2016年7月21日木曜日

【プロジェクト・アイ】福岡市地下鉄七隈線博多駅(仮称)工区建設工事(福岡市博多区)

 福岡市で、市営地下鉄七隈線の都心部区間の延伸事業(天神南~博多)が進んでいる。

 中でも大成建設・佐藤工業・森本組・三軌建設・西光建設JVが博多駅直下で施工する博多駅(仮称)工区は、NATM、開削、アンダーピニングという異工種が混在する難工事だ。

 トンネル掘進時には、切羽前方地盤の状況を事前に把握できるトンネル先行変位計測システム「TN-Monitor」を導入するなど、周辺への影響に細心の注意を払いながら工事が進められている。

 ◇地盤状況把握に新システム導入◇

 福岡市営地下鉄七隈線は現在、福岡市西区の橋本駅と中央区の天神南駅を結ぶ12キロの区間で営業している。今回の延伸事業では、南西部と都心部、都心部内の移動の利便性向上と、地下鉄空港線の混雑緩和などを目的に、天神南から空港線博多駅まで(中央区春吉3丁目~博多区博多駅中央街)の延長約1・4キロを新たに結ぶ。

 このうち博多駅工区は、七隈線と博多駅との接続部(延長280メートル)を施工する工事で、空港線博多駅につながる七隈線の博多駅などを造る。博多駅直下という都心部でのNATMによる大断面トンネル掘削と、営業中の博多駅前の地下街と地下鉄空港線下の開削、アンダーピニングという二つの工種がこの工区の大きな特色になっている。

 現場で工事を指揮する大成建設JVの田中芳光作業所長が「人通りの多い都心部で、営業中の地下鉄、駅ビルが近接する中での工事。交通規制も最小限に抑えるなど周辺に与える影響に細心の注意を払った」と話す通り、工事は万全の準備を行った上で慎重に進められた。

 先行して着工したNATM区間は、開削区間となる博多駅と七隈線を接続する本坑195・6メートルの区間で、このほかに連絡坑(140・0メートル)と立坑(25・1メートル)を施工する。

 本坑は博多駅前通りの直下と都心の真っただ中に位置するだけに、地上・地下とも構造物が多い。掘削が及ぼす影響を常時監視し、大きな変状が生じる前に適切な対策を講じる必要があった。

 開削区間に接続する終点側109メートルは、中央に駅ホーム部、左右に上下線路部と三つのトンネルを眼鏡のレンズが3枚重なるように配置される3連眼鏡型の構造となるため、トンネルを安定させることが難しかった。

 このため施工に当たっては、大成建設が開発したトンネル先行変位計測システム、TN-Monitorを採用した。切羽前方地盤の先行変位(沈下)を計測する「SAA」と、切羽側からトンネル内に押し出してくる地盤の動き(押し出し変位)を計測する「T-REX」という2種類の計測機器を設置。これで取得したデータによって、トンネルを掘進する前に切羽前方の地盤の様子を詳細に把握できるようになる。

 掘削が影響しない約20メートル前方の位置まで地盤の変位を詳細に捉えることができるため、NATM区間を担当する鈴木健司工事長は「必要に応じて地盤補強を先行して実施できる。施工条件の制約が多い中、安全性と生産性の確保につながった」とシステムの導入効果に太鼓判を押す。

 ◇事前対策に大きな成果◇

 一方、開削区間では、新設する博多駅舎(仮称)部となる5階層(高さ25・2メートル)一部2階層(11・3メートル)の地下躯体を構築する。施工面積5000平方メートルのうち、既設のJR地下街や地下鉄空港線軌道部・連絡通路部など約4000平方メートルで、アンダーピニング工法を採用。374台のジャッキを使い、約10万トンに及ぶ既存構造物の荷重を受け、沈下や傾斜を防いだ。

 「人が往来する既設躯体をどれだけ傷めずに空中に浮かせられるかがポイント」と田中所長。(写真㊨)

 その言葉通り、特に土かぶりの薄い地下駐車場と地上をつなぐ既設車路直下の区間は、車路と地下躯体の間を鋼管で保護するパイプループ工法を採用するほか、既設躯体の変状を0・01ミリ単位でモニタリングするなど、慎重に工事を進めている。

 20年度の開業に向け、今後も難しい工事が続く。田中所長は「福岡市民待望の延伸で、発注者を含め、市民の期待をひしひしと感じる。無事故無災害で良い品質のものを完成させたい」と力を込めた。

 《工事概要》
 
 【工事名称】福岡市地下鉄七隈線博多駅(仮称)工区建設工事
 【工事場所】福岡市博多区博多駅前2地先~博多駅中央街地先
 【発注者】 福岡市
 【施工者】 大成建設・佐藤工業・森本組・三軌建設・西光建設JV
 【主な工種】工事延長280m、うち山岳トンネル工法(NATM)延長196m、
      削工法・アンダーピニング工法延長84m
 【工期】2013年12月5日~19年3月15日

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