2016年10月31日月曜日

【駆け出しのころ】戸田建設常務執行役員建築設計統轄部長・山本嘉彦氏

 ◇自分のやり方を見付けてこそ◇

 入社当時はオイルショックの直後で就職が大変な時期でした。大学で建築を学んでいた私は、戸田建設にいた知り合いから「戸田建設の建築設計は力がある」と聞き、入社試験を受けました。面接に卒業設計の図面と模型を持っていきましたが、あまり関心を示されなかったのを覚えています。

 建築設計で入社した新人も、最初の1年間は現場で研修を受けます。私も現場に出ました。ところが、他の同期の人たちとは異なり、私だけは2年目以降もどういうわけかそのまま現場にいました。現場は面白かったのですが、入社から4年がたち、自分は施工と設計のどちらなのかを会社に確認すると、設計に行くよう言われ、東京支店の設計部へ異動します。

 同期は3年先に設計の仕事をしていましたが、そうしたことは気にならず、逆に4年間の現場経験を生かしたいと考えていました。

 その年、本社に新設された建築設計統轄部で集合住宅のチームに入って以降、本社で集合住宅や再開発の仕事に携わってきました。ですから私には転勤の経験がありません。転勤が嫌だったわけではないのですが、おそらく社内にこうした人間はいないでしょう。

 若いころに付いた上司の影響というのは大きく受けるもので、私の場合はお客さんとの接し方やグループを率いるのがうまい上司でした。仕事のオンとオフもはっきりされていて、合理的に仕事をすることの大切さなどを学んだと思います。

 印象に深く残るプロジェクトの一つは、当社として初めて手掛けた香川県宇多津町での超高層RC集合住宅の設計です。最初から竣工まで携わりました。現場が終わってこんぴらさん(金刀比羅宮)に行き、そこから遠くに自分が設計した建物が見えた時はとてもうれしかったです。

 設計というのは考えだすときりがなく、どこかで切らないと終わらない仕事です。最短で結果を出すことを求められるため、自分なりの仕事の仕方を見付けずに人の言うことばかり聞いていると、右往左往してしまいます。

 私たちは組織、グループの中で仕事をしていますが、個人の能力が集まってグループ力となります。ですから個人の能力を高めることが重要です。かつて建築設計統轄部長を務めた方が「一芸に秀でたオールラウンダー」と言っていました。自分なりのやり方がないとそうはなれません。皆にも自己流的なことをどんどんやってほしいと思っています。

 若いころに、周りから見れば独特な仕事の仕方をしていた上司に習ったものですから、私もかなりの自己流でこれまで来たのかもしれません。

 (やまもと・よしひこ)1976年東大工学部建築学科卒、戸田建設入社。本社建築設計統轄部設計管理部長兼建築本部BIM推進室長、本社建築設計統轄部長、執行役員などを経て、16年4月から現職。東京都出身、64歳。

入社2年目に休みを利用して出掛けた京都の寺で

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