2015年10月14日水曜日

【世界には膨大な需要がある】新興国インフラ整備、投資額の倍増必要/世銀が研究報告


 新興国を中心とした世界のインフラ需要は、実際に投資できる額を大きく上回って拡大を続けている。世界銀行がこのほど公開した研究報告によると、2020年までの新興・発展途上国のインフラ需要は年間8360億ドルに上るという。必要額と実際の投資額の差は4520億ドルで、投資額を大幅に増やす必要があると指摘している。報告書は、145の新興・発展途上国のインフラストックデータを分析した。将来のインフラ需要を予測する先行研究は数多く存在するが、これまでの手法を元に最新のデータを加え新たに検討した。


 ◇新興・途上国需要、2020年まで毎年8360億ドル◇

 報告書によると、14~20年の期間に新興・途上国のインフラ整備に必要な年間8360億ドルのうち、需要が最も大きいのは南アジアで、3090億ドルと見積もられている。東アジア・太平洋地域が2120億ドル、中南米・カリブ地域が1410億ドルでこれに続く。報告書はさらに、インフラの維持・管理費は全需要額の半分に達すると予想。この数値には既存の老朽インフラの更新費用は含まれていないという。

 需給ギャップを見ると、地域別では、南アジアが2410億ドルで最大。次に中南米・カリブが1000億ドルで続いた。東アジアだけは実際の投資額が需要を上回ったが、これはインフラ投資額が他国を圧倒して大きい中国が含まれているためだ。同地域の現状をより正確に把握するため、報告書では中国を除いて計算。その結果、東アジアの需給ギャップは520億ドルだった。新興・発展途上国の需給ギャップを合計すると4520億ドルとなり、研究グループは、需要を満たすために各国は投資額を倍増させる必要があると結論付けた。

 長期的なインフラ需要は、先進国を含めるとさらに膨大な金額になる。プライスウオーターハウスクーパース(PwC)は、全世界のインフラ投資額は12年の4兆ドルから毎年6~7%増加して2025年には年間9兆ドルに達すると予測した。投資は欧米からアジアにシフトしており、中国がけん引する東アジア・太平洋地域の投資が25年までに世界の6割以上を占めるようになるという。新興国では経済成長や都市化の進行、先進国では高齢化など人口動態の変化が全体のインフラ投資を引き上げると分析している。

 PwCがこのほど発表したリポート「Assessing the global transport Infrastructure Market Outlook to 2025」は、全体の約3割を占める交通インフラ投資を取り上げ、14~25年の間に年平均5%ずつ成長すると見積もった。地域別の成長率ではサハラ砂漠以南のサブサハラアフリカが年11%でトップだが、投資シェアでは東アジアが最大。交通インフラ投資は14年の5570億ドルから25年には9000億ドルへ増加するという。

 先進国のインフラ投資の伸びは全体的に緩やかだが、英国やスペインなど西欧州では鉄道分野の成長が期待されている。中南米は、道路を筆頭にあらゆる分野で投資は拡大基調で、輸出産業の成長などを背景に港湾分野への投資が目立つとした。旧ソ連・東欧諸国はこれまで交通インフラへの投資に積極的ではない地域だったが、資源輸出国を中心に港湾などで投資が拡大すると予想した。

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