2015年10月9日金曜日

【回転窓】庶民感覚忘れずに


 夏目漱石が大正3年に学習院大学で行った講演録に「立派な先生に接している諸君が、私のようなものの講演をお聞きになろうというのは、美食に飽いた結果、目黒の秋刀魚(サンマ)が一寸味わって見たくなったのではないか」とある▼「目黒の秋刀魚」はよく知られた落語の演目。江戸・目黒で庶民の食べる焼きサンマのおいしさに感動した殿様が、別の日に蒸されたまずいサンマを出され、仕入れ先が日本橋魚河岸と分かると「サンマは目黒に限る」と下げる▼海のない目黒でサンマが捕れるはずもなく、漱石は、庶民の食文化など市井の暮らしに疎い権力者を風刺した落語を介して、社会に出て行く学生に庶民感覚の大切さを説いたようだ▼政道批判はいつの時代にもあるが、庶民の政治への関心は常に身近なところにある。最近でいえば、バターの値上げ、天候不順による野菜の高値、そして他国漁船による公海上の乱獲で高騰するサンマあたりか。賃金が上昇しても物価高で相殺されてはかなわない▼第3次安倍改造内閣が発足した。入閣した大臣には庶民感覚を忘れず、的確な政策の実行をと願いたい。

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