2016年10月21日金曜日

【回転窓】東京のケイパビリティーは

 英語で能力、才能、可能性を意味する「capability」(ケイパビリティー)。成長の原動力となる組織の能力や強みを指す用語として、最近は産業分野や防衛分野で使われる▼18世紀の英国でも、この言葉で話題となった人物がいる。「ケイパビリティー・ブラウン」と称された造園家のランスロット・ブラウンだ。当時は何百万坪という土地の改良も珍しくなく、運河を掘り、橋を造り、池を整備するなどスケールも壮大▼そのブラウンの口癖が「この場所には大きな可能性(グレート・ケイパビリティー)がある」だった。ランドスケープデザインの嚆矢(こうし)ともいえるブラウンが残した庭園の仕事は、下手な小細工をせずに、土地のポテンシャルに見合ったスケールと技法で大地を造形したといわれる▼2020年東京五輪をきっかけに都市の改造が進む東京。多くの団体が良好な景観形成に向けて提言を出しているが、競技施設などのコスト問題にばかり焦点が当たり、景観や都市像に関する議論が少ないのが気に掛かる▼東京のケイパビリティーは-。今、ブラウンが生きていたら、ぜひ聞いてみたい。

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