2016年10月31日月曜日

【回転窓】小嶋一浩氏の建築と言葉に学ぶ

空間は人が使うためのものである。そこには建築や都市、土木などというカテゴリーは全くなく、シームレスに空間が続く-。13日に亡くなった建築家・小嶋一浩氏の言葉である▼学校建築に定評があり、近作で日本建築学会賞やBCS賞を立て続けに受賞。「学校建築を語る上で常に参照され、語り継がれる建築」とたたえられ、これからさらなる活躍が期待されていた。57歳という早過ぎる別れを、いまだに信じられないでいる▼本紙にも作品や建築教育などさまざまなテーマで登場してくれた。にこやかで静かな語り口の中に、建築に対する情熱をひしひしと感じさせる建築家だった。物事を理論的に進め、人に伝えようとする姿勢は、対話を重視する設計手法からもうかがえた▼東日本大震災の被災地支援にも尽力。だが建築の知見が生かせない復興計画に「土木、建築両分野がリテラシーを共有しないと駄目だ。教育現場で互いの分野を学ばないといけない」と訴えた▼工学が扱う世界に境界線を設けず、分野を横断して「使う人のために空間」を創り続けた小嶋氏。残した建築や言葉から学ぶことは多い。

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