2016年10月24日月曜日

【回転窓】宴の後にかみしめたい言葉

今年のノーベル文学賞の授与が決まった米ミュージシャンのボブ・ディランが沈黙を続け、事務局も本人への直接の連絡を断念したと先週、外電が伝えていた▼ここ数年、日本人の連続受賞もあって、ノーベル賞をめぐるメディアの騒ぎは、日本ではこの季節の風物詩のようになっているが、海外ではどうなのだろう。ようやく収まった一連の報道の中でとりわけ印象深かったのが、2000年に化学賞を受賞した白川英樹筑波大名誉教授の発言だ▼「騒ぎ過ぎだと思う。特別扱いしないでほしい」と苦言を呈し、「選ばれない分野にも重要な研究はたくさんある」と強調したという(15日時事)。確かに、受賞者の家族から同級生、幼なじみまで引っ張り出しての報道合戦にはいつも閉口させられる▼白川さんの言う通り、派手な光が当たらなくても重要な研究はどの分野にも多かろう。今年の医学生理学賞が授与される大隅良典東京工業大栄誉教授は、記者会見などで地道な基礎研究の大切さを訴え、すぐ役立つ成果ばかりを求める風潮を繰り返し批判していた▼どちらも宴(うたげ)の後に忘れずかみしめたい言葉である。

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