2016年8月8日月曜日

【駆け出しのころ】三井住友建設取締役専務執行役員建築本部長・三森義隆氏

 ◇全力を尽くせば視野が広がる◇

 入社して最初に配属されたのは東京・東上野の現場で、事務所ビルを建てる工事です。住友建設(現三井住友建設)が設計・施工で受注し、当時の東京支店では一番に大きい建築工事でした。

 ここで半年ほどたったころ、現場の先輩から仮設の跳ね出し足場を設置するための構造計算を指示されました。隣接する民家の上に一部が設置される足場で、もし計算を間違えて倒れたら大変なことになります。こんな大事な計算を新人にやらせていいのかと思ったものです。

 でも、先輩たちはどの材料をどのくらいのピッチにすれば安全かが分かっていて、新人のやることをしっかりと見ていらしたのだと思います。

 入社8年後の1987年、米国の東海岸を中心に大型ショッピングモールの開発事業を手掛けていたデベロッパーに留学しました。

 本社のあるワシントンD.C.で日本人の姿を見ることはほとんどなく、全く一人で見知らぬ土地でのサバイバルでした。このまま自分がいなくなっても誰にも気付かれないと思ったくらいです。主な仕事は建設から経営までの予算作成と現地での土地取得交渉などでした。日本と異なる文化との接触には戸惑いましたが、貴重な経験となりました。

 留学を終えて東京支店の建築現場に勤務していると、会社から送られてきたファクスでグアムのリゾート開発現場に行くことが決まったと知らされます。突然で驚きましたが、完全燃焼を心に誓って乗り込みました。35歳の時でした。

 グアムでは1年目から大変に忙しい日々を過ごします。ゴルフ場とこれに隣接するクラブハウスやコンドミニアムなどを建設する大規模なプロジェクトです。私はスイミングのクラブハウスや調達などのプロジェクトマネジメントを担当しました。中国や韓国、タイ、フィリピンから集まったワーカーは最盛期で2000人に上り、現場のマネジメントや資材の調達などに、かつて文化の多様性を学んだ留学の経験が非常に役立ちました。

 若い人たちに伝えたいのは、目の前のことに全力を尽くして取り組めば、結果はともかく、自分の見る景色も変わってくるということです。視野が広がるのです。同時に全力でやっている人を周りの人は信頼し、認めてくれます。ですから失敗を恐れず、まずは目先のことを愚直に一つずつやっていってほしいと思います。必ず成長していく糧になります。

 それに一生懸命にやった仲間というのは、成功しようが失敗しようがずっと仲間でいられるものです。そうした仲間は困った時にきっと助けてくれます。

 (みもり・よしたか)1979年京都大学工学部卒、住友建設入社。米国留学、グアム駐在、東京支店建築部長、東京建築支店副支店長、建築営業本部次長、常務執行役員建築営業本部副本部長などを経て、16年現職。大阪府出身、60歳。

留学していた米国のデベロッパーで

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