2015年11月2日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・115

法律や新制度も浸透しなければ意味をなさない
 ◇どこでも通用する人間でありたい◇

 「行政からの広報が不足していると感じている。正確に、ありのままに伝えることが必要だが、そういう思いで仕事をしている人は少ない」

 そう語る須藤三男さん(仮名)は、20年以上のキャリアを持つ行政マン。そのうち、建設業行政に通算で約10年関わってきた。建設業界の古き良き時代も、冬の時代も知るベテランだ。

 建設業に関する法律改正や大きな制度変更はほぼ毎年ある。近年で言えば、改正公共工事品質確保促進法などいわゆる「担い手3法」が記憶に新しい。イメージは漠然とつかめても、いざ実務に反映させようとすると内容はなかなか複雑で、さらにそれを分かりやすく伝えるのは簡単なことではない。

 「背景が分かっていないと、法律が変わっても守ろうとは思わない。法律用語を張り付けて資料を作っても理解してもらえない」。それを身に染みて知っているので、そうした資料を見ると「伝え方が分かっていない。ルーチンでは駄目だ」と強く感じる。

 広報の重要性を説く須藤さんにとって、忘れられない上司の言葉がある。「職人に分かる言葉で伝えないといけない」。それを聞いて「目からうろこが落ちた」。「砕けすぎず、ただ法律用語に頼りすぎず」。それが今のモットーだ。

 認識を関係者で共有していくことが、業界の健全な発展につながると信じているが、例えば法律改正があっても、地方の建設業者の目は「東京の話」に映るという。だからこそ「(官民ともに)みんなで取り組む姿勢が何よりも大切」と心掛ける。独りよがりでは何も進まないということを経験から学んだ。

 建設業行政以外の業務でだが、広報のために地域のテレビ、ラジオ番組などに自ら出演する。「前例を作るのが好き。前例を作れば若い人は付いてきてくれる」と話す。「発信することを諦めてはいけない」。前例主義を打破するぐらいの思いがあって初めて施策が浸透すると考える。

 父も公務員だった。建設業行政は「率直に言えば泥臭い。義理人情に厚いところが自分には合っている」。行政マンとして長く建設業を見てきたため、言葉の端々に建設業への愛着もにじみ出る。

 建設業や公共事業が世間から厳しい視線を送られてきた時期も知っている。「それまでは愚直にやっていれば誰かに評価されると思っていた。でも今はそうじゃない。時代に遅れている」。だからこそ「発信力が重要だ」と訴える。「奥ゆかしさはそれはそれで一つの美徳だが、発信しなければ何もならない」。

 考え方は行政マンと思えないほど柔軟で、すぐにでも民間企業の営業マンが務まるような身のこなし。弁が立ち、語り口も非常に滑らかで、イベントの司会者も十分務まりそうだ。

 なぜ行政マンをやっているのか-。そう聞くと「役人しかできない人間と思われるのはちょっと悔しい。どこでも通用する人間が役人をやっている。そう思われる存在でありたい」。

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