2017年2月20日月曜日

【回転窓】近代建築を観光の目玉に

ル・コルビュジエに師事し、モダニズム建築の旗手として戦前・戦後の日本建築界をけん引した前川國男。建築家の出発点となった処女作「木村産業研究所」(1932年竣工)が青森県弘前市に現存している▼丸柱のピロティや水平の連装窓など師に学んだ手法を数多く用いた意欲作だ。35年に弘前を訪れたドイツの建築家ブルーノ・タウトは「辺境の地にコルビュジエ風の白亜の建物がある」と驚嘆したという▼前川と弘前の関係は深い。母方の故郷であり、フランス留学では弘前出身の伯父を頼った。この街には初期から晩年まで全時代の前川建築が残る▼弘前市をはじめ前川建築を文化交流拠点とする8自治体が「近代建築ツーリズムネットワーク」を組織。前川建築を含む国内の近代建築を観光資源として内外にPRし、観光振興や地域活性化につなげる活動が本格化する▼コルビュジエ設計の国立西洋美術館(東京・上野公園)が昨年、世界文化遺産に登録されたのを機にモダニズム建築を再評価する機運が高まっている。近代建築を歴史の遺物にせず、地域の資産や観光の目玉として生かす取り組みに期待したい。

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