2015年6月25日木曜日

【東北の現場から】市民文化会館建設工事(福島県白河市)

 

16年3月の完成へ工事は佳境を迎えている

 ◇遮音性確保に最大限配慮◇

 福島県白河市のJR白河駅前で、大規模なコンサートや演劇を行える「(仮称)市民文化会館」の建設工事がピークを迎えている。現施設が老朽化したことから、駅前の線路沿いに最新の防音設備、音響設備を備える多機能ホールを移転・新設する。施工は大成建設・兼子組JVが担当。昨年3月に本格着工し、これまでに建て方を7割以上終えた。全体の進ちょくは5割超。来年3月の完成を目指し、工事が後半戦に入る。
 建設地は同市会津町1の17ほか。JRの操車場跡地を市が買い取り、市民が文化・芸術に触れられる新たなホールの建設に着手した。事業には社会資本整備総合交付金を充当。16年度内の開業を目指している。
 新施設は、大きく分けて1104席の大ホールと321席の小ホールで構成する。規模は地下1階地上4階建て延べ9783平方メートル。構造はS・RC・SRC造。基本・実施設計は日本設計が手掛けた。現市民会館(手代町22の1)の座席数は1336席で、福島県南部では最大級。移転後は1425席と規模がさらに拡大する。敷地の西側に大ホール、東側に小ホールを配置し、それらの中間に中庭や楽屋を置く。建屋の南側には正面玄関のほか、店舗や楽屋、練習室などを設ける。

 ◇鉄道線路沿い、地中壁で振動対策◇

 敷地のすぐ北側をJR東北本線の線路が走り、建物とは最も近いところで10メートル程度しか離れていない。このため防音・振動対策を徹底し、遮音性を最大限に高めたことが施設の最大の特長だ。線路を貨物列車が頻繁に走行するため、列車の振動を最小限に抑えられるよう建物北側に防振地中壁を巡らせた。
 二つのホールの内装床と壁、天井には防振ゴムを挟み込む浮き構造を採用し、コンサートと音楽の練習を同時に行っても相互に干渉しない防音性を確保した。空調の配管内にも消音装置を施し、管を通って余計な音が伝わらないようにする。ホールの音響性能にも徹底的にこだわった。コンピューターで何度もシミュレーションを行い、音の響き方を計算。楽器などの反射音が室内にまんべんなく広がるよう、壁・天井の最適な角度と材料を割り出した。大ホールは、2階の客席両脇を前方に張り出させる「もみあげ式」の配置とし、聴衆が演奏者と一体となりライブを鑑賞できるようにした。
 建設地の東側には、11年に完成した図書館がある。図書館も建設中のホールも、城下町のイメージに合うよう勾配屋根と白壁を採用。周辺への圧迫感を減らすため低層の建物としている。新たなホールが完成すれば、白河駅周辺が市民の学習や芸術鑑賞の意欲を満たす文化・芸術の集積地として生まれ変わる。駅を挟み反対側にある白河小峰城跡地などとともに、観光交流を促す効果も期待される。

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