2015年4月1日水曜日

回転窓/実社会にこぎ出す若者へ


 ユニークな語釈で知られる「新明解国語辞典」(三省堂)で「実社会」という語を引くと、〈美化・様式化されたものとは違って複雑で、虚偽と欺瞞(ぎまん)とが充満し、毎日が試練の連続であると言える、きびしい社会を指す〉とある。この辞書の編者は社会に出てそれほどひどい目に遭ったのかとつい同情する▼大半の企業はきょう4月1日が入社式。多くの若者たちが実社会へとこぎ出すことだろう。虚偽と欺瞞はともかく、実社会に試練が多いことは間違いない。まずは前途に実り多かれと声援を送りたい▼建設業界各社も需要拡大で積極的な人員採用に動いている。少子化で若者は減っていくから、これからは業種間での人材の奪い合いも激しくなろう。学生にとってはうれしい売り手市場といえる▼もっとも、就職活動中はお客さん扱いでも、入社してしまえばただの新米である。新入社員たちのために、新明解からもう一つ引いておこう。「下積み」。〈雑事に使われるだけで、本来持っている才能を発揮する機会に恵まれない底辺にいる人(状態)〉▼もちろん心配は無用。先輩の誰もが通ってきた道である。

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