2015年11月26日木曜日

【回転窓】災害伝承の知恵

 二又さんという方から興味深い話を聞いた。「二又」とは本名ではなく屋号。その由来は津波にあるそうだ▼かつての大地震で、その家の場所で大きな波が二つに分かれたことなどが伝承されており、その教訓を忘れぬように屋号が定められた。二又さんは祖母から地震が起きたら逃げるよう教えられて育ち、母になった自分も子どもに何度も教え込んだ▼東日本大震災の日、自宅に一人でいた息子は急いで身の回りの大事な物を集め、自転車で避難して無事だった。共に一命を取り留めた愛犬と集団移転先で暮らしている。屋号に込められた思いが、本当に子孫の命を救った。天から見守る先祖が何より喜んだのではないだろうか▼日本政府の呼び掛けによって、11月5日を「世界津波の日」にしようと国連で議論が進んでいる。1854年のこの日に、安政南海地震が起きた。近畿地方などに大津波が襲来。地域の庄屋であった濱口梧陵が稲わらに火を放ち、避難を誘導した逸話が「稲村の火」として伝わっている▼日本が発信した戒めで命が救われた-。そんなうれしい知らせが世界を席巻するよう期待したい。


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