2016年9月6日火曜日

【回転窓】手書きの味わい

訳あって数年前から毎月必ず1通、手紙を書いている。パソコンは使わず濃紺のインクの万年筆で。大して長いものではないが、あえて下書きをせずぶっつけ本番で書くので、ちょっとした緊張を強いられる▼パソコンなら書いたり消したり、段落や語句の入れ換え、漢字の変換もキー操作一つで自由自在。手書き、しかも消せない万年筆となると、事前に一語一語を十分吟味し、文の長さと語順をじっくり考え、漢字は辞書で確認する▼なかなか骨の折れる作業である。昔の人のように、さらさらと流れるようにきれいな手紙が書けるとよいのだが、日ごろ機械に頼っているから、上達も遅い▼残暑もまだ厳しい中で気の早いニュースだが、日本郵便が先週、2017年用年賀はがきの当初発行枚数を発表した。前年比5・6%減の28億5329万6000枚。記録が残る04年用以降で最少という。印刷が多い年賀状でもこうだから、手書きの手紙の衰退ぶりは推して知るべし▼それでも手書きはひと味違うと思い込むのが長続きのこつだろう。時代遅れの道具にはしばしば独特の味わいがある。手紙もそう思いたい。

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