2015年11月16日月曜日

【回転窓】人づくりのバトン


 卒業した大学建築学科の同窓会誌が届いた。工業高校の教師になった同期の女性が近況を報告していた。毎日、生徒と向き合いながら悪戦苦闘する様子がつづられている▼「建築はものをつくるだけでなく、環境問題の解決にも欠かせない」。教壇からそんな思いを訴えても、生徒には子守歌にしか聞こえない。学生時代から変わらぬ大声だけが授業中の睡眠防止に役立っているという▼若い人を育てていく悩みはわが建設業界も同じ。「背中を見て学べ」という旧来の教え方では昨今の若者は長続きしない。OJTを基本に技能を講習し、手取り足取り教えないと育たない▼建設業の職人は一人前になるのに最低でも10年はかかると言われる。他産業と比べ厳しい世界であることは間違いない。だからこそ仕事のきつさや大変さも伝えなければ、せっかくの入職者も一人前になる前に離職しかねない▼女性教師は、社会に出るまで生徒と一緒にバトンを持って走り、それを就職先企業に渡し、いつかは彼らが一人前になってほしいと願う。建設業界は、バトンを受け取り若者を育てられる産業になっているだろうか。

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