2015年8月12日水曜日

【鉄道が地域を変える】開業10周年迎えるつくばエクスプレス

05年に開業したTXは、沿線地域開発の起爆剤になった
(写真提供:首都圏都市鉄道)
◇沿線開発で人口増加、個性豊かな街づくり進む◇

 東京・秋葉原~茨城県つくば市間(延長58キロ)を45分で結ぶ「つくばエクスプレス(TX)」が24日、開業から10年の節目を迎える。TXの沿線では、自治体や都市再生機構などが土地区画整理事業を展開。区画整理で創出された3000ヘクタールもの用地で、沿線自治体による個性豊かな街づくりが進んだ。TXの開業以来、沿線の定住人口は増加を続けている。
 TXの利用者数の推移を見ると、現在の1日当たりの平均乗降客数は、開業初年度(05年度)の15万7000人から約2倍の33万人強(15年3月時点)に増加した。秋葉原駅だけ見ても、約10年間で開業時の1・7倍(約6万人)にまで乗降客数が拡大。「当初はこんなに乗降客が多くなるとは思っていなかった」と秋葉原駅がある東京都千代田区の石川雅己区長は話す。TXの整備とともに進んだ沿線開発による人口増加が、そのまま乗降客の増加につながった形だ。
 沿線自治体では、TXの駅周辺の人口増加が顕著で、千葉県柏市では「柏の葉キャンパス駅」と「柏たなか駅」がある北部中央・東地区の定住人口が2250人(00~01年の工事施行認可時)から約4倍の9151人(14年)に増加。他の自治体でも軒並み人口増加が続いている。

 ◇人の呼び込みに自治体もあの手この手◇

 千葉県流山市の井崎義治市長は、沿線の中で「流山を『売れる街』にする」と意気込む。同市は「都心から一番近い森のまち」をコンセプトに、区画整理事業で失われた緑の回復を街づくりの仕組みに取り入れ、緑豊かで良質な住宅街としてのブランドを確立。他地域から着実に人を呼び込んでいる。
 このほか柏市では、柏の葉キャンパス駅周辺で、三井不動産が主体となって商業施設や集合住宅の開発を展開している。秋山浩保柏市長は「三井不動産が街づくりの観点でさまざまな施設整備を進めているので、統一感のある街並みが形成されている」と評価する。
 研究機関が集積するつくば市は、これまで市を「科学技術の街」として国内外にアピールしてきたが、今後はそれに加えて「文化・芸術やスポーツを主軸に置いた街づくりを進める」(市原健一つくば市長)方針だ。その一環で延べ15・8万平方メートルの総合運動公園の整備事業を計画している。
 他地域から人を呼び込むため、沿線自治体は近隣自治体との差別化を図り、特色ある街づくりに知恵を絞っている。まだ構想段階の開発事業も多く、TXを活用した沿線の街づくりはこれから本番を迎える。

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