2017年3月22日水曜日

【研究室訪問】慶応大学理工学部システムデザイン工学科 ホルへ・アルマザン研究室

 ◇アクションリサーチで地域の課題解決に貢献◇

 慶応大学理工学部システムデザイン工学科のホルヘ・アルマザン専任講師の研究アプローチの特徴は、「アクションリサーチ」。社会で生じるさまざまな問題の原因を解明し、得られた知見を人々の生活改善に役立てることを目的とした実践的研究手法で、社会との接点を築きながら、建築や都市の公共性、持続可能性などを探究する。古い家屋の再生、家具のコンペなど実際に設計や施工、制作、展示に関わる活動を行っている。

 2015年11月、アルマザン研究室の学生が研究活動の一環として、山梨県市川三郷町の古い「酒蔵」をギャラリーに改修した。きっかけは同町で開いた展示会。13年5月、聞き取り調査で地域の人々が集まれる公共スペースを必要としていることを把握し、その結果を踏まえたまちづくりの提案を旧二葉屋酒造の母屋で展示した。

 旧二葉屋酒造の母屋は、国の有形文化財に登録されている大正時代の木造家屋。地域資料を展示したいという所有者の意向を受け、古民家になじむよう千本格子を利用し、スクリーン状に透明感のある展示パネルを制作した。

 同時に敷地内の酒蔵の再生に着手。母屋へとつながる飛び石や外側に舞台を配したギャラリーとして、地元の人たちと共同で再生させた。

 「商店街の空洞化や空き家の増加といった課題を抱えている他の地方都市でも、活性化のためのアイデアのニーズがあるはずだ。

 地域に入り込み、実際にアクションを起こさなければ、コミュニティーの問題は解決できない。アクションリサーチの事例としては一つ目だが、アクションの前後でどのような変化、成果があったかを深く掘り下げて検証し、順次、論文にまとめたい」と研究の狙いを説明する。


 ◇学生のアイデアをまちづくり・コンペで具現化◇

 昨年は、横浜赤レンガ倉庫の広場に、自由に動かせる30台の机と120脚のいすを設置する社会実験を行った。

 「まちを楽しくするストリートファニチャーコンペティション」で優秀賞を獲得した提案で、予算50万円以内という条件の下、不要となった学校のいすを市民参加型のワークショップでカラフルに塗装し直し、単に人々が通り過ぎるだけの場所となっている横浜赤レンガ倉庫の広場に、にぎわいを生み出す仕掛けとして配置した。

 「慶応大学は総合教育研究大学としてサポートが充実しており、教員も学生も非常に良好な環境の中で研究に取り組んでいる。おかげで、地域のコミュニティーと協力したまちづくりなど、利益を考えると設計事務所では対応できない社会貢献的な活動に関われる。未来を担う若い学生のアイデアを具現化し社会に還元するのも、教育機関の新しい役割だと考えている」


 アルマザン講師は、建築家を目指す学生に対して「建築は良くも悪くも人々の振る舞いに影響を与える。都市が変われば生活も変わる。常に社会を良い方向に導くようなデザインを考えてほしい」と期待する。

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