2016年1月22日金曜日

【ちょっと一息・番外編】爆買い、勢いとどまらず その3

 ◇サイパンにビーチリゾート型IR誕生?!◇


 前回は、中国人や韓国人観光客がサイパンを大いににぎわせている様子をリポートしました。今回は、現地で聞きかじった中国人観光客とともに流れ込む不動産投資マネーのお話です。

 中国のカジノ運営会社・ベストサンシャインは、総額71億ドルを投じて繁華街の中心に客室4000室のカジノを含む統合リゾート、IRを建設する計画(15年8月、米フォーブス誌の報道)という。サイパンでは14年にカジノが解禁となったあと、同社がIR建設に先駆けて免税店の売り場の一部にカジノをオープンさせています。

 中国マネーの動きは、政治と大きくかかわっています。北マリアナ諸島のエロイ・イノス知事は昨年12月末、治療のため訪れていた米本土の病院で亡くなりました。私たちの訪問中に遺体がサイパンに戻り、お葬式が行われたのです。空港から葬儀場までの間に市民が大勢詰めかけ、知事を迎えていました。

 「島民に愛された知事だったのだろう」と思い、聞いてみましたが、評価は人それぞれ。知事がカジノ認可に絡んで中国企業と癒着しているのでは、と考える人もいたようです。先に挙げたフォーブスの報道でも、IR建設地の入札手続きに不透明な点が指摘されていました。

 私たち家族が宿泊したのは、 繁華街から離れた静かな環境にある「マリアナリゾート。日本企業が運営するホテルの一つです。しかし、ここの営業も今年で終了するとか。政府所有の土地のリース契約が延長されないことが決まり、前述の中国企業ベストサンシャインがあとを引き継ぐと言われています。サイパンに住む日本人にとっては、このような動きはさみしいもの。日本人オーナーは契約延長を望んでいたのですから、政治に影響されたと考えたくなるのも理解できました。

 今回、チャモロ人を中心とする現地の人たちに話を聞く機会はありませんでした。彼らにとっては、地域の観光産業を支えてくれるならどこの国の客でも関係ないでしょう。中国人観光客は確実に雇用を生みだしています。建設現場をいくつも見かけました。

 一方で、カジノには反対する人も多いと聞きます。中国資本のホテルで働く地元の人、中国マネーを呼び込みたい政治家、サイパンに長く根を張ってきた日本人やそのほかの外国人。短い滞在中に、それぞれの複雑な心境を垣間見た気がします。

 サイパンの魅力はなんと言っても美しい海と静かな環境。宿泊したマリアナリゾートのビーチは、スノーケルで潜ると波打ち際から水族館の水槽のような熱帯魚に出会える、本当に貴重なサイパンの財産です。

 昨年夏、サイパンは大型台風13号の直撃を受け、建物やインフラに大きな被害が出ました。壊滅した街の復旧はまだ途中です。新しい指導者のもと、美しい環境が守られる範囲で観光客が増え、復興がなされることを願っています。


おわり

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