2015年12月10日木曜日

【照準は五輪】16年も大型民間建築が続々着工


16年に都内で着工予定の主な超大型プロジェクト
 ◇戦略特区認定プロが本格化◇

 2020年東京五輪に対する期待感やアベノミクスの効果で好調が続く東京都内の大型都市開発。この勢いは今後も持続しそうで、16年も数多くの大型建築プロジェクトが着工する予定だ。都内各地で、国家戦略特区に認定された都市開発プロジェクトの建設工事が本格化するほか、東京五輪に間に合わせることを前提にした宿泊施設や医療施設の建て替え事業の着工も相次ぐ見通し。代表的なプロジェクトを紹介しながら、16年の民間建築市場を展望する。

大手町一丁目2地区開発の完成イメージ
東京圏国家戦略特区の認定事業では、▽大手町一丁目2地区開発事業(千代田区)▽虎ノ門四丁目プロジェクト(虎ノ門トラストシティワールドゲート、港区)▽竹芝地区開発計画(港区)▽愛宕山周辺計画I地区建設事業(同)-の4件の本体着工が控える。いずれも現在は既存建物・地下構造物の解体工事を進めており、大手町一丁目2地区と竹芝地区では鹿島が、虎ノ門四丁目では清水建設が、それぞれ施工を担当している。

 国家戦略特区の認定事業に求められているのは、外国人を日本に呼び込むための国際基準のビジネス環境や住環境の整備だ。政府が進めているインバウンド(訪日外国人)施策に呼応するように、大型オフィスビルを計画している大手町一丁目2地区と虎ノ門四丁目では、ビルの高層階に宿泊機能(ホテルやサービスアパートメント)を導入する計画だ。愛宕山周辺では、高さ220メートルの超高層マンションに、分譲から賃貸、サービスアパートメントまで多種多様なニーズに対応する住機能を盛り込む。

 東京五輪までに完成させることを至上命令としたプロジェクトも続々と動きだす。

ホテルオークラ東京本館建替の完成イメージ
ホテルオークラ東京本館(港区)の建て替え事業は、観光地としての東京の魅力がピークに達する東京五輪時を最新の設備で迎え、宿泊需要の獲得とブランド価値の向上につなげることが狙いだ。旧本館は今年8月で閉館しており、大成建設の施工で解体工事が着々と進んでいる。

 五輪開催中に選手などの治療に当たる「オリンピック病院」に指定されているのが国家公務員共済組合連合会(KKR)虎の門病院(港区)。同病院では建て替えに向けて既存建物の解体工事を推進中だ。

東京医科大学新大学病院の完成イメージ
このほかにも都内では、東京五輪を前に医療設備の更新・高度化を図ることを目的とした病院の新設・建て替え事業が複数ある。東京医科大学は、現病院(新宿区)の隣接地に計画している新大学病院の本体着工を控える。五輪前に開業し、都心部の災害拠点病院として存在感を示す考え。

大型物流施設の開発も依然堅調だ。16年には大田区平和島で老朽施設の建て替え事業2件が動きだす。整備中の首都圏中央連絡自動車道(圏央道)、東京外かく環状道路(外環道)の周辺エリアでも、新規施設の開発機運は衰えそうにない。
 このように不動産市場は活況を呈しているが、建築コストの高止まりが懸念材料として残っていることも確かだ。

東京団地冷蔵再整備の完成イメージ
東京23区の大規模オフィスビルの供給量調査を行っている森ビルと森トラストは、それぞれの調査結果を基に、建築コスト上昇の影響でビルの完成時期が後ろ倒しになる傾向が強まっていると指摘する。直近の調査で判明した17年の推定供給量は60万平方メートル前後。約1年前に行った調査に比べると、同年の推定供給量が半分程度に激減し、それとは反対に18~19年の推定供給量が増加しているからだ。

 当初は15年3月に本体着工する予定だった春日・後楽園駅前地区第一種市街地再開発事業(文京区)は、事業費が急激に増えたことによって権利変換計画の策定に手間取ったため、着工時期を16年3月に延期した。

 ◇懸念材料はコスト上昇と人材不足か◇

 今年4月に再開発組合が認可された白金一丁目東部北地区第一種市街地再開発事業(港区)では、順調に行けば16年10月に延べ約13・5万平方メートル規模の再開発ビルに着工する予定だったが、建築コストの抑制に向けて設計の見直し作業が必要となったため、事業スケジュールを2年弱遅らせる決断をした。

 ここに来て資材費はやや落ち着いてきた感があるものの、慢性的な職人不足から人件費の動向は不透明で、工期遅延のリスクもいまだ抱える。長期間の検討を経てきた市街地再開発事業はまだしも、景気動向に左右されやすい中規模クラスの開発事業では着工の延期や凍結がさらに増える可能性もある。

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