2016年1月12日火曜日

【担い手確保に本腰】北海道で官民連携の取り組み本格化

 人口減少が顕在化している北海道。今後は道路や河川などの社会資本整備に加えて、北海道新幹線新函館北斗~札幌間の工事の本格化が予定されており、建設業の担い手不足が懸念されている。

 昨年は道内の建設業に関係する発注機関や団体が、担い手対策の課題を共有する場として「北海道建設産業担い手確保・育成推進協議会」を設置。発注機関による担い手確保に向けた入札契約方式の見直しが行われるなど、道内では担い手確保対策の各種取り組みが始動している。

15年5月に発足した「北海道建設産業担い手確保・育成推進協議会」。
官民連携で人材確保・育成の方策を検討・具体化しようとしてる
 北海道では15年6月、道内初の官民連携による担い手対策の組織「北海道建設産業担い手確保・育成推進協議会」(会長・名取哲哉道建設部長)が発足し、担い手の確保・育成に向けた大きな前進となった。

 同協議会は、建設業の担い手確保・育成を目的に、北海道開発局、北海道などの発注機関や、北海道商工会議所連合会など10の団体や機関で構成。各機関・団体で実施している取り組みの情報を共有し、類似の事業があれば連携して規模を拡大することで、施策や取り組みの実効を上げるのが狙いだ。

 協議会は年2回程度の頻度で開催する。会合では現場見学会の開催結果や、インターンシップの開催実績など、それぞれの担い手確保の取り組みを報告。下部組織として「建設産業女性活躍促進検討部会」など、個別の課題や事業に対応するワーキンググループ(WG)を設置し、具体的な検討に当たる。

 北海道や北海道開発局などの主要な発注機関では、入札契約方式の見直しによる担い手対策の動きが本格化している。北海道では15年秋に、工事の発注指針となる「品質確保取り組み方針」を改定。労働環境の改善や、総合評価方式の見直しに取り組むことなどを盛り込んだ。

 労働環境の改善では、休日や平日業務時間外の作業を抑制する「オーバーファイブ・ノーミーティング」、金曜日に工事監督員と現場代理人や監理技術者との間で作業依頼をしないようにする「フライデー・ノーリクエスト」などの「労働環境改善プロジェクト」を試行する。建設業の現場を働きやすい環境にすることで、入職者の確保や、若手社員の離職防止を図りたい考えだ。

 総合評価方式の見直しでは、担い手確保対策として若手技術者などの確保に努める企業を評価する項目の新設を検討している。北海道開発局では、若手技術者を育成する目的で、実績や経験が少ない技術者が参加しやすい入札契約方式を試行している。

 評価項目から「北海道開発局長等優良工事表彰」と「監理(主任)技術者の工事成績」を除外することで、工事成績や表彰実績のない若手技術者の参加を促す「若手技術者育成型総合評価方式」を一部の入札に適用。また、札幌開発建設部は15年度、若手技術者に対する参加要件の緩和に加え、若手技術者育成に向けた社内教育などの企業の取り組みを加点評価する独自の若手技術者育成型の試行を開始した。

北海道建設業協会が製作した建設業紹介マンガ
『ただいま工事中!(土木工事編)』
  既に建設業で働いている人だけでなく、今後卒業後の進路を決定する学生などの若い世代への働きかけも活発化している。

 北海道建設業協会は15年11月、建設業の仕事内容などを紹介する漫画「ただいま工事中(土木工事編)!」を製作した。14年に製作した建築工事編の続編。建築工事編で建設業に興味を持った高校生の主人公が、河川などの土木構造物の重要性について学ぶストーリーで、工事の目的や、計画の立案から完成に至る工程などを分かりやすく解説している。

 漫画は私立を含めた道内の全高校や専門学校、図書館などに配布。卒業後の進路を考え始める高校1・2年生を主な対象とし、建設業への興味を促す狙いがある。

 このほか、札幌建設業協会では15年10月、工業専門学校生徒の保護者を対象とする異例の工事現場見学会を開催した。生徒の進路決定に保護者の意見が強い影響を与えることから、保護者に建設業の役割や仕事内容を理解してもらおうという取り組み。土木と建築に分けて開いたこの見学会は保護者から好評を得たため、今後は札幌だけでなく全道で開く方針だ。

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