2017年5月30日火曜日

【回転窓】「二つの老い」にも希望

「二つの老い」-。都市の郊外にある住宅団地の現状をそう表現するらしい。言うまでもなく、一つ目の「老い」は建物の老朽化、もう一つの「老い」は住民の高齢化のことである▼住まいのある東京郊外の住宅団地で先日あった管理組合の総会の議案書にもこの文言が書かれてた。本体は丈夫でもエレベーターの無い住棟は一つ目の老いに当たろう。総会の出席者や管理組合の役員を見渡すと、二つ目の老いも覆い隠せない▼「孤独死に備えて住人の緊急連絡先を把握する必要がある」「マイカーを手放す高齢住民が増えて駐車場が余り、管理費収入が減り続けている」「集会所の和室が膝の痛い高齢者に敬遠されて利用が低調」…。会合の話題には何とも気がめいるものも多い▼が、もちろん希望がないわけではない。豊かな緑とゆったりとした敷地に恵まれた郊外の団地は子育て世代にとっては好環境といえる。最近は実際に移り住んでくる若い家族も見掛ける▼多様な世代がコンパクトに暮らす街は、これからの都市の理想形の一つにもなるだろう。高度成長時代が生んだ団地という財産を有効活用する知恵を絞りたい。

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