2015年12月14日月曜日

【回転窓】使われてからが本当の評価

 「近代港湾の父」と呼ばれる広井勇博士。明治から大正にかけて小樽港など数多くの土木構造物を手掛けたことからご存じの方も多いだろう▼10日付本紙最終面「所論諸論」で谷口博昭氏が広井博士の金言として「文明の基礎づくりに努力すべき」という言葉を紹介していた。実はこの言葉の前には、「技術者として自分の真の実力をつねに錬磨し、技術を通して」というくだりがある。広井博士の功績は単なる学術的な高さだけではなく、土木技術者の心構えを常に説き続けたことにある▼広井博士は著書『築港』の中でこうも言う。「先年にわたる技術者の栄誉と恥辱はひとえに設計の如何にある」。技術者は設計や工事が完了すれば終わりと思いがちだが、本当の評価はそれが機能し始めてからだ、と▼国土交通省がインフラのストック効果のPRに力を入れている。整備後に得られる社会的な効果をきちんと国民に発信する狙いだ。遅きに失した感もあるが、インフラ本来の役割を知ってもらうのは大切なことだ▼インフラは造るのが目的ではなく、使ってもらうのが目的だということを肝に銘じておきたい。

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