2015年6月7日日曜日

【プロジェクト・アイ】新名神・切畑トンネル工事(兵庫県猪名川町~宝塚市)/施工は前田建設JV


 

中流動コンクリートで覆工が進む坑内
 2016年度開通に向けて急ピッチで工事が進む新名神高速道路の大阪府高槻市~神戸市間約40・5キロ。兵庫県内で最大工区となる猪名川町猪渕と宝塚市玉瀬を結ぶ「切畑トンネル」(約2キロ)を前田建設・東洋建設・西武建設JVが施工している。大量の掘削土を効率よく搬出し、高さ70メートルの高盛り土構造となるサービスエリア(SA)の造成に使うためベルトコンべヤーを導入。覆工コンクリートや吹き付けコンクリートには環境に配慮した材料を用いながら高品質を実現している。

 ◇ベルコンで掘削土効率搬送◇

 新名神の高槻~神戸間は、並行する名神高速道路と中国自動車道の交通量増加による混雑を解消し、ネットワーク機能を向上させるのが目的で、09年10月に着工した。
 今回の工事は、西日本高速道路関西支社新名神兵庫事務所が「新名神高速道路切畑トンネル工事」として発注。同事務所の管轄区間(延長約20キロ)のうち最長となる4・4キロ区間を施工する。
 暫定4車線の本線工事で、トンネル部は上り線が1975メートル、下り線が2007メートル。掘削断面は76~99平方メートル、仕上がり断面は約88平方メートルで、土かぶりは40~60メートルとなる。上下線一体の宝塚SA(仮称)と橋梁下部工なども含まれる。16年3月の完成を予定している。宝塚SAは、トンネル工事や切り土区間などの発生土を埋め立てて整備する。必要な土量はSA内だけで360万立方メートルに上る。現場で作業を指揮する前田建設の森英治統括所長は「ちょっとしたダムの湛(たん)水量と同じぐらいの土量。自工区で調達できるのは80万立方メートルで、多くを他工事(7~10工事)から受け入れている」と話す。

SA計画地を走行するダンプ。背後にベルコンが連なる
 トンネル工事で出るずりの搬出には、連続ベルコンシステムを採用した。発破を掛けた切羽で出たずりを、ショベルでクラッシャーに投入して細かく砕き、テールピース台車からベルトに載せて坑外へ搬送する。「1本のベルトがZ形に折りたたまれた構造。一度に150メートルまで延伸可能で、ベルト1本で連続して搬送できる」と森統括所長。
 ベルトは一般的なサイズの幅610ミリを750ミリに広げ、1時間当たり300トンを搬出できるようにした。早期開通に向けた掘削サイクルの短縮を実現し、ダンプを利用しないため坑内環境の改善にもつながっているという。
 坑口からSAまでの動線には深い谷がある。土を運ぶダンプが行き来できるようにするため、隣接工事で設置される予定の仮桟橋を土運搬に利用することを提案。運搬スピードを上げるため、トンネル坑口付近からSA中心部までの延長2キロのベルコンも通した。坑外ベルコンは幅1050ミリで、運搬量は1時間当たり600トン。民営化前も含めて高速道路会社の工事では過去最大の規模という。

 ◇吹き付けコンクリに鉄鋼スラグ初採用◇

 同工区の東西から10トンダンプでSAに土が運搬されてくる。現在は1日1200~1300台が往復している。「このベルコンは1分間で10トンダンプ1台分の運搬能力があるため、ベルコンの設置によりダンプの渋滞を抑制できている。同時にダンプ台数を減らすことで二酸化炭素(CO2)削減にも大いに役立っている」(森統括所長)。
 工事が先行する上り線のトンネルの覆工には、火力発電所で発生するフライアッシュ(石炭灰)を使用した中流動覆工コンクリートを採用した。充てん性、耐久性に加え、美観にも優れるのが特徴で、03年に同社のトンネルに初適用して以来、今回で3件目となる。流動性が高く、移動型枠(セントル)は通常より高い圧力を受けるため、セントルを通常より分厚い構造にしている。
 近畿地方では、瀬戸内海の海砂採取規制などで天然の骨材が枯渇している。このため、掘削直後の吹き付けコンクリートには神戸製鋼所から排出される鉄鋼スラグを4割ブレンド。天然資源を節約すると同時にコスト抑制も実現した。細骨材への鉄鋼スラグの使用は国内で初めての事例になるという。
 坑内の明かりには台湾の企業に特注したLED照明を導入した。作業に有効な明るさを確保しつつ、消費電力は5分の1に抑えられている。
 工事の進ちょく率は4月18日時点で40%で、トンネルは上り線が1067・7メートル、下り線が92・4メートルまで掘り進んだ。森統括所長は「80万時間無災害を継続している。工種が多岐にわたる工事だが、無災害で完成を迎えたい」と話している。

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