2015年12月21日月曜日

【回転窓】秀作味わう最後の機会?

坂倉準三(1901~69年)が設計した「神奈川県立近代美術館」(鎌倉市)が来年3月で閉館する。51年に開館した日本初の公立の近代美術館で、モダニズム建築の代表作と言える▼準三の長男竹之助氏が以前、この美術館をこう評していた。「ル・コルビュジエの提唱する美術館のあり方だが、西洋と日本の良い面を取り入れながら、日本の精神をうまくバランスさせた建物」。さらに、来日したコルビュジエが国内のさまざまな建築を見た中で「最も興味を持ったのが近代美術館だった」とも▼多くのモダニズム建築が保存問題に揺れる中、鶴岡八幡宮の境内にあるこの美術館も例外ではない。県は八幡宮との借地契約期間が満了する3月末に閉館させ、土地を更地にして返還する予定だった▼だが、建築的価値の高い文化遺産を後世に継承するよう建築関連団体や県民有志らが保存を強く要望。その結果、県と八幡宮は建物を引き継ぐ方向で現在調整を進めているという▼最後の展覧会は来年1月末まで。建物の活用策はまだ明らかになっていないが、坂倉建築の秀作を味わう最後の機会にはしてほしくない。

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