2016年7月14日木曜日

【回転窓】せみ時雨と集中力

関東地方は梅雨が明けたような連日の猛暑。地中にいたセミの幼虫たちも羽化し、勢いよく鳴き始めた▼近所の公園では網を手にした子どもたちが木から木へ駆け回る。青々と葉が生い茂った木陰に立ち、周囲の音をすべてかき消すように鳴り響くせみ時雨に聞き入ると、暑さを一瞬忘れてしまう▼〈閑さや岩にしみ入る蝉の声〉。芭蕉が山形県の立石寺で詠んだこの句は、現実の景色と精神の世界を表現しているという。騒々しい現実から離れ、静寂の世界へと意識が向かう。句をどう解釈するかは人それぞれであろうが、意識が研ぎ澄まされて異次元の世界に入り込んだような不思議な感覚が面白い▼セミはなぜ鳴くのか。雄が雌に自分の居場所を知らせるための求愛行動である。周りの音に負けないように必死に鳴き続けるのは自らの子孫を少しでも多く残すため。成虫になってからわずか10日程度という限られた時間。新たな命をつなぐのに一心不乱で集中するのは当たり前のことだろう▼夏は蒸し暑さでだらけやすく、集中力を持続するのが難しい。セミに負けず、やるべき目の前の勉強や仕事に集中したい。

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