2015年12月14日月曜日

【駆け出しのころ】東急建設常務執行役員渋谷開発支店長・住田洋氏


 ◇どれだけ働いたかで人は成長する◇

 就職活動をしていたころは人を採らない時期で、いろいろ動き回り、ようやく東急建設に決まりました。渋谷生まれの渋谷育ちということで、渋谷の会社に入ったのかと思われるでしょうが、実は違うんですよ。でも振り返ると、渋谷にご縁があったのは確かですね。

 入社3年目に「109」の建設現場に従事しました。一番若い社員でしたが、上司や先輩に恵まれ、担当の仕事を任せていただけた。当然、間違いや行き届かないことはありましたが、「一人前になりたい」と懸命に働きました。人が10年かけて経験することを、私は5年で経験してきたと思いますし、それが糧となって今に生きています。人の成長は、どれだけ働いたか、経験したかです。私は渋谷の現場で急成長することができました。

 「文化村」や「キャロットタワー」では責任ある立場で現場に入ったのですが、職員の事務所よりも作業員の詰め所に居る方が長かった。ここに居ると作業員たちの生の声が聞けて、本音の話ができるんです。作業員一人一人とのコミュニケーション、付き合いが大事。それによって事故が減り、良い仕事につながっていきます。

 私には人脈しかありません。いろいろな業者と出会い、仲間たちが増えてきました。ゼネコンの社員はくぎ一本も打てない。このことをよく理解した上で、自分自身がどう動き、現場のみんなをどのように動かしていくのかが重要です。作業員が「この人には迷惑を掛けない仕事をしたい。この人の仕事を今後もしていきたい」と思ってくれたら最高です。

 「109はお父さんが造った」と子どもは喜んでくれましたが、私自身は「セルリアンタワー」の前に架かる歩道橋が家族に胸を張れる仕事です。セルリアンタワー自体は現場のみんなで造りました。でも鉄骨トラスの歩道橋は私の手造り。もちろん構造設計者たちとの協働ですが、デザインから構造の検討、タイルの割り付け、架設の仕方まですべてを造り込みました。

 いま手掛けている渋谷駅周辺の開発プロジェクトは私の集大成です。渋谷のゼネコンとして、この仕事の重要性は社員全員が十分に承知しています。工期や品質、安全、利益などすべての面で満足できるようやり遂げます。その中でも新しいことに挑んでいきたい。女性専用の休憩所を設けたのもその一つ。女性が現場に入ることで、男性は汚さないようにするし、振る舞いも変わります。こうした行動や意識は安全面にもつながっていく。3Kから抜け出し、作業員が普通のサラリーマンのようにならなければいけないと思っています。

 (すみだ・ひろし)1976年明治大学工学部建築学科卒、東急建設入社。執行役員営業総本部グループ営業本部長、営業総本部都市開発本部長、常務執行役員営業本部都市開発部部長兼渋谷開発推進室長などを経て14年6月から現職。東京都出身、64歳。

95年8月の家族旅行での一枚。
当時は「キャロットタワー」の現場でかじを取っていた


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