2017年3月8日水曜日

【技能教育リポート】大宮建設高等職業訓練校


 ◇見習いから早く一人前の大工へ◇

 さいたま市西区にある大宮建設高等職業訓練校(五十嵐寅一校長)は、全建総連傘下の訓練校の一つとして、1965年に開校した。

 埼玉県内を中心とする工務店に属し、普段は大工見習いとして働く若者たちが3年間、毎週土曜日に建設埼玉会館に隣接する施設に通い、毎回8時間の授業を受ける。木造建築の基礎を学科と実技を通じて教え込み、早く一人前の大工となるのを訓練校が手助けしている。

 訓練校の授業のうち、学科は木造建築士を取得できるよう、必要な知識を教える。実技では、原寸施工図を描き、木材に墨付けや加工を施して組み立てる一連の作業を身に付けられるようにする。訓練校には現在、1年9人、2年15人、3年4人の計28人が通う。

 昔ながらの木造建築の技術が途絶えてしまわぬよう、誰かが伝えていかなければならない-。

 これが50年以上前に開校した時の原点だ。今もそうした方針の下で指導に当たる。工場生産のプレカット工法が主流の中にあっても、基礎を身に付けておくことが、大工としての幅を広げる。「他の職種を従えて、一軒家をお客さまに提供する大工の棟梁(とうりょう)を育てる」と五十嵐校長。需要が拡大するリフォーム工事は、現場の状況に応じて施工する。基本が分かっていないと対応が困難となる。

 3年間に及ぶ訓練の集大成として、訓練生が力を合わせて一つの作品を作る。県主催で毎年開かれる「彩の国総合技能展」に出展するためだ。2月に開かれた今年の技能展には鳥居を出展した。過去に技能展で県知事賞も獲得している。

 出展する作品は半年がかりで製作する。訓練生にとっては達成感が得られると同時に、「大工として成長するステップが見えてくる」(五十嵐校長)。卒業後も同じ大工として、互いに協力しあえる仲間意識を醸成する絶好の機会にもなる。訓練校では今後も技能展への出展を続ける方針だ。

 卒業後も仕事で分からないことがあると、講師に教えを請おうと訪れる人もいる。卒業生たちにとって、3年間学んだ訓練校はよりどころになっている。

 40年もの間、教務を担っている大井川伸子さんにとって、訓練生は子や孫のような存在。かつての卒業生が自分の子どもを入校させる時には、「本当にうれしく思います」と目を細める。

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