2015年8月17日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・106

発注者のニーズに適切に応えるのも建設会社の責務…
◇ものづくりの醍醐味伝える◇

 発注者側のものづくりへのこだわりは、時には現場を管理する施工者の頭を大いに悩ます。しかし、より良い施設を築き上げるという共通目標の下、発注者のニーズには可能な限り応えるのがゼネラルコントラクターの役目-。
 ゼネコンで商業・業務施設の建築現場を中心に施工管理を担当してきた鈴木誠司さん(仮名)。発注者からの急な計画変更の要請にも、迅速かつ適切に対応することが自社のブランド力の向上につながると考えてきた。

 受・発注者の関係は、仕事を出す発注者がどうしても優位で、契約関係も片務的になりがち。だが、鈴木さんは「現場が動きだせばごちゃごちゃ考える余裕もなくなる。同じ現場でものづくりを進める担当者同士、少しでも良いものを、早く、一定の予算内で完成させようという仲間意識が芽生える」と話す。
 何もないところから、地域のランドマークを創り出すデベロッパーの仕事に魅力を感じていた鈴木さん。二十数年前の就職活動中にはデベロッパーも志望した。「最終的には、現場にこだわり、ものづくりの醍醐味(だいごみ)を技術者として味わいたい」との思いが勝り、今の建設会社への入社を決めた。
 ここ数年、商業・業務など複合型の大規模施設の開発事業の現場が続き、デベロッパー側の担当者との付き合いも多くなった。景況が改善し、企業の投資意欲も高まる中、デベロッパー各社も開発投資に積極姿勢を見せる。多くの案件を抱え、建設会社と同様に現場担当者のやりくりに苦労しているといった声もよく耳にする。

 今の現場には、事業主のデベロッパー側から30代後半の責任者と20代後半の若手の2人が主担当として来ている。「若いのに大きなプロジェクトを任され、マネジメント力も高い。個人の能力の高さは素晴らしい。一方で、相対する施工者側は、事業者側のマンパワー不足を補うため負荷も大きくなる」。
 特に、数百に上るテナントの要望を受けて、事業者側も開業ぎりぎりまで細かな施設整備・運営計画の修正・変更を求めてくる。「ゼネコンに何でもお任せの時代ではない」と考える施主も多くなり、資材調達や設計・施工などあらゆる面で意見を主張してくる。
 現場を切り盛りする施工者側の人材不足は深刻だ。事業主やテナントとの交渉業務には、畑違いのサービス業から転職してきた交渉能力の高い社員などを配置する。技術職員の不足を補うため、それぞれの場面ごとに個々の専門能力を見定めながら人材の有効活用を図る。
 大現場に見合うレベルの高い職人を集めるのも一苦労だ。現場管理に関するカリキュラムを充実させ、現場内で教えながら送り出すことで、「何とか一定の品質管理レベルを確保している」。

 商業・業務系の施設はテナントのビジネスに関わる情報も多く、現場関係者には施設内容などについて箝口令(かんこうれい)が敷かれることもある。
 「商業系は特に守秘義務の契約を交わさなくても、出店内容を口外しないことは受発注者間の慣習」と鈴木さん。ものづくりの醍醐味と合わせ、こうした長年の決まりごとなどを、若い世代や建設業の経験が浅い人たちにきちんと伝えていくことも、中堅世代の大きな使命と感じている。

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