2015年6月29日月曜日

【回転窓】職人の心意気と聖火台

 1964年の東京五輪で使用された聖火台が、東日本大震災の被災地、宮城県石巻市の総合運動公園に移設された。聖火台があった国立競技場の建て替えに伴い、「復興のシンボル」として貸し出された▼聖火台は鋳鉄製で直径と高さが約2・1メートル、重さが約2・6トン。前例のない規模だったので大手企業にも引き受け手がなく、埼玉県川口市の鋳物師、鈴木萬之助、文吾親子が製作した▼製作期間3カ月という切羽詰まった状況に採算を度外視して引き受けたという。親子を支えたのは職人の心意気。昼夜兼行で作業に没頭したが、最初は鉄を鋳型に流し込む作業がうまくいかず、精根尽きた萬之助さんが他界。文吾さんが志を引き継いで納期に間に合わせた。五輪の開会式では、全世界が見守る中、聖火が無事ともされた▼新国立競技場の建設で多くの課題が浮上している。技術的難しさもあり、期限までの完成を危ぶむ声もあるが、かつての聖火台のように日本の建設業の技術と心意気で完成させてほしい▼石巻市では週末、「復興マラソン」が開かれ、職人の心意気が詰まった聖火台が市民にお披露目された。


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