2017年3月24日金曜日

【辰野作品を後世に】奈良ホテル、木造本館の耐震補強と客室改装を実施

辰野金吾が設計を手掛けた木造本館の外観(提供:奈良ホテル)
奈良ホテル(奈良市、五十嵐晃社長)は、日本銀行本店や東京駅駅舎を手掛けた建築家・辰野金吾が設計した「木造本館」の耐震補強工事と、一部客室のリニューアル工事を実施する。5月ころから3年間の工期で構造部の補強、老朽設備の更新、和室から洋室への変更などを行う。工事は分割して進め、工事個所以外のエリアは営業を続ける。施工は大鉄工業が担当する。

 1909(明治42)年に開業した本館は「関西の迎賓館」として100年以上、宿泊客を迎えてきた。木造2階建て延べ4929㎡の規模で、62室の宿泊客室、ロビー、ティーラウンジ、バー、宴会場3室、メインダイニングルームなどを備える。桃山御殿風檜造りの建物は建物内外のデザインや調度品に明治の雰囲気を色濃く残し、経済産業省が認定する近代化産業遺産に選ばれている。

 2013年11月に施行された建築物耐震改修促進法に基づき建物の耐震性などを調査した結果、改修が必要なことが判明。耐震強度を備えた施設にするため構造部の補強を実施するとともに、建物の文化的価値を損なわない形で客室などの機能性や快適性を高める改修を行うことにした。
本館ロビー「桜の間」(提供:奈良ホテル)
耐震補強は壁面内部に高強度の木製補強壁を埋め込む方法を可能な限り採用する。客室の改装は狭いバスルームをユニットバスに変更。1階にある三つの和室はすべて、洋風のデラックスツインルームにする。ホテルの象徴でもあるマントルピースはレンガ煙突部分を撤去するものの、本体部分はオブジェとして残す。

 設備機器では大正期から使ってきたスチーム暖房を電気ヒーターに切り替える。ラジエターはオブジェとして保存し、明治建築のクラシックな空間づくりに役立てる。
洋室に改装する1階和室㊤と稼働中の洋風ツインルーム
(提供:奈良ホテル)

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