2016年12月2日金曜日

【回転窓】建設費迷走から見えるもの

「条件が曖昧で、積算数量も不明確だった」「基本設計には基本計画の立案までを含むようになっている」。土木・建築の設計技術者から行政機関の積算能力や企画立案能力の低下を嘆く声が聞かれる▼最たる例が2020年東京五輪で使う競技施設の建設費をめぐる問題だろう。新国立競技場に続き、現在は都が整備する3施設の建設費が迷走中だ▼このうち「海の森水上競技場」の建設費は招致時の69億円から491億円を経て298億円、「アクアティクスセンター」は招致時の321億円から683億円を経て512億円に。100億円単位で二転三転する状況は行政に対する国民の不信感を生もう▼税収減に悩む地方自治体では技術系の職員の不足が深刻。建設分野でも現場の実態を熟知する職員が減り、業務のアウトソーシングも職員の能力低下に拍車をかける▼多様な事業を発注する行政に国民が期待するのは必要な事業を適切な費用で実現する力。事業の川上段階に当たる立案から関与する職員の能力の優劣は、行政サービスの質を大きく左右する。全国で継続教育の強化を含め人材能力の引き上げが急がれる。

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