2016年3月14日月曜日

【駆け出しのころ】長谷工コーポレーション常務執行役員・原口義典氏

 ◇皆が一体で良いものを造り込む◇

 親戚には建築関係者が多く、同じ会社に私より先にいとこが入社して建築現場で働いていました。そんな関係もあって現場を見学させてもらうと、規模が大きいだけでなく、社員も若くて活気があり、これは良い会社と思って入社試験を受けました。中途入社でした。

 最初に配属された現場は、東京都内のマンションです。三つの工区に分けて発注され、このうちの一つを当社が設計・施工しました。他の2工区も同時並行の施工で、それぞれの会社で違うやり方を見ることができ、とても面白い経験でした。マンション建設に慣れていた当社のスピードは速く、他社の方がうちの現場を見に来ていたのを覚えています。

 ここの現場には6人ぐらいの社員がいて、私は年齢で下から2番目だったでしょうか。所長は社内ではカリスマ的な方で、仕事だけでなく規律も厳しく指導されました。朝の事務所で机の上に物が曲がって置かれていると、それを手でサッと下に落とされたこともあります。一方で、ぴしっと整頓できていると、若い社員に「おいなりさんでも買ってこい」などと言ってくれる人情味のある方でした。

 入社から5年間はマンションの建設に携わりましたが、その後15年ほどは警察署やオフィスビルなどマンション以外の施工を担当します。30代で手掛けたあるオフィスビルは、ちょうど好景気だったこともあって仕様がかなり良く、さまざまな最新のものを駆使して造り込みました。大変でしたが楽しく、次にどんな仕様のものを任されても対応できると自信を付けることができました。体力と気力に満ちあふれていたころでした。

 後輩や部下には、あいさつと言葉遣いはしっかりするよう言ってきました。それと現場事務所は室内がきれいでもトイレが汚ければ、隅々まで見ていないことであり、そこもきれいにしようとする心があれば現場もきれいになります。これは最初の現場で所長から学んだことでもありますが、自分が同じ立場になった時はカリスマ的な厳しさではなく、皆で造っていくんだという雰囲気づくりに努めました。

 一般ビルを施工してきた後に再びマンション建設を担当した時は、あらためてその大変さがひしひしと分かりました。施工中だけでなく施工後も夜に電話があると、何かのクレームではないかとドキッとしたものです。今の所長たちもそうしたことのない良いものを造ろうと一生懸命にやっています。

 現場、内勤の社員、職人も一体となった仕事で良いものを造る。こうした指導をしていますし、それが自主管理でうまく動いていると思います。

 (はらぐち・よしのり)1979年12月長谷川工務店(現長谷工コーポレーション)入社。2006年4月第一施工統括部建設3部長、07年4月購買1部・2部・3部統括部長、10年4月執行役員、13年4月現職。日本大学生産工学部数理工学科卒。東京都出身、62歳。

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