2017年2月20日月曜日

【駆け出しのころ】ケミカルグラウト専務取締役西日本支社長・三橋清己氏

 ◇ブレークスルーを実感できた時◇

 大学で土木工学を学んでいた当時は、「日本列島改造論」が発表されたころと重なります。日本の土木業界は大きく発展する予兆がありました。ところが、在学中に起きたオイルショックなどで日本経済は一転して低迷し、卒業する年には大変な就職難になっていました。その時に手を差し伸べてくれた会社がケミカルグラウトです。

 入社して最初はダム工事の現場に配属となりました。車の運転免許は持っていましたが、ペーパードライバーだったので、現場でいきなり運転するよう言われた時は、事務所につながる急な坂道をバックで切り返すのが大変だったのを覚えています。

 現場は人里離れた山奥にあり、テレビも映りません。娯楽と言えば飲むことぐらい。一日の仕事が終わると、作業員さんが田舎から持って来られた乾き物をつまみに車座になって飲んだのも楽しい思い出です。入社間もない頃は2週間働いて1日の休みというのが当たり前でしたが、それなりに熱い希望を持って楽しんで仕事をやっていたと思います。

 新人時代は朝から夕方まで一日中現場に出て、作業員さんや職長さんに仕事のやり方や考え方などいろいろなことを教えてもらいました。そうして2、3年目になった頃、こんなことがありました。現場で職長さんの話を聞いて「あれ、これは自分の考えと違うな」と思ったんです。それまでは教えてもらうばかりでしたので、自分でブレークスルーできたと感じられた時でした。

 入社以来、約35年にわたりダムやトンネルの現場一筋で仕事をしてきました。ダム工事やトンネル工事でも、当社の仕事は地下に手を加えることで止水する、地盤の強度を増すなどの工事です。直接目にすることができないところに物を造るわけですから、地形や地質、断層など地盤状況をよく把握して施工を進めていく必要があります。

 でもそうした調査には限りがあるため、過去の経験やデータを駆使し、試行錯誤を繰り返して求められる品質のものを造っていきます。安全・安心を担うインフラ造りの一翼を担っている仕事であり、発注者や元請の方々、作業員さんともども良いものを造り上げるんだという一体感と信頼感が必要です。現在は作業員さんや技術労働者の確保が喫緊の課題であり、われわれ働く仲間や業界全体で魅力ある現場を提供していくことが重要だと思っています。

 現場の仕事は、以前と比べてコンピューターの普及により効率化が図られるなどしてきましたが、今後も現場から覚えることの大切さを伝えていきたいと考えています。

 (みはし・きよみ)1976年鳥取大工学部土木工学科卒、ケミカルグラウト入社。施工本部基礎工事部長、取締役西日本支社関西支店副支店長兼広島営業所長、同西日本支社副支社長兼九州支店長兼広島営業所長、常務西日本支社長などを経て、16年から現職。広島県出身、63歳。

1981年に開発したダム基礎グラウチング工事用コンピューター
施工管理システムを国内で最初に導入した現場で

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