2016年1月6日水曜日

【回転窓】「一年」の定義

 年明けの東京は、早くも春が来たような陽気が続いた。新年の仕事始めから、きょうは3日目になる。しばらくの休みと、この間の暴飲暴食でなまった頭と体も、そろそろ平常のペースを取り戻す頃合いだろうか▼希望に満ちた新たな年の始まりに水を差すようで気が引けるが、ビアスの「悪魔の辞典」は、「一年」という言葉を〈三百六十五回の失望から成る一期間〉と定義している(『新編/悪魔の辞典』西川正身編著、岩波文庫)▼読者諸賢も、新しい年にさまざまな希望や目標を描いたことだろう。ビアス流に言うなら、年が明けて既に5回もの失望を繰り返したことになるが、あまり小さなことに一喜一憂せず、気長に一年を過ごしたい▼皮肉と毒舌のビアスに対して、文豪トルストイにはこんな格言がある。〈人間にとって最高の幸福は、一年の終わりにおける自己を、その一年の始めにおける自己よりも、遥かに良くなったと感ずることである〉▼長いようでも短いのが一年。年を重ねるほどに、そのスピードは増すようにも感じられる。今年の末が幸福であるよう、ここはやはり後者の格言を座右に。

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