2015年6月12日金曜日

【回転窓】職人の心温まる物語


 色の魔術師「塗装工」、高層ビルや橋の工事は「鳶(とび)職」の独壇場、建物を強くして人の命を守る「鉄筋工」、小さな力で大きな機械を操る「オペレーター」…▼NPOを主宰する降籏達生さんの編著『建設業で本当にあった心温まる物語III』(ハタ教育出版)には、建設職人の「技」をめぐる65の物語がつづられている▼印象に残ったのは塗装工の物語。片付けや雑用ばかりの入社間もない若者が先輩に言い渡された仕事は、お寺の壁や柱の下地処理。雑用の延長とも思えるものだったが、塗装の仕上がりを見た住職の口から出た言葉は「下地を丁寧に処理してくれましたね」。下地処理が塗装の基礎であることを知り得たエピソードである▼過去に土木技術者だった降籏さんがライフワークとして取り組む企画は、建設の仕事をよく知らない人たちにその魅力を伝えるのが狙いだ。回を重ねる活動は、既に「IVの作業にも入っている」とか▼この取り組みに賛同した地域もあり、1月には「沖縄編」の心温まる物語も登場した。降籏さんは追随する各地の活動を期待。「地域再生のきっかけづくりに」と呼び掛ける。

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