2015年5月29日金曜日

【壁を打ち破れるか】建設コンサルの海外展開、目標設定と戦術・戦略の立案実行不可欠

 大手を中心に建設コンサルタント各社はここ数年、海外事業の拡大を経営課題の一つに位置付けてきた。これまで培ってきた技術力を生かし、アジア地域などに対し官民一体でインフラ輸出を進める動きも続く。高水準で推移してきた国内の受注環境について、「峠は越えた」と見るトップは多く、業績を下支えする分野として海外を重視する傾向は、今後ますます強くなるとみられる。日本のコンサル企業の海外事業拡大には何が必要なのか。

 ◇競争力強化へ抜本改革必要◇

 建設コンサルタンツ協会(建コン協、長谷川伸一会長)など建設コンサル関係5団体が毎年集計している受注実績によると、会員会社の海外受注は2005年の500社・128億円から、06年は484社・268億円、07年は438社・313億円と推移。11年は391社・469億円、12年・387社で357億円となった=グラフ参照。
 ただ、この数字には国際協力機構(JICA)などが国内で発注する調査、計画立案といった業務が多く含まれ、海外の政府機関や現地企業などから業務を直接受注するケースは依然として少ない。



 建コン協は昨年4月に公表した中期ビジョンで、「日系建設コンサルの国際市場における現状の競争力はきわめてぜい弱だ」と現状を分析。海外受注は「日本の援助案件がほとんどで、実質的に国内市場の延長といわざるを得ない」と厳しい見方を示している。

 ◇非ODA市場の開拓がカギ◇

 11年3月の東日本大震災の発生前後で、建設コンサルを取り巻く環境は一変した。震災復興関連の事業で国内市場は需要が急増。ここ数年は、受注した業務を消化するだけで手一杯という状況が続いている。各社の最前線では、抱えきれないほどの仕事に追われ、これまでくすぶってきた長時間労働など職場環境の問題や、人材確保・育成の課題が一気に表面化。結果として、海外事業の拡大を志向しながら、対応が後手に回るケースも少なくなかった。
 海外への進出と事業規模・領域の拡大は、欧米勢に比べると後発となった日本の建設コンサルにとっては極めて困難な課題といえる。国家戦略として海外事業に取り組む中国・韓国勢の存在もあり、個々の企業の努力だけでは状況を大きく変えるのは難しいとみられている。
 安倍政権は鉄道や上下水道、電力といった基礎インフラをターゲットに、官民連携によるインフラ輸出を推進している。首相や閣僚、各省の幹部らが民間企業の幹部と共に外国を訪問し、トップセールスを行う取り組みも増えてきた。ソリューションビジネスともいえる海外PPP事業を志向する上で、建設コンサルは単なる技術に詳しい専門家にとどまらず、ニーズに即した提案やプロジェクトの方向性を指し示すことなど、多種多様な役割を求められる。
 計画立案や設計、施工管理という技術を核とした建設分野の仕事はもちろん、ファイナンスや法律、専門知識を持った人材の招聘(しょうへい)などプロジェクトを成功に導くためのさまざまな業務も果たす必要がある。

 ◇新機軸探る動きも◇

 建コン協のビジョンでは、欧米のコンサル企業に在籍する技術者について「科学技術を総合的に応用したトータルエンジニアとして認識されている」と指摘。日本のコンサル企業ついて、需要拡大が見込めるアジア地域の新興国で仕事をしていくには、「企業形態や生産システム、コスト、人材確保・育成などすべてにおいて白紙に立ち戻り、抜本的な再構築が必要だ」と強調している。
 これまで土木が中心だった事業領域に建築を加えたり、鉄道開発などで攻勢に出たりする企業、経済成長が見込める新興国の中でもエリアを絞り、投資を含めて地域開発に乗りだす企業など、建設コンサル業界でも海外事業に新機軸を組み込もうとする動きが出始めている。
 しっかりとした目標設定と、それを達成するための経営戦略・戦術を立てて実行することが、競争の激しい海外市場で日本企業の存在感を高める最善策といえる。

【回転窓】後世に問題残すな


 後世に問題を残してはいけない。2020年東京五輪までには解決しなければ-。建設投資が上向き、工事が活況を呈する中でもこうした危機意識が業界内に漂う▼産業を持続させていくには、若い人材を確保し、定着してもらうことが何より重要だが、少子化と人口減少が進む中、他産業との間での人材の奪い合いは不可避だ▼この2年の間に、設計労務単価は3度引き上げられ、「担い手3法」の本格施行を中心に各種施策も矢継ぎ早に打ち出された。疲弊した建設業界に追い風が吹く状況にあっても、将来を見据えると不安はぬぐい切れない。日本建設業連合会(日建連)の長期ビジョンも、これから起こる業界全体の課題を見据えた方向性を示している▼先日、総会を開いた専門工事団体のトップは、社会保険加入促進などここ数年の取り組みをめぐり、「今解決しておかなければ、若者はもうこの産業に入ってこないだろう」と述べ、活動に積極的に参加するよう傘下会員にげきを飛ばした▼総会シーズンが続いている。足元を固めながら、将来に向けて何に取り組むかを確認することが何より重要だろう。

【技術力は日本の宝】土木学会東北が14年度総合技術賞決定

 土木学会東北支部は、14年度の総合技術賞などの受賞者を決定した。総合技術賞にはJR東日本東北工事事務所の「仙石線陸前大塚・陸前小野間かさ上げ復旧工事」と、東北電力の「新仙台火力発電所第3号系列新設工事」の2件が選ばれた。技術開発賞には3件が、研究奨励賞は8件がそれぞれ選定された。29日に開かれる支部総会に合わせて、表彰式が行われる。

JR仙石線陸前大塚~陸前小野間かさ上げ復旧工事
 仙石線陸前大塚・陸前小野間かさ上げ復旧工事は、東日本大震災で被災したJR仙石線の移設区間から、鳴瀬川橋梁につながる既設高架橋の縦断勾配変更などと、新高架橋の構築を行った。既設高架橋のかさ上げを実現するために、柱の曲げ耐力不足を補強する構造を開発するとともに、施工に伴う主桁の切断や、部材の一体化など多くの課題を解決したという。既存高架橋を再利用することで、工期の短縮や撤去費・新規投入材料の削減といった経済効果も得られた。柱の曲げ補強方法は汎用性があり、広く適用できるという。

新仙台火力第3合系列新設工事
 新仙台火力発電所第3号系列新設工事では、老朽化した火力発電所を高効率設備に置き換え、環境負荷と発電コストの低減を図った。施工に当たっては、LNG防液堤のPC鋼棒の配置最適化により、世界で初めて鉛直PCテンドンの全量省略を実現したという。周面支持力を増大させる杭打設工法の開発により、根入長を低減させるなど幅広い合理化策を講じた。既存設備の有効活用や、撤去コンクリートの全量構内使用などにより、廃棄物の抑制も図った。

【なるか、新幹線技術輸出】タイ高速鉄道計画で国交省が事業化可能性調査

FS実施の覚書を交換した太田国交相㊨とブラジン運輸相
(5月27日、東京・霞ヶ関の国交省で)
 ◇バンコク~チェンマイ間、総事業費1兆円超のビッグプロ◇

 国土交通省は、タイの首都バンコクと北部の都市チェンマイを結ぶ高速鉄道計画(延長約670キロ)で、日本の新幹線システムの導入を前提とした事業化調査(FS)を近く始める。太田昭宏国交相とタイのプラジン運輸相が27日付でFSの実施などを盛り込んだ覚書に調印した。同省によるとJR東日本、日立製作所、三菱重工業、三井物産の4社が事業参画に関心を寄せているという。
 計画では、バンコク~チェンマイ間に専用軌道を新設。現時点で総事業費は1兆円超に上る見通しだ。国交省によると、同区間はほぼ平地を通るため、日本の建設会社の施工技術を生かしやすい長大橋や山岳トンネルを建設するニーズは低いという。
 FSでは、詳細な軌道や駅の位置、事業手法、事業スケジュールなどを検討する。
 国交省は今回の高速鉄道計画を契機に、タイで計画される鉄道の建設事業全般に協力を拡大する。南部を横断する鉄道の改良事業でもFSを行う。

2015年5月28日木曜日

【マジンガーZの基地か!?】米国で超安全なコンドミニアム開発、即完売のおまけ付き


さすが米国、やることが違う
 ◇20XX年、地球滅亡の危機・・そのとき人類はー◇

 映画「ターミネーター」シリーズや「北斗の拳」に親しんだ世代としては、子供のころ誰もが「全面核戦争が起こったらどうしよう・・」と不安になった記憶があるのでは。(ノストラダムスの大予言というのもありましたね)
 その悩みに本気で取り組むビジネスマンが米国にいる。ラリー・ホール氏は、カンザス州の草原にある冷戦時代に作られた米軍の核ミサイル地下貯蔵庫を、サバイバル用高級コンドミニアムに作り替えて売り出した。最大2.7メートル厚さのコンクリート壁で守られた深さ50メートルの地下空間は、核攻撃から気候変動にまで対応可能。価格は1ユニット150万ドルから。物件が特殊過ぎてローンは組めないので、支払いはキャッシュオンリーとのこと。第一弾プロジェクトはすでに完成し、完売したという。どんな心配性のセレブが購入しているのか気になるところだ。
 150万ドル(3~5人用、約90平米)~300万ドル(6~10人用、約180平米)の各ユニット価格には、室内の高級家具・家電(大型テレビやジャグジー・・・)、プールやジムなどの共有施設の利用も含まれる。非常時には風力など自家発電が利用でき、5年分の食料も確保されている。施設内にはなんと畑や魚の養殖場まで・・・。
 危機対応でも、常に武装した警備員が常駐し、住所は非公開という徹底ぶりだ。ハリー氏は、2つめのミサイル庫の改修に着手している。安心を買う余裕のない庶民としては、彼らの心配が杞憂であることを願うしかない。


【回転窓】復興予算と公平性


5月19日に開かれた東北市長会でも
財政支援のあり方で国への不満が相次いだ
 東日本大震災の復興事業で、15年度で終了する集中復興期間後の国の財政支援をどうすべきか。基幹事業以外には地方負担を求めるという政府方針が示され、議論が大詰めを迎えている。「一部負担など絶対に譲れない」。福島県内のある首長は怒りをあらわにする▼被害が軽かった地域では全額国費で事業が完了する。一方、被害が甚大だった地域では、事業着手まで時間がかかっているために、結果的に地方負担を余儀なくされる。政府の案には、厳しいところほど損をするような構図があることも事実▼とはいえ、すべてを国費で賄うことが本当に公平かとの指摘もある。被災地の別の首長は「地方負担は復興を確実に減速させる」と懸念を示しつつも、「かなり過度な地域振興策を進めているところもある」と明かす▼無駄は省いてほしいが、困っている被災地はしっかり助けてほしい-。そういう気持ちが多くに共通するのではないか▼一律の線引きが最適解を導くとは思えない。落としどころが難しい問題だからこそ、政治のリーダーシップと霞が関の頭脳で被災地と国民が納得する道筋を示してほしい。

【白鷺城がより魅力的に!?】姫路市が姫路城「中曲輪」の施設整備方針

白鷺城の名の通り、真っ白な外観が美しい姫路城
 兵庫県姫路市は、国宝姫路城の内堀と中堀の間に位置する「中曲輪」の施設整備に向けた方針の素案を公表した。新たに導入する展示・学習機能と情報発信機能を備えた「世界遺産・姫路城ミュージアム(仮称)」については、3カ所の建設候補地の中から桜門橋近くの大手門駐車場(約2万5700平方メートル)が最適とした。
 ミュージアムは、大手門駐車場の東エリアに新設し、城郭博物館や郷土歴史博物館、姫路城ビジターセンターなどを備えるため計画された。
 姫路城や城下町に関する展示・学習や文化財の保存継承の意義の普及・啓発、姫路市の文化観光案内などさまざなま機能も持たせる。

ミュージアムの建設予定地
 北側にある日本城郭研究センターは、姫路城ミュージアムとの役割分担を図りながら機能を強化し、城郭研究室と城内図書館を設けて近世城郭に関する調査・研究などを進める。
 城内の回遊性を向上させるため、休憩施設や回遊路の整備も計画し、管理運営は、民間活力の導入を含めて検討する方針だ。
 ミュージアム用地以外の大手門駐車場は、西エリアを普通車と観光バスの駐車場とし、臨時駐車場として活用していた姫路警察署跡地と県営本町住宅跡地を常設の駐車場として整備する。
 市では、整備方針(素案)に対する市民意見を6月1~30日に受け付け、今秋ごろに方針を決定する予定。

【快適トイレでお出迎え&お見送り】成田空港会社が第2PTBトイレ改修で新たな試み


先行開設した第2PTBの「GALLERY TOTO」の個室トイレ。
今や高機能トで美しいイレは日本のお家芸!?
成田国際空港会社は、成田空港第2旅客ターミナルビル(PTB)のトイレの大規模改修に乗りだす。供用開始から23年が経過し、トイレに対する意識やニーズも大きく変化していることを踏まえ、現在の空港トイレの使われ方を研究した上で、その成果をデザイン・設計に反映させる。27日に設計関連業務の委託先を決めるプロポーザル手続きを公告した。
 発注する業務は「2PTBトイレリニューアル基本・実施設計その1」。エントリーシートなどは6月5日まで、提案書は7月8日まで空港運用部門施設保全部建築グループ(電話0476・34・5681)への持参で受け付ける。書類審査の合格者を対象にプレゼンテーション審査を行い、7月21日までに契約候補者を決める予定。
 契約候補者との最終的な仕様内容と見積もり価格の交渉を経て契約を交わす。概算額は2500万円(税込み)。その1業務の受託者に、今後発注を予定するその2業務も随意契約で委託する。
 参加資格は「建築関係コンサルタント」に登録している単体。過去15年間に不特定多数が利用するトイレの新設または全面改修工事の設計業務(積算含む)を行った実績が必要。
 第2PTB内のトイレの大規模改修では、規模が大きく、利用頻度の高い複数箇所のトイレを「デザイントイレ」と位置付け、次世代のトイレ空間を創出する計画。スーツケースなど大きな荷物を持つ利用者が使いやすいトイレのあり方を研究し、より快適なトイレ設備(パウダーコーナーなど)や最新のユニバーサルデザインなどを導入。次世代トイレにふさわしい意匠性の高いトイレにリニューアルする。
 第2PTBでは4月に供用を開始した大空間の休憩スペース「NARITA SKY LOUNGE 和」の一画に、衛生陶器メーカーのTOTOと協働で最新のトイレを体感できる施設「GALLERY TOTO」を開設。アート空間としての要素を取り入れ、最新・最高級の便器を設置した個室トイレを外国人旅行者らに体感してもらい、日本のトイレ文化や技術力の高さを世界に発信している。

【16年度開通へ工事最盛期】NEXCO西日本が新名神・城陽~八幡区間の現場を公開

大型移動支保工による桁架設の様子
(京田辺高架橋付近)
 西日本高速道路関西支社は26日、新名神高速道路の京都府域(城陽~八幡間3・5キロ)の建設現場を報道陣に公開した。主に平野部を通過するルートのため、8割以上が高架橋や橋梁で、16年度の開通に向けて八幡ジャンクション(JCT)や京田辺高架橋、木津川橋、城陽JCTの建設工事が最盛期を迎えている。
 関西支社では大津~神戸間(4区間、約79キロ)で事業を展開中。城陽~八幡間とともに、高槻~神戸間40・5キロも16年度の開業を目指す。12年4月に事業認可された大津~城陽間25・1キロと八幡~高槻間10・7キロでは、用地取得に向けた調査や設計段階にある。一部で用地取得を完了し、本年度から工事用道路などの準備工事を発注する。
 今回訪れた城陽~八幡間(城陽市寺田金尾~八幡市美濃山荒坂)は、延長3・5キロのうち約3キロが高架橋・橋梁で、全体の進ちょく率は約40%。
 新名神と第二京阪道路とを接続する八幡JCTでは、下部工(橋台・橋脚41基)や土工事をフジタが担当。構造物関係はほぼ完成し、盛り土造成などを実施中だ。昨年12月と今年4月には、第二京阪道路上空をまたぐ鋼桁の夜間一括架設(施工=IHIインフラシステム・川田工業JV)が行われるなど、上部工工事も順調に進んでいる。

橋脚工事が進む木津川橋
 東側の京田辺高架橋(L1590メートル)では、工期短縮などを目的に「大型移動支保工」を用いたPC上部工(施工=川田建設・安部日鋼工業・富士ピー・エスJV)が急ピッチで行われていた。経済性などを考慮して混合桁橋、プレテンションT桁橋、2主版桁橋の3構造が採用されており、進ちょく率は上り線が約60%、下り線が約40%。
 混合桁の架設に採用されている移動支保工は、橋体製作用の型枠を架設桁でつり下げて支持する方法で、型枠支保工を移動してサイクル施工を行う。上屋設備により天候の影響を受けにくいなどの利点もある。架設区間は計23径間で、上り線は12径間、下り線は7径間の架設を終えた。下部工工事(施工=みらい建設工業)では、橋台・橋脚105基のうち99基が完成している。
 東側では、木津川をまたぐ木津川橋(755メートル)の建設が進む。下部工を大林組が担当。工事は非出水期(10月中旬~6月中旬)に限られるため、瀬替えなどで工事の効率化を図っており、橋脚12基のうち7基が完成した。西側から鋼上部工工事(施工=エム・エムブリッジ・宮地エンジニアリング・日本橋梁JV)も始まっており、約250メートルの架設を終えた。
 木津川橋の東側では、京奈和自動車道と接続する城陽JCTを建設中。下部工や盛り土造成などを奥村組土木興業が担当している。
 全体の進ちょく率は約40%で、橋台・橋脚37基のうち33基が完成した。鋼・PC複合上部工工事(施工=IHIインフラ建設・IHIインフラシステムJV)も順次スタートしており、現在の進ちょく率は14%。

【地域の安全、見守ります】群馬建協が災害情報をSNSで発信


ツイッターで公開した現地パトロールの様子
(5月25日に首都圏で発生した地震後)
 群馬県建設業協会(青柳剛会長)が運営する新たな災害情報共有システム「ぐんケン見張るくん」が、25日に発生した埼玉県北部を震源とする地震で有効に機能した。県内各地にいる協会員から送られてくるパトロール結果の報告をシステム内に蓄積し、ソーシャルネットワークサービス(SNS)のツイッターを通じて一般市民向けにも情報を提供する。今回の地震で道路構造物などに異常は検知されなかったが、正確な情報発信が安心感を与えるのに役立った。
 25日の地震発生後、群馬県と結ぶ災害協定に基づき各支部に割り当てられた箇所を協会員が自主的に点検し、同システムに情報を寄せた。震度4を記録した伊勢崎や、前橋、渋川、桐生の各支部がパトロールに出向き、「異常なし」の情報がツイッターを通じて提供された。
 地震に対応して初めて機能した新システムについて、青柳会長は「発生後すぐにパトロールに出向くなど、地域の建設業者の役割を果たすことにつながった」と評価。今後もこうした取り組みを継続したいという。

2015年5月27日水曜日

【建設業の魅力、どう伝えるか】関東整備局が学生向け就業体験で工夫凝らす


◇大規模工事現場で実習、若手の女性技術者を指導員に◇

 担い手確保が待ったなしの課題となっている建設業界。新規入職者を呼び込むための取り組みは受発注者でさまざまだが、関東地方整備局は、各出先事務所の特色を生かしたインターンシップの実施に力を入れている。大規模工事を抱えている事務所は、現場監督の醍醐味(だいごみ)を伝える実習を行い、入省希望者の増加を図る。若手の女性技術者を指導員に起用して、建設業が女性も活躍できる産業であることをアピールする事務所もある。
 国の行財政改革の一環として、関東整備局の新規採用の定員は最近まで大幅に抑制されていた。10年度は50人だった事務・技術系を合わせた採用者数は11年度から激減し、13年度は1桁にまで落ち込んだ。行き過ぎた抑制措置が見直され、採用が40人台に回復したのは昨年度のことだ。

 ◇遠ざかっていた距離、どう縮める◇

 これまで、関東整備局のインターンシップに参加した学生は、11年度が23人(計15事務所)、12年度が32人(計19事務所)、13年度が31人(計21事務所)、14年度が39人(同)。定員増の前後で参加者数に大きな変化は見られないが、「遠ざかっていた学生との距離を直接縮められるインターンシップは、重要な取り組み」と関東整備局は捉えている。
 短期間の就業体験で土木のエンジニアとして働く魅力を伝えようと、八ツ場ダム工事事務所は、昨年度に着工した八ツ場ダム(群馬県長野原町)本体工などの工事現場への立ち会いを今年の実習内容に組み入れることにした。港湾関係では、川崎港の臨港道路や、横浜港の国際コンテナターミナルなどの整備を手掛ける京浜港湾事務所などが現場実習の準備を進めている。
 地方に拠点を置くある建設業者によると、企業のインターンシップでは、施主から請け負っている現場を実習の場として活用することは難しい場合もあるという。現場実習と内勤業務の双方を一度に体験できるのが、公共発注機関のインターンシップのメリットともいえる。

 ◇現場だけでない、建設産業の魅力◇

 大規模なインフラ整備の魅力ばかりが学生を引き付ける要因というわけでもない。2年前に千葉国道事務所のインターンシップに参加し、今年入省した市原勇気さん(常陸河川国道事務所調査第二課)は、「当時は、国道の交差点改良に関する計画を自分で作成し、緊張しながら先輩たちの前で発表した」という。
 市原さんはその実習を通じ、住民の生活のしやすさを考えることが地域の街づくりでどれだけ大切かを実感。現場に向かう先輩の真剣なまなざしにも背中を押され、入省を決心した。まだ慣れないことばかりというが、「『土木は経験工学』という信念を持ち、成長していきたい」と充実した日々を送る。
 北首都国道事務所は、女性の働き手が少ない建設業のイメージを変えようと、今年のインターンシップで女子学生を優先的に受け入れる方針を決めた。指導員の1人には、女子学生と円滑なコミュニケーションを図れることを期待し、今年採用した女性技術者を充てる方向だ。職務経験の浅い若手職員が責任感を強めるきっかけになればとの期待もあるという。
 今年は、関東甲信の1都8県にある計52事務所のうち、25事務所(本局含む)がインターンシップの参加者を募集している。申し込みの期限は6月11日。8月には、各事務所の参加者を一堂に集めた業務説明会を開き、学生たちに情報交換の機会を提供する予定だ。

【どうなる新国立競技場】舛添要一知事「オールジャパン体制で」


 ◇設計者・施工予定者の積極的な関わり求める◇

 東京都の舛添要一知事は26日の記者会見で、国が都に建設費の一部負担を求めている新国立競技場について、文部科学省の対応を批判した上で、「時間が限られているのだから、官民含めオールジャパンで取り組まなければ解決しない」と述べ、設計者、施工予定者に対しても、技術面から見た必要な建設費や工期内での完成の可能性など積極的な情報公開を求める考えを示した。
 舛添知事は、文科省が都に対して500億円程度の費用負担を求めたことについて「法的に東京都が出せるのは50億円。500億の根拠は何もない」とあらためて批判。「文科省に任せていては解決しない。解決するためには、安倍晋三首相自らが政府機関を総動員して取り組む必要がある」と官邸主導によるオールジャパンの体制構築を求めた。
 その上で、「良いものをつくるために建設費が膨らむのは理解できる。ただ建設費をかけるなら、工期内に間に合わせるべきだ」と指摘。設計者、施工予定者に対しても建設費や完成見通しなど技術面から見た説明を求めるべきだと強調した。
 新国立競技場をめぐっては、下村博文文科相が19日の舛添知事との会談で、建設費の一部負担を要請。併せて、完成予定の19年春時点では開閉式屋根は取り付けず、座席を一部仮設にするなど計画の見直しを説明し、今月中に詳細をまとめて報告する方針を示していた。

【回転窓】末は博士か大臣か

 時代の移り変わりと共に言葉や言い回しもはやり廃りを繰り返していく。日本が高度成長期だったころ、勉強ができてしっかり者の子どもがいれば、褒め言葉のフレーズは「末は博士か大臣か」だった▼大学院に通う人が多くなって博士の人数は昔より増えているだろう。大臣はイメージそのものが変わったように思う。そんな中で、偉い人の一角に加わるであろう会社の社長について面白い調査結果がある▼民間信用調査会社の東京商工リサーチが行った14年版全国社長姓名調査によると、日本の社長で最も多い同姓同名は「佐藤誠」で、その数は174社。2位は「鈴木隆」(168社)、3位は「鈴木茂」(151社)と続く▼佐藤や鈴木という姓はもともと数が多いので上位に来るのは当然か。1957(昭和32)~78(同53)年に生まれた男の子の名前で「誠」は通算18回首位になった▼明治安田生命の調査で、昨年生まれた男の子の名前で1位は「蓮」、2位は「大翔」、3位は「陽向」。半世紀後には、佐藤蓮社長や鈴木大翔社長がたくさん誕生しているかも。身近にいたら「末は社長か…」と期待を。

【ターニングポイント】エーアンドエーマテリアル・中村勇二社長


 ◇失敗を重ねて学ぶ◇

 「海外での職務経験が今も生きている」と語るのは、エーアンドエーマテリアルの中村勇二社長。日本セメント(現太平洋セメント)で海外部門に所属していたころ、主に中国や東南アジアのセメント工場でセメントの受け入れから出荷まで一貫した作業をこなしたことが、「人間的にタフになったきっかけ」という。
 日本では、自分に割り振られた仕事を行うのが普通だが、「海外ではそれが通用しない」。人的資源が限られる中、担当外の仕事を支援することも多く、「どんな仕事でも自分なりに解決する必要があったし、何でも知っておく必要があった」と当時を振り返る。
 若手技術者に伝えたいのは「失敗を重ねないと学ぶことはできない」ということ。「情報を簡単に多く入手できる時代だからこそ、それを知識に変えるためにも、失敗して理解していってほしい」とエールを送る。

2015年5月25日月曜日

【凛】東京メトロ鉄道本部改良建設部改良建設企画課・宇野孝英さん


 ◇夢追いながら後輩のモデルに◇

 4年前の就職活動中に起きた東日本大震災。直後、東京の鉄道網はすべてストップ。復旧に取り組む鉄道各社の中でも、東京メトロの安全確認から運転再開までの対応の速さに感動した。
 大学では土木工学科を専攻した。電気設備関係の企業に勤める父親は、停電になると夜中でも復旧現場に出向いた。そんな姿を見ているうちに、人の暮らしに欠かせないインフラ整備に関わりたいと思うようになったという。
 入社後は改良建設部門に配属され、東西線大手町駅周辺の改良工事を担当。再開発事業に合わせ、階段やエレベーターなどを整備した。日本有数のビジネス街で乗降客も多い。工事ヤードを十分に確保できず、作業も終電後、始発までの数時間に限られた。厳しい条件下でゼネコンや関係部署の人たちと協力しながら工事を安全、確実に進めた。「苦労が多かった分、新しいエスカレーターをお客さまが使っている姿を見た時は感激した」と振り返る。
 現在は駅舎のバリアフリー化を担当。仕事のやりがいに規模の大小は関係ないが、人の流れが一変する大規模工事には携わってみたい。延伸計画が具体化すれば「新線建設も」と夢は膨らむ。
 仕事とプライベートの切り替えも重要。東京近傍のテーマパークをよく訪れ夢の国でリフレッシュする。先輩技術者に少しでも早く追い付こうと勉強の毎日。女性の土木職はまだ少なく、「後輩たちの模範になれるような道筋を示したい」。(うの・たかえ)

【中堅世代】それぞれの建設業・95

一律の取り組みでは女性活躍の場は広がらない・・・

 ◇男性本位の価値観から脱却を◇

 建設業に女性の活躍の場を増やそうとの機運が高まる中、そうした風潮に冷めた目を向ける人もいる。
 建設会社の管理部門に長く勤務する中野智子さん(仮名)。男社会の建設会社ではこれまで、現場勤務の女性技術者はごく少数。女性社員の大半は事務職が占めてきた。それなのに、業界で最近盛り上がりを見せている女性活躍推進の取り組みには、現場で働く女性技術者・技能者への支援ばかりが目立つと中野さんは感じている。
 事務職で頑張っている女性社員を社内報で紹介したら、「『けんせつ小町』ではない」と周囲から指摘された。「事務職・技術職を問わず、女性社員への評価や女性の働き方が男性本位で決められている」。そんな不満がある。
 十数年前、学生時代の就職活動は超氷河期。4年制大学を出た女子は特に厳しく、周囲には就職できない人も多かった。他の業界を志望していたがかなわず、最後は知り合いに紹介してもらった今の建設会社に一般職で何とか滑り込んだ。
 しかし、バブル崩壊後の経営難で、会社の業績は入社当時からずっと低迷。給与は上がらず、将来も見通せず、何度も転職しようかと考えた。それでも続けてきたのは、元社員から「会社を離れてうちの良さが分かった」という声を聞いたことや、配属先の上司や同僚に恵まれたことが大きい。
 ところが数年前、上司が交代し、これまで任されてきた仕事の範囲が狭められた。部内での検討事項も女性社員の意見を一切聞かずに進めてしまう。男性が何でも解決しようという、女性社員から見れば閉鎖的な風土が根を張る。
 疎外感が増し、仕事に対するモチベーションも下がる一方だが、会社の将来に明るい兆しも感じつつある。新入社員の中に女性の総合職が多くなってきたことだ。
 数年前の人事制度改革により、一般職からも総合職に移れるようになった。もっとも、どうすれば総合職に移れるのかは不透明で、会社から詳細な説明もない。
 総合職社員の比率が上昇すれば、給与など管理コストも増大するため、女性が大半を占める一般職を会社が積極的に総合職に登用するとは考えにくい。時流に倣って制度を見直しても、それは一時のポーズ。根本的な企業体質はそう簡単には変わらないと思う。
 業績の長期低迷で人員削減などリストラが進められたが、最近は景気回復を受けて工事も増え、社内に明るさが戻りつつある。数年前に結婚した。子どもはほしいが、育児をしながら仕事をするなら、任される業務も責任も限定的な一般職のままの方がよいのでは、とも考える。
 働く女性が皆、キャリア志向で前向きとは限らない。「仕事に対して受け身で、会社に対応を委ねる女性は多い。そうした『可もなく不可もなく的な中間層』を会社組織の中でどううまく機能させるか。少数の女性技術者のための環境整備より、そちらの方が先に取り組むべき課題ではないか」。
 仕事に対する価値観は人それぞれ。一律の取り組みでは女性の活躍の場は広がらないと中野さんは見る。周囲に流されず、自分なりの働き方を見つけたいと思っている。

【サークル】JFEエンジ・自転車部


 ◇「趣味も仕事も全力、サイクルツリーもPR」◇

 14年夏と発足して間もないのが、JFEエンジニアリングの自転車部「cyclengineer~チャリ園児~」。会社公認のサークルで、14年度の新入社員と、同社の機械式立体駐輪場「サイクルツリー」を手掛ける代表の金内常和さんが意気投合し設立した。現在は、技術系社員7人と関連会社社員1人の計8人で活動している。
 「趣味も仕事も全力で」がモットー。月1回の定例走行会に加え、全国各地で開催される自転車イベント(大会)へも積極的に参加している。趣味の自転車を楽しみながら、活動を通じて自社のサイクルツリーを売り込み、放置自転車対策や駐輪場不足の解消にも貢献したい考えだ。
 「観光も兼ねたツーリングなど楽しいイベントを増やしつつ、サークルを大きくしていきたい」と金内さん。結成後間もないサークルだが、各地で行われる大会に協賛・参画することが、「活動を楽しむだけでなく、サイクルツリーのPRに結び付くのでは」と期待を抱いている。
 今後の活動予定は、9月に行われる「日産スタジアム・サイクルパークフェスティバル」や、11月に開催予定の「ツール・ド・ひたちなか」で、どちらも参加者の多い耐久レースだ。日ごろの練習にも皆熱が入っているという。

【駆け出しのころ】りんかい日産建設常務執行役員東京土木支店長・塚本喜之氏


  ◇隣の人のこともよく考え行動を◇

 海のない県で育ち、初めて海水浴に行ったのも小学5年になってからでした。このため、小さいころから海に対する憧れのようなものを持っていました。就職先に海上土木を得意とする会社を選んだのも、きっとそうした憧れがあったからだと思います。
 最初に配属されたのは仙台支店の事業所です。事務所に併設されている宿舎に寝泊まりし、朝一番に事務所へ行って掃除をするのが一日の始まりでした。同じ事業所に同期生が一人いましたので、その彼と二人で眠い目をこすりながら一生懸命に掃除をしていたのが思い出されます。
 新人ですから覚えることばかりだったのですが、測量だけは別でした。学生時代に測量事務所でアルバイトをしていた経験が生き、最初から現場で実施する一通りの測量はこなすことができました。
 この事業所には入社以来、十数年にわたって勤務しました。この間に堤防や護岸、浚渫といった海上土木だけでなく、河川や道路、造成などの陸上土木の工事にも携わり、土木技術者として大変に貴重な経験を積むことができました。
 私たちが若かったころはまだ、生コンの打設後に自らバイブレーターを操作するなど、若い職員が現場作業の一部も担いながら施工のことを覚えていったものです。現在のように施工管理と作業が明確に分かれているのも良いのですが、自分の手を動かした経験はその後のいろいろな場面に役立ちました。
 会社では「隣の人のことをよく考えて仕事をしよう」と言っています。自分だけが良ければ済むというものではありません。それには職場のコミュニケーションがとても大切です。人間関係が良好でないと、皆のモチベーションは上がりません。
 そして、例え一人が失敗したとしても、それを皆で共有すれば前に進むことができます。失敗を隠しては駄目です。土木の仕事は、頭が良い人がいればそれでうまくというものではありません。それぞれが与えられた役割で個性を発揮していかなければなりません。そのために上司は常に部下たちの適材適所を考えていく必要があります。
 若い人たちには、仕事では割り切ることも大切だと知ってほしいと思います。内に秘めて悩んでいても解決できないことはたくさんあります。「終わらない仕事はない。時間が解決してくれる」。私がかつて現場で悩んでいた時に教えてもらい、今も教訓にしている言葉です。時代や現場を取り巻く環境は変わりましたが、これからも十分に通じる言葉ではないでしょうか。
 (つかもと・よしゆき)1977年中央大理工学部土木工学科卒、臨海土木(79年りんかい建設、2003年りんかい日産建設)入社。東北支店土木部長兼安全部長兼品質環境管理部長、執行役員土木事業部長などを経て、15年4月から現職。埼玉県出身、60歳。

21歳の時、入社試験を受けるために提出した履歴書

2015年5月22日金曜日

【キーパーソン】前田建設・吉田純也氏

「隊の目的は災害の未然防止」と話す吉田隊長
 ◇MRT第3期隊長に就任 

 前田建設の職員でつくるトンネル建設現場の救護活動隊「マエダ・レスキュー・チーム(MRT)」。結成8年目を迎える今年、第3期隊長に就任した。「これまでは自分たちの技術を磨くことに専念してきた。培ってきた技術やノウハウを社内にどう伝えていくかが今後の課題」と話す。
 MRTは、過去に同社のトンネル工事現場で発生した災害を教訓に、07年に当時社長だった前田靖治相談役の発案で設立された。社長直轄組織で、万一の事故発生時に出動要請が出され、作業中の坑内火災などで逃げ遅れた人の捜索や救護を行う。
 メンバーは25人で、トンネルやシールド工事の現場に勤務する職員が大半。年2回の集合訓練で救護技術を向上させるとともに、チームワークを醸成している。国内で唯一営業採炭を続ける北海道の釧路コールマインの模擬坑内で実施する訓練は、酸素呼吸器を装着し、150度以上という高温濃煙下、視界ゼロという状況で行われる。

 ◇出動することのない隊に◇

 今期から加わった6人の新隊員を気に掛け、「仲間を信じ、命を預けられるようになるためにも、まずは自己研さんに努めてほしい。規律を守り、志も高くもってもらいたい」と期待を込める。座右の銘は「一期一会」。「入社以来多くの人に助けてもらい、今の自分がある」。
 トンネル工事では、切羽後方で火災が発生すれば、前方の作業員の退路が断たれることになる。坑内だけでなく、高層建築現場での消火・避難訓練の指導にもMRTの救護技術が生かされると考えている。「われわれの目的は火災や爆発事故といった災害を未然に防止すること。出動することのない隊を目指したい」。(営業第2部民間営業チーム長、よしだじゅんや)

【建築設備技術遺産】建築設備技術者協会が5件認定

1978年に手作りされた設備設計のコンピュータ
建築設備技術者協会(田辺新一会長)は、建築設備の「技術」「役割」「文化」を多くの人たちに知ってもらうことを目的に創設した「建築設備技術遺産」の15年度認定遺産を決めた。認定委員会(委員長・鎌田元康東大名誉教授)が「設備設計支援手造りマイクロコンピュータ」(菱機工業新潟支店)など5件を建築設備技術遺産に選定した。認定式は、6月24日に東京都港区の明治記念館で開く総会の終了後に行われる。
 建築設備技術遺産に認定された5件のうち、「設備設計支援手造りマイクロコンピュータ」は、まだパソコンが普及していない1978年から設備設計の効率化を目指して製作されたコンピューター。空調熱負荷やランニングコストの計算プログラムも自社開発して設計業務に活用していたという。早くからコンピューターの有効性に着目して開発、活用した点が評価された。

国産初の高級衛生金具(炊事流し用水栓㊤と壁付き紙巻き器)
今回認定された5件と管理者は▽設備設計支援手造りマイクロコンピュータ=菱機工業新潟支店▽碍子(がいし)支持金具「アングラック」、配管用支持金具「パイラック」=ネグロス技術部▽初代コンデンシング給湯器「プリオール・エコ」=大阪ガスリビング事業部▽初めて国産化された高級衛生金具類=いするの家 西原脩三記念館▽インダクションユニットとその技術資料=新日本空調技術本部。
大阪ガスの初代コンデンシング給湯器

【快適な駅づくり推進】首都圏主要民鉄の15年度設備投資計画出そろう



 ◇ホームドア設置など拡充◇

 首都圏の民間鉄道各社の15年度設備投資計画(鉄道事業)が出そろった。8社の投資総額(見込み)は1864億円。14年度は公表していない京王電鉄を除く7社で比較すると、投資総額は前年度比8・6%増加した。東日本大震災以降に注力してきた防災・減災対策に加え、ホームドアの設置やバリアフリー設備の増設、駅舎のリニューアルなど安全・快適な駅施設の整備を推進する動きが目立ってきた。
 計画を公表したのは、▽東武鉄道▽小田急電鉄▽京王電鉄▽京浜急行電鉄(京急電鉄)▽東京急行電鉄(東急電鉄)▽京成電鉄▽西武鉄道▽相鉄グループ-の8社。8社のうち投資規模が昨年度比10%以上増加したのは、東急電鉄、小田急電鉄、相鉄グループの3社だった。
 各社とも鉄道構造物の耐震補強工事を中心とした防災・減災対策を引き続き推進。耐震化率は順調に上昇し、京成電鉄はトンネル中柱の耐震補強を年度内に全線で終えるとしている。
 耐震化の取り組みをさらに強化する動きもある。東急電鉄は、高架橋柱のうち倒壊する可能性のあるものに加え、倒壊の危険がなくとも損傷の可能性があるものの耐震補強に着手するほか、盛り土や擁壁など土木構造物にも耐震化の対象を広げることを検討している。

京成電鉄の連続立体交差事業で完成した高架化された鉄道
 利用者の安全対策の一環としてホームドアの設置工事に注力する方針を示したのは、東急電鉄と相鉄グループ。東急電鉄は1月、20年までに約300億円を投じて東横線・田園都市線・大井町線の全64駅にホームドアを設置する計画を発表し、本年度は10駅で工事に着手する。相鉄グループは横浜駅(横浜市西区)に設置する。
 駅舎のリニューアル工事も各社が推進中。小田急電鉄は新宿駅(東京都新宿区)西口地下、西武鉄道は池袋駅(東京都豊島区)で実施するなど、主要駅のリニューアルも目立っている。バリアフリー設備の設置・増設は、郊外の駅で増えている。
 連続立体交差(連立)事業では、西武鉄道が東村山駅付近(東京都東村山市、延長2・3キロ)の事業に1月着工。東武鉄道が竹ノ塚駅付近(東京都足立区、同1・7キロ)と清水公園駅~梅郷駅間(千葉県野田市、同2・9キロ)の2カ所で事業を進めている。

【きっと感動したろうな・・・】東北整備局がトンネ現場で貫通の瞬間を公開


トンネルに光が差し込んだ瞬間
◇貫通の瞬間に歓声/施工は安藤ハザマ◇

 東北地方整備局が建設を進めている相馬福島道路(霊山道路)の国道115号馬舘山トンネル(仮称)の現場(福島県伊達市)で19日、地元の小学生や住民を対象とした見学会が開かれた。トンネルの貫通の瞬間を地域住民にも体感してもらおうと同局が企画したもので、伊達市立小国小学校と月舘小学校の5~6年生など約100人が参加した。ブレーカーでトンネルの最後の部分を掘り進めて、貫通した先から光が差すと、参加者から「おお!」「すごい!」といった歓声が上がった=写真。拍手と共に万歳三唱を行って、無事の貫通を祝った。
 同トンネルの施工は安藤ハザマが担当。菅原一智現場代理人は「実際にトンネルが貫通する瞬間を見てもらう機会はなかなかない。喜んでもらえて良かった。現場一丸となって早期に完成させたい」と施工への思いを語った。

 ◇「とても感激した。道路ができるのがうれしい」と地元の方◇

 参加者はトンネルの概要や施工方法、使用重機などの説明を聞いた上で、トンネルの貫通状況を見学した。月舘小6年の長沼祐真さんは「すごい迫力で、貫通して光が見えた時にすごく感動した」と笑顔で話した。地元住民の渡辺良子さんは「とても感激した。道路ができるのがうれしい。開通したら使おうと思いながら見ていた」とトンネル開通が待ち遠しい様子だった。
 見学会では、防水シートの破れ防止のために設置するロックボルトキャップに復興への願いや将来の夢を描いてもらい、実際に据え付ける体験イベントや、濁水処理の実演なども行った。
 工事場所は同市霊山町石田~月舘御代田。トンネル延長は367メートルで、幅員は12・0メートル。NATMにより掘削を進めていた。同工事には、境ノ目トンネル(延長175メートル)の覆工コンクリート施工も含まれている。工期は7月15日まで。
 相馬福島道路(霊山道路)は常磐自動車道と東北自動車道を結ぶ約45キロの高規格道路。東日本大震災の復興に向けたリーディングプロジェクトとして、17年度の開通を目指して整備が進められている。完成すると福島飯坂インターチェンジから相馬市役所間が現在の76分から41分に短縮されるなど、速達性の向上とともに、緊急輸送道路の信頼性確保や企業活動の活性化といった効果が期待されている。

【回転窓】「後の先」の外交交渉

 太平洋を取り巻く国々で自由貿易圏をつくる環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の日米協議が大詰めを迎えているとされる▼安倍首相が交渉への参加を表明したのは13年3月。各国が枠組みを固めつつあったころだ。出遅れながら長期間の交渉に持ち込んだ日本政府の粘り腰は一応評価に値するだろう。外交交渉で最も大事なのはいうまでもなく国益。それを意識した交渉を今後も期待したい▼TPP交渉と並行し、需要が急増するアジアのインフラ整備をめぐる主導権争いが激しくなっている。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を見送っている日本が打ち出した一手は、アジア各国へのインフラ資金の援助だ。AIIBが計画する資本金と同額の1100億ドル(13兆円)を5年で投じるという▼戦前の名横綱・双葉山が極めた取り口が「後の先」。相手に先に立たせ、当たり合った後には逆に勝負を有利に運ぶ形になっていたという。アジアのインフラ整備でも日本はTPPのように「後の先」といけるか▼AIIBに参加するのはTPPの5倍近い58カ国。外交力の真価が問われる。

【首都高大規模更新】築地川区間で沿道開発と一体実施検討へ


大規模更新が計画されている築地川区間(新金橋付近)
◇沿道開発と一体整備へ◇

 首都高速道路会社は、首都高速道路の大規模更新事業の一環で、都心環状線の築地川区間(東京都中央区銀座~新富町、延長1・2キロ)の施工計画の検討に本格着手する。道路施設の更新と沿道開発との一体的な事業を視野に、線形や構造・施工法などの検討を進める。コンサルタント業務は千代田コンサルタントが担当。現時点の更新計画では2020年東京五輪後の着工を予定している。都心環状線の築地川区間(幅員3・25メートル×4車線)は半地下の掘割構造。供用開始から50年以上が経過し、擁壁部のコンクリート剥離や鉄筋の露出・腐食などの損傷が多数発生している。
 首都高速会社がまとめた更新計画によると、工事期間中は内回り・外回りそれぞれ1車線以上を使用しながら、現行基準に適合した擁壁への取り換えなどの更新工事を段階的に進める。築地川を干拓して川底に道路を構築した同区間では、急カーブが連続して交通事故が多発しているため、線形も見直す。事業期間は15~28年度。事業費は559億円を見込む。
 国は、首都高の更新と周辺街づくりを連携させた都市再生の推進を成長戦略の施策に掲げ、改正道路法(14年6月施行)で新築や改築に限っていた立体道路制度を既存の高速道路にも適用できるようにした。国土交通省は首都高速会社や都、中央区などで組織するワーキンググループを設置。立体道路制度を活用した築地川区間の更新事業の構想具体化に向けた検討も進めている。
 構想では掘割構造の同区間を人工地盤で覆い、上部で新たに発生する容積を周辺の都市開発計画に移転し上積みする。
 首都高速会社の現時点の計画では、立体道路制度の活用は想定していない。今後、沿道の状況把握や開発関連の情報収集などを進める。地元など関係者との都市計画の調整のほか、必要な用地取得、支障物の移設などに時間を要するため、更新工事の開始は20年東京五輪後を予定している。

2015年5月20日水曜日

【回転窓】建設業界の「特別な日」

 米大リーグで活躍するイチロー選手(マーリンズ)が18日(現地時間)の試合で2安打を放ち、伝説の強打者ベーブ・ルースの通算安打数に並んだ。数々の快挙を成し遂げてきたイチロー選手の功績は、日本の私たちに大リーグをより身近に感じさせてくれた点でも大きい▼そんな大リーグに今年も特別な日が近づいている。米国で5月の最終月曜日はメモリアルデーと称される「戦没将兵追悼記念日」。この日の試合に、各球団の選手は特別仕様の帽子やユニホームで臨む。普段とは違うユニホーム姿を楽しみにしているファンも多い▼建設業界でも大リーグのように特別な一日をつくりたい-。先日、ゼネコンに勤める40代の方からこんな意見を聞いた。一日だけの作業着を作るのは難しいとしても、夢が膨らむ提案だ▼建設現場は多くの市民の目に触れる場でもある。そこで働く人に着目した業界を挙げての取り組みは面白く、何よりも提案してくれた建設マンのユニークな発想に好感が持てよう▼何のために実施し、コストはいかに。そんな無粋なことは言わず、いつが「特別の日」かを考えるだけでも楽しい。

【デザイン一新】飛島建設が新しいヘルメット/25年ぶり、機能性も向上

右がノーマルタイプ、左はトンネル工事用のヘルメット
飛島建設は、工事現場でかぶるヘルメットのデザインを25年ぶりにリニューアルした。白色をベースに、前面に「TOBISHIMA CORPORATION」の文字と社章を付けた。側面にはキャッチフレーズの「防災のトビシマ」「建ててから始まる真のお付き合い」をそれぞれ表した青色と水色の2色のラインを対称に配置した。
 デザインの変更に伴い、機能性も一段と向上させた。従来の発泡スチロール製の衝撃吸収ライナーに代え、ヘルメット内部の空間を広く確保できるタニザワ製のブロックライナーを装備。通気孔を設けたことで、熱が逃げて涼しくなり、熱中症対策としても有効という。
 前面に青色の透明ひさしを付け、広い視野を確保しながら紫外線をカットできる。ひさし周縁部の溝は雨天時の雨だれを防ぐ効果があり、側面からの防護性も高めた。
 これまで現場ごとに異なっていたJVスポンサー用のヘルメットもデザインを統一。JV用、トンネル工事用含む1400個を全国の現場などに支給した。
 安全担当役員の安藤保雄取締役兼執行役員副社長を委員長とする社内ヘルメット選考委員会を設置し、昨年12月から検討を進めてきた。本多雅之安全環境部長は「デザインは最終的に10案から絞り込んだ。作業服とのコーディネートに気を配り、名刺に記載されているデザインとの統一性も図った」と話している。

【新しいランドマークは19年度完成予定】森トラスト/虎ノ門パストラル跡地開発の計画名は「ワールドゲート」


ワールドゲートの完成イメージ
森トラストは、東京都港区の虎ノ門パストラル跡地(虎ノ門3、4、敷地面積1万6300平方メートル)で計画している大規模複合開発の計画名称を「虎ノ門トラストシティ ワールドゲート」=完成イメージ=に決めた。東京の国際都市機能の中枢を担い、「世界に向けた門」を目指すという思いを込めた。
 近く施工者を決め、既存の地下構造物の解体を経て16年1月に本体着工する予定。19年度の竣工を目指す。設計は安井建築設計事務所が担当している。
 建物の規模は地下4階地上36階建て延べ約21万平方メートル。主用途はオフィス。六本木・虎ノ門エリアの国際拠点化を目指して高層部に外国人向けのホテルやサービスアパートメント、低層部に多言語対応の医療・生活支援施設や日本文化を海外に発信するための産業育成施設などを設ける。

【子どもたちに建設業の魅力を】徳島県が担い手確保へ出前講座開始

写真や絵を使って建設の仕事を紹介しているパンフ
徳島県は、建設業の重要性や魅力を紹介し、将来の担い手確保につなげようと小学生を対象にした出前講座「社会を支える建設の仕事と防災」を始めた。小学校の総合学習に利用できるパンフレット「建設のしごと」も作成した。
 建設業では、技能労働者の高齢化や若年入職者の減少による担い手不足が深刻な問題となっている。出前講座は、生活を便利で快適にするとともに、台風や地震・津波などの災害から命と財産を守る建設業の重要性と魅力を小学生に紹介し、建設業に進む人材を増やすのが目的。
 講座の対象は県内の小学校4~6年生。県土整備部の職員が講師を務める。内容は橋の造られ方を例に計画や設計、用地買収、工事、維持管理の各段階での仕事の内容を説明。小学生がアーチ橋模型の組み立てを体験し、その強さの秘密などを学ぶことで建設業に興味を持ってもらうコーナーもある。このほか、県内にある建設物の紹介もする。
 防災学習では、南海地震による被害の大きさや避難の大切さを伝えるほか、実験装置を用いて地盤の液状化を起こし、不思議さと備えの大切さを実感してもらう。
 パンフレットは、建設業の仕事の内容や建設物の種類、働く人の声などを写真や絵を多く使って説明し、小学生にも分かりやすい内容となっている。県のホームページからダウンロードできる。

2015年5月19日火曜日

【どうなる地下鉄大江戸線延伸】交政審答申に向け正念場/沿線4区市が街づくり計画検討

都営大江戸線の延伸想定ルートと駅位置
都市高速鉄道12号線(都営地下鉄大江戸線)の延伸促進活動を進めている東京都と埼玉県内の4区市(東京都練馬区、埼玉県新座市、東京都清瀬市、埼玉県所沢市)が、新駅設置が想定される地区の街づくり計画を検討している。今後の首都圏の鉄道整備について検討している交通政策審議会(交政審、国土交通省の諮問機関)が今夏、15年度中の答申に向けて関係自治体へのヒアリングを行う予定で、各区市の延伸促進活動も正念場を迎える。

 ◇東京都練馬区でまちづくり構想の検討が加速◇

 大江戸線延伸計画は、現在の終点の練馬区光が丘から大泉学園町を経て埼玉県内のJR武蔵野線までを結ぶ構想。練馬区内で想定されている新駅は、土支田、大泉町、大泉学園町の3カ所(駅名はいずれも仮称)。区は「今までは駅周辺の整備イメージを示すことが不十分だった。本年度は地元との対話を重ねながら駅前広場、拠点となる施設など周辺整備の具体的な構想づくりを重点的に進めたい」という。
 土支田、大泉町の各駅周辺は、生産緑地や未利用地も一定程度あるが、大泉学園町は風致地区で、大型の住宅開発の余地は限られており、既成住宅地のリニューアルなども視野に入れる。土支田駅周辺では区施行の土地区画整理事業が進んでいる。区は延伸に備えた基金を14年度までに約11億円積み立てた。15年度は5億円、16、17年度は10億円ずつ積み立てる予定だ。

 ◇新駅設置で利便性高まる埼玉県新座市◇

 埼玉県新座市は、馬場地区に新座中央駅(仮称)を想定している。新駅が設置されれば、新宿駅まで所要時間が35分程度と利便性が一気に高まる。
 市がまとめた「新駅周辺地区におけるまちづくり構想」の対象地域は約90ヘクタール。全体を7ゾーンに分け、新駅想定地周辺は公園・緑地ゾーン、関越自動車道沿いは広域交通ゾーンとしてスマートインターチェンジの設置を想定。東部の文化・教育ゾーンには大学、医療ゾーンには総合病院などを誘致する。このほかに商業・業務ゾーン、住宅ゾーンなどを設けた。
 市によると、商業者や大学などから具体的な反応もあり、事業者へのヒアリングを基に当初計画を変更するなど「絵に描いた餅ではなく、実現性は高い」と自信を深めている。

 ◇清瀬、所沢両市でも本格検討開始◇

 清瀬市は、都市計画マスタープラン(01~20年度)に、新駅「(仮称)清瀬北部駅」を位置付けた。都市再生機構の旭が丘団地西側から都住宅供給公社の台田団地の南側辺りを想定している。両団地は昭和40年代に建設され、新駅設置が決まれば団地のリニューアルが加速することが期待される。大林組の技術研究所などがある新駅の南西側には研究開発施設を誘導する。市は「市役所建て替えなど大型事業も控えており、答申の内容を見てから今後の方向性を本格的に検討したい」(企画課)としている。
 所沢市は、延伸線の接続が想定されるJR武蔵野線・東所沢駅の周辺地区のうち、現在は市街化調整区域(畑)になっている「東所沢駅南東地区」(本郷)の開発を進めることを、昨年3月に策定した「所沢街づくり基本方針」に盛り込んだ。ただ、現段階では計画は具体化しておらず、清瀬市と同様、答申を待って本格的な検討に入る方針だ。

【回転窓】上位20%の大量消費


 一部の酒好きな人がたっぷり飲み、そうでない人はあまり飲まない-。日本人のお酒の飲み方にはそんな集中傾向があるそうだ。周囲を見渡してみると、確かにうなずける点があるように思われる▼先日、経済協力開発機構(OECD)が加盟国など40カ国の飲酒事情について調べた報告書の内容を外電が伝えていた。それによると、日本は2012年の1人当たり年間飲酒量が純粋アルコール換算で7・2リットル。調査対象国平均の9・1リットルを下回って31位だった▼一方、酒量の多い上位20%の国民が全体の何割を消費しているかを調べたデータでは日本は約70%。ハンガリー、米国に次いで3位だった。簡単に言うと、一部の大酒飲みが大量消費をしている構図である▼ちなみに後者のランキングでフランスは最下位。ワインを飲む習慣が国民に広く根付いているために、酒量の個人差が極めて少ないらしい。もちろんフランスにも大酒飲みはいようが、日本より大人びた飲み方に見えてちょっとうらやましい▼仕事の後のビールが一段とおいしい季節。ついもう1杯となるが、上位20%もそれ以外の方もほどほどに。

【ターニングポイント】三菱地所設計・大内政男社長「ヨーロッパの街並みに感銘」


 「大学生の時、ヨーロッパへ2カ月間の一人旅をし、建築や街並みに対するイメージが変わった」と話す三菱地所設計の大内政男社長。古い建築物と新しい建物が共存する美しい街並みに感銘を受けたという。
 当時、日本は高度経済成長期。新しいビルや建物が次々と建設され、街並みが一気に変容。個性的でありながら統一感のある欧州の街並みとは対照的に、画一的な建物が立ち並び、統一感もないと評される街ができてしまっていた。
 三菱地所グループは創業以来、東京・丸の内地区の開発を手掛けてきた。統一感のある街並みづくりや魅力的な店舗誘致などにより、休日も多くの観光客が訪れる観光スポットに生まれ変わった。
 丸の内再生のカギは「企業と行政、市民の3者が一体となったこと」という。企業だけでなく、地元の行政や住民と一緒に取り組むことで長く愛される街がつくれると強調。「今後も美しいまちづくりに貢献したい」と語る。

【分かっていたことだが・・・】外勤者の長時間労働、依然常態化/1カ月平均は10年ぶり60時間下回る/日建協調査

現場に勤務する技術者の長時間労働は改善される気配がない

  日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、植村芳輝議長)が加盟組合員約1万人を対象に行った「2014時短アンケート」(詳細版)によると、1カ月の平均所定外労働時間は58・3時間(前年63・1時間)で、10年ぶりに60時間を下回った。ただ外勤建築系職員は82・3時間(87・3時間)、外勤土木系職員は79・7時間(82・5時間)と長時間労働が常態化。外勤者の3割は100時間以上に達し、休日の所定外労働時間が長かった。
 調査は、14年11月に実施。加盟組合のうち1万1214人(平均年齢39・2歳)、外勤者6142人、内勤者5053人が回答した。日建協は調査結果を基に、労働時間短縮と同時に休日の増加を関係機関に働き掛ける。

 ◇月100時間以上の時間外労働、建築・土木とも3割超◇

 調査結果を見ると、所定外労働時間は外勤建築、外勤土木、外勤事務(58・4時間)の順で長く、日建協が共通目標に設定している「平均月45時間以内」から大きくかい離。100時間以上の所定外労働を行っている人は外勤建築系の33・3%、外勤土木系の30・0%に達し、理由は「仕事量が多い」が最多だった。
 14年11月の休日取得状況を見ると、日曜日は全職種ともほぼ休めていたものの、技術系の外勤者は5日あった土曜日のうち2日程度、祝日も2日のうち1日しか休めていなかった。技術系の外勤者のうち、建築系、土木系とも休日の所定外労働時間が30時間を超えていた。日建協は「休日の取得が所定外労働時間削減に向けた近道」として、年2回の統一土曜閉所運動に粘り強く取り組む方針だ。
 工程上の休日を工事の発注機関ごとに調べたところ、国、自治体、独立行政法人、民間公益企業、マンションデベロッパー、その他民間企業のいずれも、休日が4週4休以下の割合が50%を超えた。デベロッパーと、その他民間企業は70%以上に達した。建築の作業所の70%以上は4週4休で工程が組まれていた。

 ◇潜在転職希望者がかなりの数に上る◇

 4週8休の実現など休日の増加に向け、日建協は適正工期の発注を発注者に働き掛ける考え。建設産業の魅力について、「創造の喜び」などを挙げる職員が多い一方、魅力を感じない理由には労働時間の長さや賃金水準が挙がった。20代の4割、30代の3割が転職を意識し、所定外労働時間が100時間以上の人の4割は転職を考えていた。
 「自分の子どもを建設産業に就職させたいか」という質問には、「就職させたい」との回答の割合が20年前と同じ約20%にとどまった。日建協は「建設産業の魅力の向上には長時間労働の解消が必要」として、労働時間の改善に一段と力を入れる考えだ。

2015年5月18日月曜日

【とにかく凄い人気・一部修正】奈良俣ダムの点検放流に若手記者M君が潜入した!!!



  ダムの点検放流に関する話題をたびたび取り上げてきた当ブログ。社内でも社外でもこのネタに興味を持ってくれる人は多いようで、ダム関連の情報を発信しないとなんだか落ち着かなくなっている(自意識過剰??)。そんな状況にあって、編集部内でもダム好きで知られる若手記者のM君が、群馬県みなかみ町にある奈良俣ダムで17日に行われた点検放流に潜入。現地の様子を取材してきてくれた。

水の白さがすがすがしい
都心から奈良俣ダムまでは、高速道路を使って車で3時間ちょいの距離。M君曰く「関越道のICを出てからは山道なので要注意。ダムに行くまでの間にあるバームクーヘン屋さんはお勧めです」とのこと。放流開始が午後2時だったので「1時間半前に現地に到着したが、管理事務所付近の駐車場はいっぱいで、手前の放流口下の駐車場もほぼ満車でした」という。
 ダム人気を肌で感じたM君がまず挑戦したのは、現地でしかもらえないダムカードを入手すること。普段は管理事務所で配布しているが、この日は人出が多く「職員の方が放流口の近くに机を出してカードを配布していた」そう。日々の仕事で鍛えた取材力を生かすM君は、迷惑を顧みず職員の方を直撃。すると「点検放流の日はカードが大量に出るので、こうでもしないと管理事務所に人が押し寄せてしまうので・・・」と貴重なコメントを入手した。改めてダム人気を痛感するM君。

ダムカレーは意外にあっさりしてる?
火傷しそうなダムマニアの方々の熱気を感じつつ、放流口から管理事務所まで戻ったM君は、今回の取材(観光でしょ、もはや)で楽しみにしていたレストランでダムカレーを食べることに。誰と行ったはあえて聞かないが、きっと行きの車内で「ダムカレーってのがあってさー、これが凄いんだよー」「ホントー、私も食べてみたい♡♡♡」という会話が繰り広げられていたと、ブログ管理人は勝手に想像する。
 そんなこんなでレストランに向かったM君は、そこで驚きの光景を目にする。なんとレストランの前に長蛇の列!!「あまりの人気で1時間待ちは確実だったみたいです」。さらにレストランの横には群馬県のゆるキャラ「ぐんまちゃん」も登場し、管理所事務所前の駐車場は、お祭り騒ぎ状態のカオス状態になっていたとかいないとか。ダムカレーのお次は、取材(完全に観光だろ)の記念に臨時の書籍販売コーナーで本でも買おうと思ったM君。「ダムカード大全集」を見つけて買おうとしたのだが、残念ながら売り切れだったそう。
 さて、肝心の点検放流だが「開始10分前ぐらいになると堰堤の上に200人くらいが集まってきました。(何かと話題の)ドローンも飛んでましたね」。迫力のある映像を押さえるためには、堰堤よりも放流口だと思い立ち、急遽車で場所を移動し、堰堤の下部に陣地を変更。「放流量が最大になる時間にはギャラリーは300人くらいに増えてました。年齢層も20代のカップルから60代の夫婦まで、家族連れを含めて幅が広かったです」とM君。ダムカードを配っていた職員の方に聞いたところ「春先から夏にかけて、ダムは観光地になりますね。点検放流は数あるイベントの中でも山場です」と、誇らしげに話していたという。

ぐんまちゃんも大ハッスル
気が付いたら今回の記事、かなりの長文になっていました。すいません。取材(つーか、観光だろ、デートだろ)に行ってくれたM君に免じてお許しを。行って楽しい見て楽しい。過去にはマイナスイメージが強かったダムも、暮らしに役立ち、観光にも一役買っていることが、お分かりいただけたと思う。
 ダムに限らず、有益な情報を今後も提供し続けるので、引き続き当ブログをご愛読下さい。ちなみに、日刊建設工業新聞はいたって真面目な新聞、報道機関なので、くれぐれもお間違えのないよう。ブログ管理人も普段はちゃんと仕事をしています。ついでにありがとうM君、次もよろしくお願いします。

【回転窓】沈没船と安全保障法案

 浅田次郎さんに「シェエラザード」という小説がある。戦争中に多くの人々を乗せたまま撃沈された船を引き揚げ、戦後の平和と繁栄の中で忘れ去られそうな真実に向き合おうとする人々の話だ▼小説のモデルは大型旅客船「阿波丸」。第2次世界大戦中、赤十字の救援物資を運ぶために、連合国側に航海の安全を保証されながら、台湾沖で米国の潜水艦に撃沈された。民間人を含む約2000人が犠牲になり、米国政府は責任を認めたものの、事件の真相は謎に包まれている▼先ごろ、戦艦武蔵とみられる船体がフィリピン沖で見つかった。発見したのは、マイクロソフト社の共同創業者のポール・アレン氏▼無人探査機に搭載したカメラを遠隔操作し、水深約1000メートルの海底に横たわる船の姿をインターネットで中継した。発見の知らせを受け、武蔵の元乗組員と遺族らが現地を訪れ、海底に眠る人々のために洋上慰霊祭を行ったという▼自衛隊の活動拡大を図る安全保障関連法案が閣議決定された。国会審議はこれからだが、現在の平和と繁栄の陰に、犠牲になった多くの人々がいることを忘れてはならない。

【凛】日本道路中部支店・前田紫帆さん


 ◇工事屋としてスタート、現場は楽しい◇

  生まれも育ちも名古屋。名古屋工業大学で土木工学を学び、日本道路へ。「土木はスケールが大きく、公共性の高い仕事。中でも『道路』は24時間・365日誰かが使っている。新しく造る時代からメンテナンスの時代に変わってきてはいるが、道路の仕事は常にある」と道路舗装業に飛び込んだ。
 研修を終え、初めて配属されたのは東名高速・足柄サービスエリアの駐車場改良工事。「大きな現場で、日々の仕事をこなすのに精いっぱいだった。でも現場は楽しかった」とものづくりの魅力に引き込まれた。その後も工事担当者として名古屋高速道路の舗装工事をメーンに数多くの現場に従事。上司とスコップ片手にテニスコートの路盤を造ったことも。
 13年6月から現場代理人の立場で国土交通省と名古屋高速の仕事を担当。今年1月には1級土木施工管理技士の資格を取得した。「『工事屋』としてのスタートラインに立てた」と喜びをかみしめる一方、「これからさらに仕事の幅を広げていきたい。甘えは許されない」と気を引き締める。
 監理技術者として初めて応札した工事は落札できなかったが、「コンクリート舗装など手掛けてみたい仕事がたくさんある。経験をどんどん積んで技術力を身に付けたい」と前を向く。
 次の目標は1級舗装施工管理技術者の資格取得と結婚。「道路業界を理解できる人と出会い、仕事と家庭を両立させる」と笑顔で語る。(まえだ・しほ)

【中堅世代】それぞれの建設業・94

コミュニティーの維持・再生もまちづくりの課題に・・・
◇多くの人との関わりを成長の糧に◇
 
  下町の木造密集地でネクタイを締め、スーツ姿で仕事をしていたら、誰からも信用されない-。
 公共機関の防災街づくり部門で働く平伸一さん(仮名)は、老朽化した木造住宅が密集するエリアで共同建て替え事業などによる不燃化の促進に取り組んでいる。敷地の集約に向けた用地買収交渉では、常に作業着姿で地権者宅を訪ねる。移動にも車などは使わず、地図を広げながら自転車で一軒ずつ地道に回る。
 こうしたちょっとした立ち居振る舞いが相手に親近感を与え、こちらの説明にも耳を傾けてもらえると考える。最近は仲良くなった住民らとざっくばらんな会話もできるようになった。
 子どものころから地図を見るのが好きだった。学生時代は列車に乗って知らない街を訪ね、そこで好物のラーメンを食べ歩いた。いろいろな街を見て回るうち、「その街で暮らし、働き、学び、遊ぶ人たちを幸せにする仕事に携わりたい」と思うようになった。
 今の仕事にはやりがいを感じているが、街づくりの難しさも痛感する。
 防災街づくりや再開発は、古くからの街並みを変えようとする行為でもある。そこで長年暮らしてきた人たちからすれば、簡単に受け入れるのは難しい。特に高齢の地権者の多くは「人生の大半を過ごした今の家で最後を迎えたい」と口をそろえる。それでも住民たちが「街づくりに協力したい」と言ってくれた時には、うれしい半面、責任の重さを感じる。
 単に建物の耐震性や耐火性を高めるだけでなく、そこで長年暮らしてきた人たちの思いやコミュニティーを維持することも重要だとあらためて気付かされる。
 再開発では、安全で快適な街の創出を目指す意志と同時に、事業の採算を確保することも重要だ。特に民間の開発事業者は慈善事業をするわけではないので、営利追求は当然のこと。しかし、そうした姿勢が前に出過ぎると、地権者らに不信感を抱かせ、合意形成が進まなくなる。
 都心部ではマンションの建設ラッシュが続いている。それがその街にとって本当に良いことなのか。「その街に住み続けたいと考える人たちのために、より良い暮らしの場を提供する。常にそれが事業の根っこになければならない」と思う。
 地域の防災力を高めるには、建物の不燃化・耐震化などのハード対策とともに、住民間の共助といったソフト面の対応強化も欠かせない。下町に残る住民同士のつながりやコミュニティーの強さは、防災活動でも大きな強みになると考えている。
 本格的な少子高齢化時代の到来で、コミュニティーの維持・再生は街づくりの大きな課題の一つだ。「下町の人情をくみ取れるバランスのいい防災街づくりを進めたい」。
 将来は日本だけでなく、世界中で街づくりを手伝いたいとの夢も描いている。夢の実現のため、今の仕事には直接役には立たないが、休日には異業種の人たちとの交流も兼ねて、英語でのグループワークのレッスンに通う。仕事でも、プライベートでも、多くの人と関わりながら、自己研さんに励む毎日だ。

【駆け出しのころ】竹中土木常務執行役員・牧野豊氏


 ◇現場での忘れらないひと言◇

  私と同じ年に入社したのはちょうど100人で、大阪の独身寮に2週間ほど泊まり込んで研修を受けました。研修を終えて名古屋支店に配属され、名古屋市内のシールドトンネル工事の現場に赴任しました。
 この工事には着工から竣工まで携わることができ、先輩から現場のことをいろいろ教わりました。新人の役割といえば、まずは測量です。掘削が始まると一人で夜間の施工管理を担当することになったのですが、自分の測量が間違っていたら大変なことになってしまうと考えると、非常に怖かったものです。それに電卓もまだない時代でしたから、現場で必要な計算はすべて筆算で行っていました。これも間違ってはいけないと、大変に緊張しながらやっていました。
 最初の現場も含め、若いころに働いた現場の上司や先輩からは公私ともに影響を受けました。今でも感謝しています。お世話になったある先輩からは、「貯金をしろよ」と何度も言われました。逆らう理由もなく、先輩がそこまで言うならと始めたのが、給料から天引きされる社内貯金でした。この助言がなければ、もらった給料をすべて使ってしまっていたかもしれません。ですから私はこの先輩のおかげで結婚できたと思っています。
 今年で入社して42年になります。このうち現場に勤務していたのは半分ほどで、ケニアのモンバサの現場に赴任し、家族と一緒に海外生活を送ったのもいい経験でした。そうした現場生活を振り返り、若いころに世話役の職人から掛けられた言葉で忘れられないものがあります。
 それは「牧野さん、始まりがあれば必ず終わりがあるから」と言われたことです。おそらく私は、現場で思い通りにいかないことがあり、周囲にも分かるくらいにイライラしていたのでしょう。その言葉を聞いて「そうか、頑張っていればそのうち終わるさ」と思われて、とても気が楽になりました。胸に染みる言葉でした。
 現在の施工現場は機械化などが進み、私たちが携わっていたころとは様変わりしています。でも、変わらないのは、現場が社員と職人のチームワークで運営されていることです。私も現場の責任者だった時には、和を乱すようなことに対しては厳しく怒っていました。
 それと、忙しい中でも何か楽しみを持って仕事をしてもらいたいと考えています。今は現場に行っても教えられることの方が多いのですが、機会があれば現場で働く若い人には「楽しんどるかな」と声を掛けています。
 (まきの・ゆたか)1973年日大生産工学部土木工学科卒、竹中土木入社。国際事業本部モンバサ空港改修工事副所長、名古屋支店工事部工務課長、同工事部長、同副支店長、取締役名古屋支店長などを経て、13年3月から現職。愛知県出身、64歳。

測量のために伐採した木々を運ぶ牛の横で同僚と(右が本人)

【サークル】YKKAP 東京野球部


 ◇「今シーズン中のトップリーグ入りめざす」◇

  YKKAPで野球に愛情を注ぐ有志社員が集まって約20年前に発足した「東京野球部」。現在は選手18人、マネジャー6人でチームを作る。営業や開発、管理など所属部門はさまざま。部門の垣根を越え、ベテランと若手が融合して「伸び伸びとプレーする」のがモットーだ。
 春と秋に、事業所のある東京都墨田区内で行われる軟式野球大会に定期的に参加している。約100チームが参加する大きな大会で、実力順に全7リーグがあり、上位リーグでは本格的な試合が行われている。
 社内の大阪・名古屋地域にそれぞれある野球チームとの交流戦も不定期ながら行っており、社員同士の交流にも活動が生かされている。
 「発足当時に比べると、野球経験者、野球が好きな若手社員が少ない」と嘆くのは、代表の大和田賢次郎さん。メンバーの高齢化問題を解決するため、社内報や口コミを利用して部員を随時募集。チームの若返りを図るとともに戦力の底上げも目指す。「野球で結果を残すことで、会社に元気を与えたい」という。
 現在、墨田区内で行われている大会では上から2番目のリーグに所属している。「何としても今シーズン中にトップリーグへの昇格を果たしたい」と語る口調にやる気がみなぎる。

2015年5月17日日曜日

【プロジェクト・アイ】松本市美鈴湖自転車競技場建設(長野県)/施工はNIPPOJV

最大傾斜36度のバンクを専用機で高精度舗装
 自転車でトラックレースを行う自転車競技場・競輪場。特殊な曲面で急勾配のバンクを持つこうした施設の舗装で世界トップレベルの技術とノウハウを有するNIPPOが、長野県松本市で自転車競技場の新設工事を手掛けている。1周333メートル、最大傾斜角度36度の走路を専用の舗装機械で施工する。特に自転車の走行に影響を与える表層の施工では、平滑性や密度の確保に細心の注意を払う。最大の山場となる表層の施工を無事に終え、仕上げの塗装工程に入る。

 ◇世界トップの技術駆使◇

 松本市はかつて、市内に「かりがね自転車競技場」を保有していたが、施設の老朽化と、同市をホームタウンとするサッカークラブ・松本山雅FCの練習拠点を整備するために解体。閉鎖していた浅間温泉国際スケートセンター跡地に新たな自転車競技場の整備を進めている。施工はNIPPO・松本土建JVが担当している。
 NIPPOは、自動車のテストコースやサーキットの設計施工を数多く手掛けており、オートレース場や自転車競技場・競輪場の走路舗装でも高度な技術と豊富な施工実績を持つ。国内では、アスファルト舗装による自転車競技場のすべて、競輪場の約80%の走路を施工してきた。走路の補修・改修工事もコンスタントに手掛けているが、自転車競技場の新設は同社でも久しぶりだ。元請では99年竣工の宮城県自転車競技場(宮城県大和町)以来16年ぶり。下請で施工した三郷町六郷自転車競技場(秋田県三郷町、04年竣工)から数えても11年ぶりとなる。
 建設地は松本市三才山1830。1周500メートルのスケートリンクがあった敷地で、管理棟と山に挟まれた横長の形状。この条件下で1周333・33メートル(3周で1キロ)、幅員7メートルの走路を整備するには、バンクの傾斜角を高くする必要があった。設計速度の秒速15メートルを満たすために最大傾斜角度を36度で設計。国内の自転車競技場では、泉崎国際サイクルスタジアム(福島県泉崎村)の38度に次いで2番目に急勾配なバンクとなった。

数々の現場で培った技術と経験が高精度施工を支える
 スピード競技用の自転車は、硬くて細いゴムのタイヤで、サスペンションがないのが特徴。選手は走路を全身で感じ、微妙な凹凸も敏感に捉える。このため走路には平滑性と密度が高い精度で求められる。NIPPOは今回、走路の構造を下から、▽凍上抑制層(再生砕石、厚さ460ミリ)▽下層路盤(切り込み砕石、200ミリ)▽上層路盤(石灰処理砕石、120ミリ)▽基層(粗粒度アスコン、50ミリ)▽中間層(特殊開粒度アスコン、40ミリ)▽表層(特殊密粒度アスコン、30ミリ)―の6層で設計。中でも基層、中間層、表層のアスコン層の石にこだわった。粒径を10ミリ以下(一般道は13ミリ以下)にし、表面がきめ細かく平滑で、密度の詰まった丈夫な走路に仕上げた。現地の石が鉄分を含む岩質だったため、さびの発生を危惧。選抜した石を持ち込んで長期を見据えた品質確保に努めた。
 同社は長年の技術開発と施工実績を通じ、▽アスファルトスタッカー(合材をフィニッシャーに連続供給する機械)▽アスファルトフィニッシャー▽ロードローラー▽サポーター(フィニッシャーとローラーをつりながら移動する機械)―の4種類で構成する専用の施工機械を保有している。正確な高さ管理を自動制御するシステムの装備、斜め移動に対応したエンジンや油圧の位置・角度、つりながらの作業に備え車体の軽量化など、さまざまな技術を結集した専用機だ。
 高い平滑性を求められる走路の舗装は、一定の速度を保ちながらトラック1周をノンストップで施工するのがポイント。最大20トンのアスファルト合材をためることのできるスタッカーを用いてフィニッシャーに合材を連続供給。フィニッシャーとサポーターのオペレーターが息を合わせ、一定のスピードを保ちながら敷きならす。

舗装工事が完了したバンク
 走路の密度を高める転圧作業では、ローラーとサポーターのオペレーターが綿密に連携して斜めの路盤を均一、着実に締め固めていく。最後のジョイント部(つなぎ目)は、手作業で平滑な面に仕上げる。同社が培ってきた技術力、総合力が生きる場面だ。競技規則では、トラックの周長について1キロ当たりプラス5センチ以内という精度が要求される。技術面を支える吉中保氏(北信越支店技術グループ技術課長)は「10ミリの石や5ミリの砂を使って1ミリ単位の精度を出している」と胸を張る。
 基層と中間層はそれぞれ2日間、表層は3日間をかけて走路を施工。4月23日には、4時間半の連続施工によって表層工程が終了し、走路が一つにつながった。仕上げの塗装(3層)も急斜面の上を人の手によって行われる。現場代理人の井上英樹氏(松本市美鈴湖自転車競技場建設工事事務所)は「精度や品質だけでなく、安全の管理もさらに徹底していく」と気を引き締める。

2015年5月16日土曜日

【しばらく控えようと思っていたのに・・・】水資源機構が広報誌に「ダムカレーMAP」

ダムに行きたくなりつつ、カレーも食べたい
 このブログでダムの話題をたびたび取り上げていたら、編集部内のある人から「◯◯さん、ダムネタに頼りすぎてない?」と厳しいご指摘が・・・。しばらくダムの話題は控えようと思っていたのだが、これだけは書かずにいられない、と思えるネタに遭遇したのでアップさせてもらう(Mさん、すまん)。
 ダムや水路などの整備、維持管理を担う水資源機構が毎月発行している広報誌「水とともに」。ダムに関わるさまざまな人のインタビューや情報が掲載されているこの冊子の4月号になんと!!!、「ダムカレーMAP」が掲載されている。
 水資源機構はダムのことなら何でも知っている、その道でもプロ中のプロ。当然、巷で話題のダムカレーも、どこにどのようなメニュが存在するのか、知っていて当然といえば当然の話だ。
 MAP掲載の経緯を広報担当の方に聞いたところ「話題になっているので一度まとめてみたかった」ことが理由とか。MAPで紹介しているのは、施設名に「水資源機構」と入った全国5府県のダムで食べられるカレーの数々。岐阜県の徳山ダム&横山ダム、群馬県の矢木沢ダムと奈良俣ダムなどなど、工夫を凝らしたダムカレーの詳細を写真とともに見ることができる。
 詳しい内容はご自分の目で確かめていただくとして、ブログ管理人が気になったのは矢木沢・奈良俣ダムの「みなかみダムカレー」。群馬県みなかみ町内の8カ所で食べられるそうで、7~11月には昨年好評だったダムカレーのスタンプラリーが再度開催する予定だという。
 あまり書きすぎるとみなさんの楽しみを奪ってしまうので、MAPが気になる方は水資源機構ホームページの広報誌コーナーに急げ!!!
 ちなみにダムカレーMAPだが、水資源機構の広報の方は「今のところ今回限りですが、新しいメニューが増えればまた考えたいですね」とか。

2015年5月15日金曜日

【住みたい街NO.1が変わろうとしている】東京都武蔵野市が吉祥寺駅周辺街づくり計画策定


 東京都武蔵野市は、JR中央線と京王井の頭線が乗り入れる吉祥寺駅周辺の再整備のあり方などを示した街づくり計画を策定した。駅周辺を四つのエリアに分け、地域特性に合わせて再整備手法を明示。老朽化した建物の共同建て替えや駅前広場の整備、市道の拡幅などの施策を盛り込んだ。各施策の具体化に取り組み、地域住民や来街者がより安全、快適に過ごせる環境整備を誘導していく。
 市が今回策定した街づくり計画は、吉祥寺駅周辺の中長期的な再整備方針「NEXT―吉祥寺」の後期計画(15~18年度)。前期計画(10~14年度)は10年3月に策定済み。市は前期計画に基づき、民間事業者と協力・連携しながら駅周辺施設の再整備に着手。南北自由通路の整備や京王吉祥寺ビルの建て替え、駅出入り口のバリアフリー化対策などが14年度までに完了した。
 前期計画の各種施策によって来街者が増加すると予想する市は、新たに後期計画を策定。駅周辺地域を▽セントラルエリア▽ウエストエリア▽イーストエリア▽パークエリア―の4地区=図参照=に区分し、それぞれのエリア特性に合わせて、より快適で魅力あふれる空間づくりを推進するための施策を明示した。

吉祥寺駅北口から伸びるサンロード商店街
吉祥寺のメーンストリートはいつも多くの人でにぎわう
セントラルエリアでは、飲食店や服飾店など小規模施設が密集し、大規模地震による広範囲の延焼被害が懸念されるため、老朽化した施設の共同建て替えを促進する施策を展開。その一環で、エリア内の市道190号線を拡幅する。拡幅整備のための用地買収に向け、地権者との交渉を引き続き進める。3月時点の用地取得率は71%。
 ウエストエリアでは、施設用途を制限し、商業施設の誘致やマンション開発を促進するための地区計画を導入する方針。容積率や高さ制限などの緩和措置も検討する。
 イーストエリアでは、市道298号線沿いに歩行者空間を確保するため、拡幅事業を行う。図書館など市の文化施設が集積する駅北側の回遊性を高めるのが狙い。このほか、駐輪場として暫定利用中の市有地の高度利用を図るため、活用策の検討に入る。

 ◇グランドデザインの改定作業に着手◇

 パークエリアでは、築50年の武蔵野公会堂(吉祥寺南町1の6の22、敷地面積1900平方メートル)と周辺の既存建物を一体的に再整備する方針。公会堂はRC造地下1階地上3階建て延べ約2500平方メートルの規模。エリア南側で市が駅前広場の整備を進めるほか、吉祥寺駅から井の頭恩賜公園の間を歩行者が安全、快適に歩行できるように、七井橋通りの拡幅事業も進める。
 市は前期計画と、今後取り組む後期計画の成果を踏まえ、駅周辺の将来像をまとめた「吉祥寺グランドデザイン」(07年3月策定)の改定作業に入る予定だ。