2015年6月27日土曜日

【ストレスチェック制度ってなに?】12月から一定規模以上の事業所に義務付け/Q&Aでポイント紹介

ストレスチェック制度の流れ
うつ病などメンタル面の不調を未然に防ぐため、企業など50人以上を雇用するすべての事業者に対し、従業員の心理的負担の調査を義務付ける「ストレスチェック制度」が、施行まで半年を切った。影響が大きいとされる新制度だが、企業はどのような準備をすればよいのか。建設業での留意点を含め、中央労働災害防止協会(中災防)の専門家にポイントを聞き、Q&A形式でまとめた。

 ◇対策は「重要な経営課題」◇

  ストレスチェック制度とはそもそもどういうものか。
  14年6月に公布された改正労働安全衛生法で、常時50人以上を雇用する事業者に義務付けられた。今年12月1日に施行される。50人未満の事業者は努力義務となっている。所管する厚生労働省は、対象事業所のすべての労働者が受けることが望ましいとしている。費用は企業が負担する。
 事業者は医師や保健師などに依頼し、調査票を使って実施する。結果は本人の同意がない限り、事業者に伝えることは禁止されている。
 ストレスチェックで「高ストレス者」と評価された労働者から申し出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施しなければならない。
 ストレスチェックは年1回以上行う。施行日から計算すると、1回目は16年11月末までに実施する必要がある。複雑な制度で、慎重な運用が必要なため、「企業の担当者は厚労省が5月にまとめた実施マニュアルを手元に置いた方がよい」と中災防の担当者はアドバイスしている。
  企業は何を準備すればよいのか。
  まず急いだ方がよいのは、ストレスチェックを実施してもらう医師や保健師などの確保だ。事業の実態を理解している産業医が適しているが、建設業の産業医には外科や整形外科の医師が多く、対応できるかどうか、早めに相談した方がよいだろう。精神科医はそもそも数が少なく、いない地域もある。
 制度を就業規則に反映させたり、実施体制の整備に向けて労使で作る労働衛生委員会で協議したりする必要もある。
 健康診断と同時に実施することもできるが、中災防の担当者は「健康診断とストレスチェックが重なると事務処理の負担も大きくなるので、そうした点を考慮して実施時期を決めた方がよい」と言っている。
  ストレスチェックと面接指導を終えた後の対応は。
  面接指導での医師の意見を踏まえ、就労場所の変更や就労時間の短縮など必要に応じた措置を講じる。
 さらに、部門や支店など組織ごとにストレス状況を分析し、ストレス軽減に向けた職場環境を改善することも必要だ。
 今の制度では努力義務だが、昨年12月に厚労省の検討会がまとめた報告書は、組織分析に基づく職場改善について将来の義務化の必要性に言及しており、近い将来、義務化される公算が大きい。

 ◇医師・保健師確保を◇

  ストレスチェックを実施しなかったらどうなるのか。
  罰則はない。ただし、例えば従業員のメンタル不調を放置した結果、重大な事態を招き、本人や遺族から訴訟を起こされた場合、裁判で不利に働く可能性がある。
  建設業での留意点は。
  義務化の対象は厳密には「事業場」であり、従業員が50人未満の支店・営業所は対象にならない。ただ、50人以上いる本社や支店の従業員との間で差が生じてよいか、慎重に検討する必要があるだろう。
 メンタル不調から集中力が散漫になり、現場でのヒューマンエラーにつながる懸念もある。「ストレスチェックは現場の災害防止にもつながる」との見方がある。
 元請業者は下請業者の従業員に対する義務はないものの、下請業者がストレス軽減のため現場の就労改善を図ろうとすれば、元請業者の協力が不可欠になる。中災防の担当者は「メンタル不調対策について、元請と下請で話し合ってほしい」と呼び掛けている。
  ストレスチェックが義務化された背景は。
  メンタル不調による疾患は、早期発見による早期治療がカギを握る。ただ、個人ベースでの対応には限界がある。精神障害の労災請求件数は右肩上がりで、業種別の支給決定件数を見ると、総合工事業が5位、設備工事業が11位に入っている。
 企業にとっての損失も大きい。メンタル不調になると、長期にわたる休職の末、退職に追い込まれる従業員が多いからだ。労働政策研究・研修機構の調査によると、メンタル不調になった人のうち、最終的に退職したのは34%。休職や復職を繰り返すなど通常のように働けなくなった人を合わせると50%弱に上る。
 
 ◇メンタル不調は未然防止が重要◇

 中災防の担当者は「メンタル不調はいかに未然に防ぐかが重要。上司が不調に気付いてからでは遅い」とし、「仕事への影響が減ってくれば、企業の活性化につながる。企業の重要な経営上の課題と捉えてほしい」と強調している。

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