2016年2月16日火曜日

【記者手帖】埋まっていたものの意味

台湾南部を大きな地震が襲ってから10日。被害が集中した台南市の16階建てマンションの倒壊現場では、100人近くの遺体が確認されるなど多くの犠牲者が出ている◆現地からの報道は、鉄筋量やコンクリート強度の不足、構造上必要な壁を取り除く違法改築などが倒壊原因ではないかと伝えている。しかも躯体部分から一斗缶が多数発見されたとも。RC造の躯体に埋まっていた缶に既視感を覚えた◆21年前の阪神大震災で神戸市東灘区の実家のマンションが全壊判定を受け、建て替えを余儀なくされた。マンションの1階廊下の壁には激震で大きな亀裂が走り、その中にあったのが清涼飲料水の空き缶だった。新耐震基準施行(1981年)前に完成したマンションだったが、幸い居住者から死者は出ず、最悪の事態は免れた。しかし、空き缶を見た時には怒りがこみ上げてきた◆国交省で民間建築物の品質を確保する議論が本格的に始まった。民間建築物の現場で働く技能者の労働環境などを改善する体制構築が急務だと思う。働く人たちが捨て鉢な気分にならない環境が整えられるよう期待したい。(土)

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