、大きな大会に出場ともなると「長谷川会長も参加しますよ」と話すのは、代表を務める荒川靖子さん。
 東京や茨城、神奈川などで開催される駅伝大会に年間3~4回出場するほか、有志が集まって地方に遠征し、自然の中を駆けめぐるトレイルランに出場することも。
 昨年11月には、茨城県で開催されたフルマラソンと同じ距離を走る「リレーマラソン@ひたちなか」に5チーム、総勢約40人が出場し、長谷川会長も日ごろ鍛えた健脚を披露した。
 荒川さんによると、「目的はばらばらでOK。自分のスタイルに合ったランで無理なく楽しく」が部のモットー。フルマラソンに本格的に取り組むサブスリーランナーからダイエット目的のゆったりランナーまで、メンバー構成はさまざまだ。「走り終わった後は銭湯→飲み会がお決まりのコース。所属も年齢もばらばらですが、ビール片手に打ち解け合えるところが、マラソン部最大の魅力ですね」と荒川さん。ランニングを通じた社内交流の輪は、確実に大きくなってきている。

中堅世代-それぞれの建設業・80/人は難しい、だから現場は面白い

人が成長できる現場とは…
 いかに気持ちよく働き、最高の仕事をしてもらうか-。建築技術者としてゼネコンに入り、30年近く現場に立ち続ける前沢祐二さん(仮名)は、現場管理について「人対人の関係がすべてを左右する」と考える。
 社内でも特に厳しい現場を任され、長年の経験で身に付いた人心掌握術には自信がある。所長教育という確立されたカリキュラムがない中、これまでの現場で影響を受けた所長のやり方をまねたり、改善したりしながら、自分なりの管理スタイルや信念を築いてきた。
 大学卒業後、現場の最前線をひたすら走り続けて40代後半となった今、「どこかの大学などで心理学を勉強したい」と思うようになった。マネジメントに対する自分の考え方や理論について、専門の学校で深く考察することで、今までとはまた違うものが見えてくるのでは…。
 そうした向上心を持ち続けることが、常に新鮮な気持ちを保ち、仕事を面白いと感じる原動力になっている。
 信頼できる部下はいるが、同じ社員を自分の現場だけに固定化することには反対だ。「いろんな現場を経験しないと頭が偏ってしまい、所長としての自分も成長しない」。だが、会社の経営陣は安定を求め、同じ所長と部下を長く組ませようと考えがちだ。「こうした企業風土を変えないと、本当の意味で人材は育たない」と思う。
 逆に協力業者とは継続的に長く付き合い、互いの信頼関係を深めることが重要だと考えている。前沢さんの現場管理の基本スタイルは「自主性の尊重」。こちらが最低限言うべきことを伝えたら、後は個々の職人たちが自らの知恵を絞って考える。「迷ったときにヒントを与えるぐらいがちょうどいい」。
 人は命令されるのが基本的に嫌だから、まず自ら動いてもらう。やらなければ決め事が増えて締め付けが厳しくなり、結果として働きづらく、作業もやりにくくなる-。それが持論だ。
 だから「職長会」も不要だと思っている。「大現場はともかく、請負金額が20億円か30億円ほどで常駐社員が数人程度の規模の現場なら、意識の高い職長がいれば自然とまとまる。組織的、システマチックになりすぎて人を押さえ付けるような管理になったら、相手もいい気持ちで仕事はできない」。
 現場のことをきちんと総体的に理解できる人材が足りなくなりつつあると感じている。5年後には現場で中心的な役割を果たす20代後半の社員の現状を見ると、不安がよぎる。「最近の現場監督は事務的なマネジメント業務ばかり行い、『技術屋』として修羅場をくぐっていない。そんな職場環境にも問題がある」。
 最近、会社が受注する工事にはマンションが多い。仕様が画一的な現場ばかりでは技術を磨けず、経験知も広がらない。ダイナミックな現場が少なく、細分化された業務分担の中で技術者も小さくまとまってしまうのではないかと心配だ。「やはり少人数の現場でもまれながら全体の流れを把握し、自分が動かないと現場が回らない状況を経験することが大切だ」。
 若い社員は仕事ができないわけではなく、会話もできないわけではない。ただ、より良い対人関係を築く力には欠けるように見える。「次の時代の人たちに古株のわれわれが合わせる必要があるかもしれないが、今の若手は自分の頭で考えなさすぎる」とつい苦言も出る。
 人を理解するのは難しい、だから面白い。そろそろ組織のマネジメントに関わる年になる。限られた現場生活の中で人との出会いをこれからも大切にしたいと考えている。