2015年7月14日火曜日

【回転窓】水と湯






 7月前半は、梅雨前線と台風の影響で東日本から西日本にかけてはこの時期らしいぐずついた天気が続いた。日照時間が記録的に少なかった地域もあるようだ▼日本はアジアのモンスーン地帯にあるので、日本語には雨や水、あるいはそれらに関係する語彙(ごい)が豊富である。雨を表す言葉なら、春雨、五月雨、梅雨、夕立、時雨…といくらでも出てくる。水に関する言葉もしかり▼世界の主要言語の中で、水と湯にまったく別の単語を当てるのは珍しいと故・金田一春彦さんの『日本語』(岩波新書)に教えられた。湯を表すのに英語は「hot water」、中国語は「開水(カイシヨイ)」で、どちらも水の一種。中国語の「湯(タン)」はお湯ではなくスープのことだ▼日本語に「湯」という単語が別にあるのは、日本が「世界で有名な温泉国だから」と金田一さんは書いている。自然の恵みとは誠にありがたいものである▼気象庁は先週、6月末にごく小規模な噴火が確認された箱根・大涌谷の噴気孔を今後は「火口」と呼称すると発表した。夏の書き入れ時に地元は気が気ではなかろう。豊かな湯を生む火山の平穏を願うばかりだ。

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