2017年1月4日水曜日

【業界展望2017】専門工事業-社保加入めぐる経営判断に注目

専門工事業は社会保険加入をめぐる対応が焦点になる。国土交通省が掲げる加入目標の期限が近づく中、技能工の加入率が4割程度にとどまる職種もある。未加入の企業や作業員を排除する措置をはじめ、対策は強化の一途で、労働者の雇用形態の判断など多くの業者が難しい経営判断を迫られている。需要や請負単価など取り巻く環境が変化し、動向が注目される1年になりそうだ。

 「実施後5年をめどに加入率を企業単位で100%、労働者単位で製造業相当(90%)」とうたった中央建設業審議会(中建審、国土交通相の諮問機関)の提言から17年度は5年を迎える。残り3カ月を切ったが躯体系職種の団体の会合では、目標達成が依然厳しいことが浮き彫りになった。

 ある団体の会合で、ゼネコンの現場で基幹的な役割を担っている下請業者の経営者は「(加入原資となる)法定福利費を認めてくれるところ、認めているようないないようなところ、認めない元請業者がいる。単価を下げた分を社会保険料として記載する社もある」と現状を説明した。日本型枠工事業協会が行った調査では、法定福利費が「確保不能」という回答が全国ゼネコンでは12%、地方ゼネコンでは31%に達した。「製造業並みの目標の達成には数年かかる」。そう吐露する専門工事業団体の幹部は少なくない。

 法定福利費の確保が難しいながらも、対策の強化に伴い専門工事業者の動きは活発だ。社員への登用を進める業者がいる一方、組織を解散し個人事業主として活動する道を選択した業者もいる。先行きを懸念し清算に踏み切った会社もある。一部には「(規制が始まる)4月まで様子見する」(躯体系職種経営者)と、労働者や下請業者への加入指示を保留した業者もいる。

 社員に社会保険料を支払い続けるには、相応の単価で元請業者から受注を続けることが必須。しかし大型工事を控える東京圏では、需要が一時的に低迷し一部職種の単価が下落している。「正規雇用を進めて単価が下がれば問題は大きい。しかし若い人に入ってもらえるよう業界を良くする一歩。諦めずにこつこつ取り組む」。躯体工事業を営む都内のある若手経営者は、社会保険加入の必要性をそう強調する。

 4月以降の現場の生産力に対する未加入対策の影響を元・下請業者双方が懸念する中、加入促進に前向きに取り組む業者が社会保険料の支払いが原因で倒産するような事態だけはあってはならない。

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