2015年4月14日火曜日

【視線の先にあるのは】大手デベロッパーが海外事業積極展開

三井不動産が米ニューヨークで開発する「55ハドソンヤード」の完成予想
大手デベロッパー各社が、海外の開発事業を活発化させている。アジアの新興国などでは経済成長に伴い富裕層が拡大。都心部などで高まるマンションの需要を取り込もうと、現地企業との共同開発事業に乗りだすケースが目立つ。不動産需要が旺盛な欧米への大型投資に踏み切る企業も出てきた。

 三井不動産は今年1月、米ニューヨーク・マンハッタンで進む過去最大規模の民間再開発プロジェクト「ハドソンヤード」への参画を表明した。全体計画のうち、延べ11・8万平方メートル規模のオフィス棟「(仮称)55ハドソンヤード」を米国とカナダのデベロッパー2社と共同で開発する。総事業費は約1500億円。現地子会社が事業主体(出資比率9割)となり、15年中の本体着工、18年の竣工を目指す。このほか米国では、シアトルとサンフランシスコの2地区で賃貸住宅の開発事業に乗りだすことも2月に発表している。
 昨年12月には英ロンドンの金融街・シティの中心部で、現地企業と高層オフィスビルの建設に着手した。ロンドンでは12年に取得した「BBCテレビセンター」についても、将来の再開発に向けて開発コンセプトを検討している。マンション事業では、三井不動産レジデンシャルとの共同出資会社を通じ、マレーシアやタイの首都圏で交通利便性が高く主要な商業エリアの近接地を中心に超高層マンションの建設事業を進めている。
 海外投資に積極的な三井不は4月1日付で海外部門の組織体制を大幅に再編。海外事業を横断的に統括する推進体制を構築した。菰田正信社長は「14年はグローバル展開で新たな事業エリア、事業メニューを拡充できた。引き続きグローバル化を大きく加速させていきたい」と意気込む。
 
三菱地所レジデンスがタイ・バンコクで開発する
大型マンション「Life Asoke 」の完成イメージ
14~16年度の中期経営計画で2400億円規模(出資を含む)の海外事業への投資を計画している三菱地所。主力の欧米に加え、アジアでも事業を積極的に拡大し、「20年をめどに海外事業比率を20%に引き上げる」(杉山博孝社長)といった目標を掲げる。米国では子会社のロックフェラーグループ社がニューヨークで総延べ床面積16万平方メートルを超す複合施設群の第1期工事に昨年6月に着手。同時期にはフロリダで計画していた大規模な高級賃貸マンションにも着工した。
 アジアではグループの三菱地所レジデンスを中心に、大規模マンション開発を積極展開する。同社の小野真路社長は「アジアを重点エリアに位置付け、よりグローバルな企業になっていく必要がある」と強調する。14年度はタイ・バンコクで1件当たり1000戸超の開発案件への参画が相次いだ。3月には、同国で手掛ける開発物件では最大級のマンション「(仮称)Life Asoke」(1609戸)を建設すると発表した。昨年10月にはマレーシアの住宅開発事業に参入することも表明。初弾案件(約400戸)の建設工事に今年10月に着手する。

東急不動産はインドネシアで「BSDプロジェクト」を計画する
東急不動産はインドネシアで、8棟・総延べ床面積約39・9万平方メートル規模のマンションを建設する「(仮称)BSDプロジェクト」(約3000戸)と、2棟・延べ約7・6万平方メートル規模のマンションを建設する「(仮称)Simatupangプロジェクト」(381戸)を計画。いずれも年内の着工を予定している。1975年に同国に初進出した東急不は、12年に現地法人を設立。独自開発を推進するための事業体制を強化した。
 海外市場で攻勢をかけるデベロッパー各社の動きは、国内の事業環境が上向き、経営基盤が安定してきたことで今後さらに拍車が掛かる見通しだ。将来の国内需要の縮小を見越し、海外事業を戦略的に育成・強化する狙いもあるようだ。

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