2015年12月24日木曜日

【がんばる、清水建設】インドネシアで攻勢、高い施工品質や技術力アピール

 インドネシアで40年にわたって建設事業を展開している清水建設。経済や政治情勢の変化などの影響を受け、手掛ける事業の量は時代によって変動したが、ここ数年は非日系の建築工事、政府開発援助(ODA)関連の土木工事など大型案件を相次ぎ受注し、事業量が急増している。各現場で安全確保や品質向上、工期短縮などの取り組みをアピールしてブランド力を高め、シンガポールに次ぐ第2の海外拠点として安定した事業基盤の構築を急ぐ。

 □アストラタワープロジェクト□

完成すれば、インドネシア最高層のビルとなる。自動車やバイクの生産・販売を主力事業とし、国内最大の売り上げ規模を誇るアストラ社の本社ビル(テナント用オフィス含む)としても注目を集める。

 沖和之建設所長は「当社の強みをアピールする上で、高品質はもちろん、工期の遅れが当たり前のこの国で契約工期を半年圧縮する目標を掲げ、チャレンジしている」と意気込みを語る。

 地下と地上の各工程で3カ月ずつの短縮を計画。逆打ち工法による地下掘削では、中間階床の構築を後に回して床下空間での大型重機の使用を可能とし、作業効率を高めた。

 雨期も作業スピードを落とさないよう、日本から持ち込んだトラス材で仮設テントを掛けた。掘削後はトラス材を転落防止用の外部養生に転用し、本格化する地上部の躯体作業の安全確保に役立てている。

 概要=RC造地下6階地上47階塔屋3階建て延べ16・5万平方メートルの規模。高さは261・5メートル。建築・設備・外構の施工を清水建設・TOTALJVが担当。請負金額は約210億円。工期は14年9月中旬~18年3月末。

 設計業務は意匠を日建設計、構造をアラップ、、設備をマインハート、外装をインハビットらが手掛ける。

 □B Buraun LVP-Product□ 

医療器具メーカーのB Braun社がジャカルタ郊外の工業団地に新設する大容量点滴薬パック(LVP)の生産施設。清水建設は建築工事を担当する。

 ドイツに拠点を置く施主をはじめ、オランダのコンサルタント、インドネシアの杭業者、設備の大気社などといった多国籍グループで事業を推進。BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を導入し、設備の収まりや仕上げの確認など、関係者間の情報共有、調整の迅速化などを図っている。

 建設中の1期施設に続いて、敷地内に2期施設を今後整備する計画。佐久間伸一工事長は「1期工事で良い仕事をし、2期工事の受注につなげたい」と意欲を示す。

 概要=工場がS一部RC造3階建て、事務所がRC造2階建て。総延べ床面積は約2・1万平方メートル。工期は5月~16年7月。

 □MNCメディアタワー□

インドネシアのメディア最大手のMNCグループから設計・施工で受注した業務・ホテル中心の超高層複合ビル。

 当初、別の企業が基本設計を手掛け、清水建設が実施設計以降を行う計画だったが、施主側が建物高さの変更を要請(252メートル↓173メートル)。延べ床面積と完成時期を変更しない条件で再設計となり、同社の総合力でコンペに競り勝った。

 限られた工期の中で地下工事と並行しながら再設計の作業を進めた。地下工事では「リング逆打ち工法」により、地下躯体床を仮設の切り梁に代用。床中央部に開口を設け、地下6層の掘削作業の合理化を図った。

 地上躯体の構築では1フロア8日サイクルを目指し、▽4Dシミュレーションによる施工手順の検討▽クレーン作業の負荷軽減(油圧ジャッキによる外周足場のせり上げ、軽量アルミ型枠の採用)-などに取り組む。

 客室のモックアップを用いて、上層階に入るホテル(222室)の仕様などに関する施主側の承認を早期に得ながら施工を円滑に進める。

 周囲に施主の関連施設が立ち並ぶ現場で指揮を執る赤木創工事長は「品質や工期厳守はもちろん、二重・三重の安全対策で清水らしさをアピールしたい」と強調する。

 概要=RC造地下6階地上39階建て延べ約11万平方メートル。施工は清水建設・TOTALJV。工期は14年6月~17年9月。

 □ジャカルタMRT南北線1期工事□

ジャカルタ市内の交通渋滞の解消を主目的に、日本の円借款で整備が進む都市高速鉄道システム(MRT)南北線。総延長23・8キロのうち、15・7キロの1期工事を6工区に分割し、清水建設を代表とする4者JVが同国初の地下鉄工区(CP104、105)の施工を担当。同国初のシールド工法を採用し、多方面から注目を集めている。

 毎週木曜日には市民や学生を対象にした見学会を実施し、政府の要人も数多く訪れる。
 大迫一也建設所長は「今回の工事では渋滞緩和だけでなく、日本の優れた技術の移転も期待されており、シールド工事の経験のない現地スタッフやワーカーへの教育・指導にも積極的に取り組んでいる」と話す。

 概要=地下鉄工区では4カ所の地下駅舎、各駅を結ぶ2本のシールドトンネル(延長2・6キロ)と開削トンネル(延長460メートル)を整備。施工は清水建設・大林組・WIKA・JAYAJVが担当。清水建設は高架橋工区(CP103)にもJVサブで参画する。現時点で1期工事は車両の試験走行なども含めて18年12月の完成、19年の開業を見込む。

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