2015年6月8日月曜日

【東北の現場から】相馬西道路今田高架橋上部工(福島県相馬市)


市民が見守る中、橋桁のつり上げ作業が行われた
◇ダイナミックで繊細な作業展開◇

 東北地方整備局磐城国道事務所が福島県相馬市で進める相馬福島道路事業の一環で、常磐自動車道をオーバーパスする相馬西道路「今田高架橋(仮称)」の上部工橋桁架設作業が3日夜から4日早朝にかけて行われた。施工は高田機工が担当。750トンのオールテレーンクレーンを用い、工事関係者や市民が見守る中、迅速に架設接続を展開した。
 今田高架橋は、常磐道を挟んで東西に配置する延長約290メートルと約295メートルの7径間連結PCコンポ橋と、常磐道との交差部に当たる延長約198メートルの3径間連続細幅箱桁橋で構成する。今回、架設作業が行われたのは常磐道を跨ぐ延長約35メートルの橋桁部分。今年3月から4月にかけて施工された両サイドの箱桁と夜間工事で接続する。
 磐城国道事務所は東日本高速道路東北支社と連携、常磐道側を通行止めにして安全を確保する一方、相馬市の地域住民にも作業見学場所として現場隣接地を提供した。
 「橋桁は和歌山県の工場で製作された部材を搬入し、地組みしたもの。重量は架設部材などを含めて約215トン。これをつり上げるため、16輪の自走本体のほか、大型トレーラー39台に分割したオールテレーンクレーンを調達した。このクレーンの750トンという重量は国内最大級。別途200トンと60トンのクレーンを用意し、5日間かけてクレーンを組み立てた」
 工藤金充磐城国道事務所相馬出張所長が、見学にやって来た市民に工事の概要を説明する。長さ70メートルのブームを持つクレーンを見上げる市民の中には、5月30日に開かれた日中の見学会で、自走本体上部に乗車体験した人もいた。
 東日本高速道路は午後9時を区切りに、常磐道・相馬IC~南相馬IC間を翌朝午前6時までの期限で封鎖。ただ直前に通過した車両が同区間を走りきるまで20分程度を要することから、無線による相互連絡で最終通過の確認を取り合う。

 ◇大型橋桁を夜間つり上げ架設◇

 3日夕、相馬市域は一時的に通り雨があった。作業開始時刻までに雨は上がっていたが、上空には強い風が吹いている。高田機工の塚本和志所長が最も神経をとがらせるのは風速の変化だ。
 「3日朝の時点で気象庁に問い合わせたときには、風速11メートルが予測されていた。風速10メートルを超えれば安全上、作業はできない。午前中は情報収集で緊張したが、午後以降、風速は7メートル以下と確認でき、予定通りの工程で進められる」
 塚本所長は通行遮断、橋桁部材つり下げポイント、設置位置の状況などすべての安全点検報告を受け、午後9時45分につり上げ開始の指示を送る。
 見学場所には続々と市民が集まり始めていた。カメラの三脚を固定する人も多い。高田機工の職員が市民のためにいすを並べて案内する。クレーン本体のエンジンが始動すると、市民の会話がやんだ。
 重量215トンの橋桁が上がり始めた。橋桁は慎重な速度でつり上げられ、時計回りで常磐道の上空を移動、15分の短時間で設置位置まで運ばれた。橋脚上部ではミリ単位の微調整を加えながら、接続点へのつり降ろし作業に移行する。
 作業開始から1時間後、接続完了の連絡が塚本所長の端末に入った。さらに確認作業の後、各部のボルト締結が始まる。午後11時、工藤出張所長から「作業順調」の確認コールが出された。
 「ダイナミックであると同時に繊細な作業。今回は風速の推移を見極めることに気を使ったが、これまで施工した数々の橋梁での経験が、その都度役に立つ。工事にご理解とご協力をいただいた地域の皆さんにも感謝している」。塚本所長は安どの表情を浮かべながらも、次の工程に備えてチェックリストの確認に余念がない。
 4日未明。前日の降雨の影響からか気圧が変化、明け方にかけて風が巻き始めた。午前6時、通行規制が解かれ、新たに架けられた橋桁の下をくぐって、常磐道の往来が始まる。工事関係者の連携、的確な判断こそが、「ダイナミックで繊細な」架設作業を成功に導く。 (国土交通省・東北整備局磐城国道[事務所)

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