2015年6月5日金曜日

【帰ってきた…観覧車】東急プラザ蒲田リニューアルの裏側

開業当時の東急プラザ蒲田の屋上。観覧車に乗るため、多くの人が訪れた
(資料提供:ナムコ)
 かつては多くの百貨店の屋上にあった観覧車。東京都内で唯一残っていた「東急プラザ蒲田」(大田区)の屋上観覧車は、蒲田のランドマークとして半世紀にわたり多くの人々に親しまれてきたが、昨年3月、ビルのリニューアル工事に伴って営業を停止。当初は観覧車の撤去を含め新たな屋上計画を検討していたが、地元住民の声に応えて復活した。さらに屋上全体も改修し、地域住民の新たな憩いの場として生まれ変わった。

 ◇観覧車撤去を惜しむ声◇

 「子どもの時に乗った思い出ある観覧車を残してほしい」―。1968年の東急プラザ蒲田開業以来、長年地元住民や愛好家に親しまれてきた屋上観覧車。「設計当初は老朽化した観覧車の撤去も検討しており、観覧車の跡地に噴水が出る遊び場を作る予定で図面も描いていました」。ビルの改修設計を手掛けたジェイアール東日本建築設計事務所商業設計本部第七設計部主幹の林邦昭さんはそう振り返る。
 しかし昨年3月、営業停止直前に無料開放したところ、最後にあの観覧車に乗りたいという人が殺到。観覧車存続を望む多くの声を受け、リニューアル後も引き続き活躍してもらうこととなった。車体を虹色に塗り替えるとともに、呼び名も約3000通の公募から選ばれた「幸せの観覧車」に改称。現在でも多くの人々に蒲田のランドマークとして親しまれている。
 蒲田駅に直結する東急プラザ蒲田は昨年、約25年ぶりに大規模リニューアルし、屋上を含む7フロアの内外装を改修するとともに耐震補強も実施。10月にリニューアルオープンした。
 設計はジェイアール東日本建築設計事務所、施工(建築)は大成建設が担当した。リニューアル前の屋上はゲーム機などが並ぶ古びた遊園地で、利用者も常連客が中心だった。「平日は主婦や子ども連れのママ、休日は買い物に来た家族やカップルが遊びたくなる空間づくりを目指した」(林主幹)という新たな屋上は、明るく幅広い世代が行ってみたくなる仕掛けがたくさん。
 ウッドデッキや芝生にはベンチやテーブルが並び、子どもが乗って楽しめる電車型の遊具もある。子どもがのびのび遊べる公園が少ない都会で、安全な遊び場としてにぎわっている。昼間はもちろん、夜はビアガーデンとして若者やサラリーマンも楽しめるよう工夫した結果、館内への回遊性も高まったという。

リニューアル後の屋上。観覧車は装いをあらに、今も来場者の心を和ませている
◇新たな憩いの場として再生◇

 今までも多くの駅ビルや商業施設などの改修プロデュースを手掛けてきたジェイアール東日本建築設計事務所。井上和也執行役員商業設計本部副本部長は今回のプロジェクトについて「にぎわいと集客を創出し、施設に貢献できる屋上づくりを目指した」と話す。
 豊富な屋上設計やマーケティングに関する知識・ノウハウを活用し、小型電気自動車メーカーと共同で新たな屋上設置型キッチンカーを開発した。エレベーターを経由して屋上に運ぶことができるのが特徴で、通常は屋上に厨房設備を設置する際に必要な建築許可申請などが必要ない。さらに、入れ子構造の車体を拡張し、電源・給排水設備を接続するだけで店舗の厨房として営業できる。
 井上副本部長は「屋上エリアの集客力を高めるツールとして、ほかの商業施設でも導入していきたい」と話している。

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