2016年10月21日金曜日

【回転窓】農業改革と国土の先行き

 人が生活する上で必要な「衣食住」のうち食を支える農業。人類史を見れば、狩猟・採集中心の不安定な生活が食料を安定的に収穫できる農業を取り入れたことで一変。国土の発展にも欠かせない産業となった▼国会で、JAグループの構造・体質改善など農業改革に関する論戦が本格化している。農業への影響が大きいとされる環太平洋経済連携協定(TPP)の先行きは不透明だが、農業改革の取り組みは待ったなしだ▼競争力強化に向けて農家の経営的感覚を磨くとともに、企業の新規参入を促して産業全体の活性化を図ることが国の描く改革の道筋。兵庫県養父市では国家戦略特区制度を利用して企業の農地所有が初めて認められ、農業を柱とした地方創生モデルが注目を集めている▼「農業の衰退は経済問題だけれども、農地の荒廃は国土問題だ。このような環境になるとは考えられなかった」。全国総合開発計画(全総)の策定に深く関わった元国土事務次官の故下河辺淳氏が、養父市の取り組みを支援する関係者に掛けた最後の言葉だ▼国土の発展を支える建設業にとっても農業改革は他人事ではない。

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