2017年1月16日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・156

i-Conは正直。大変だが苦労を感じる以上にワクワクしている
 ◇楽しくなければ良いこと無し◇

 建設現場で施工管理に従事する成田徹さん(仮名)は、昨年末も担当現場にクリスマスのイルミネーションを飾り付けた。工事の案内板が華やいだように明るくなる。工事で迷惑を掛けている地域の人たちに少しでも喜んでもらえたら。そんな思いで、数万円の飾りを買い足しながら、毎年続けてきた。

 5回目となった今回、すてきな出会いがあった。ある日、女子高生がイルミネーションをスマートフォンで撮影していた。声を掛けると、「去年もやっていましたよね! 来年もお願いします!」と元気の良い声が返ってきた。通学ルートでの楽しみになっているという。「やったかいがあった」。うれしさがこみ上げて、自然と笑みがこぼれた。

 工事の品質とイルミネーションは直結しない。無駄と言われれば反論しづらい。だが、少々脱線してでも仕事は楽しくやるべきだと思っている。楽しくない現場に良いことはない。現場人生で身に染みている偽らざる実感だ。

 振り返ると、この仕事を始めたころと考え方が随分変わった。最初は、効率やコストを厳しく考えなければと、肩肘を張っていたように思う。効率やコストの追求自体は間違っていないが、型にはまったように絞り上げるのでは、誰も付いてこない。

 工事中は寒い日も暑い日もある。雨の中での作業を余儀なくされることも多い。一人だけで仕事ができれば自分が我慢すればよいが、実際には、多くの作業員が来てくれて初めて現場が成り立つ。せっかく来てもらうのだから、できる限り良い環境で働いてもらいたい-。そうした意識を強く持っている。本年度からは、清潔な女性専用トイレも導入した。「人と接する時には必ず思いやりを持つ。そうすると、作業員の皆さんのやる気も変わってくる」。

 他の現場から戻ってきた作業員に、「成田さんの現場にまた来ることができてよかった」と声を掛けられることもある。現場を進めていると、無理難題とも言えるような頼み事をする場面がどうしても出てきてしまうが、日頃、誠実に振る舞っていれば、相手も頑張ってくれる。

 国土交通省が推進し、話題になっている建設現場の生産性向上策「i-Construction」にも挑戦中だ。昨年度にマシンコントロール(MC)搭載重機を現場に取り入れ、有効性を体感した。本年度は、上司を説得して必要なソフトを購入してもらい、閑散期に必死になって勉強した。3次元データの扱いには骨が折れるが、省力化効果は計り知れない。

 i-Constructionの成長は非常に速い。「日々勉強しなければいけない。油断していると乗り遅れる」。言葉とは裏腹に、不安や懸念よりも充実感がにじみ出た表情で話す。

 周りの人が楽しく、何より自分が楽しく-。そこから生まれる好循環が一番の武器だと思っている。

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