2015年4月2日木曜日

【話題の技術】三菱電機「エレベーター行き先予報システム」



行き先階予報システムの導入で待ち時間のイライラを解消

 三菱電機は、エレベーターの運行を高度に制御し、待ち時間のストレスを軽減するシステムを開発した。利用者が乗車前に行き先階のボタンを押すと、到着時間や混雑具合などを瞬時に演算して最適な乗車かごをモニターに表示する。次世代の群管理とも呼ばれるこのシステムは、海外で急速に普及している一方、国内ではなじみが薄い。運行制御システムの開発を担当する山下桜子さん(開発部管理システム開発課専任)は「海外では当たり前のシステムを、国内でも普及させたい」と話す。

 ◇エレベーターの効率運行を支える群管理システム◇

 大規模なオフィスビルや商業施設のエレベーターホールで目にする長い行列。朝の出勤時や昼食時など、エレベーターの利用者が多くなる時間帯にはおなじみの光景だが、待つ人は非常に大きなストレスを感じる。最近のエレベーターは、混雑時に運行効率が低下しないよう、複数の乗車かごをアルゴリズムを使って制御する「群管理システム」が搭載されているが、それでも待ち時間の短縮には限界があった。
 ボタンを押すとライトが点灯し、最も早く到着する乗車かごを利用者に知らせてくれる。確かに便利な機能だが、行き先階の違う人がわれ先にと乗車かごに乗り込み、各駅停車で人が乗り降りする。混み合ったかごの中で「○○階を押して下さい」と大声で伝えた経験がある人も多いだろう。
 同社が昨年12月に市場投入したエレベーターの行き先予報システム「エレ・ナビ」は、各フロアに設置した操作盤で行き先階のボタンを押すと、乗車するかごがどれなのか、具体的に指示してくれる。ボタンが押されるたびに、その時点での待ち時間や行き先階に到達するまでの予測時間、満員確率などを瞬時に演算。最適な乗車かごを利用者一人一人に割り当ててモニターに表示する。
 従来の運行制御は、エレベーターホールに設置された上り・下りのボタンが押された場合、待ち時間を基準に演算し、乗車かごを割り当てていた。この方法だと早く到着した乗車かごに行き先階が異なる利用者が乗り込み、各駅停車になって移動時間が長くなるという欠点があった。
 
「導入効果はてきめん」と山下さん

 ◇「海外の当たり前」の技術、国内普及に期待◇

 「エレ・ナビは群管理をより高度化したシステムで、海外では大規模ビルを中心にかなり普及している」と山下さん。導入効果は同社の本社が入居する東京・丸の内のビルで実証済み。エレ・ナビの導入前と導入後を比較すると、朝の出勤時、エレベーターを待つ行列の長さは6分の1程度に短くなり、混雑が大幅に緩和されたという。
 山下さんによると、エレベーターの運行制御が高度化したのはマイコンが世の中に普及した1980年代から。アルゴリズムを使った制御は今では当たり前で、欧米や中国など日本以外では行き先予報システムの搭載が一般的になっているという。「海外の建築工事ではエレベーター専門のコンサルタントが存在し、デザインだけでなく機能についても高いレベルの提案を要求されるケースが多い」。同社の海外向けホームページでは、運行制御のアルゴリズムを説明するコンテンツも設けているという。運行システムの開発者として、エレ・ナビの導入効果に太鼓判を押す山下さん。「エレベーターの運行効率が上がれば、乗車かごのサイズを小さくするなど、副次的な効果も期待できる。日本国内でもぜひ普及してほしい」と話す。

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